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「BABYMETALが、そして“ライブ“が復活した」。それが2023年1月28日・29日の2日間に渡り、幕張メッセ国際展示場にて行われた約2年ぶりとなる“復活”ライブ【BABYMETAL RETURNS – THE OTHER ONE -】の初日28日の公演を観た率直な感想だ。
なぜならば「(ライブ活動を休止していた)BABYMETALの封印を解く」というコンセプトのもとに開催された本公演は、BABYMETALの約2年ぶりとなるライブであると同時に、かつて数々のミュージシャンと音楽ファンが作り上げてきたライブコンサートの歴史と熱狂を会場にいた誰もが思い出し、その封印を解く場ともなっていたからだ。この記事ではそんな記念すべき1日の記憶をたどりたい。
そう、場所は幕張メッセ国際展示場。そのホールをぶち抜いた巨大な会場にはスモークが焚かれ、客席ではチケット完売の満員状態のオーディエンスが開演を待ち侘びていた。客入れSEが一曲終わるごとに拍手が起こる様子は、彼らがいかにBABYMETALの復活を待ち望んでいたのかを痛烈に感じさせた。
照明が暗転すると、BABYMETALのライブにおける定番となっている、彼女たちを取り巻くストーリーを描いたムービーが始まった。気が付けば「10のパラレルワールドから召喚された10人の使徒」がステージ上の花道に登場しており、彼らは会場後方に位置する「FOX GATE」へと歩みを進めていく。謎めいた10人がBABYMETAL復活の儀式を始めると、荘厳なゲートが開き、これまでアーティスト写真で存在が示唆されていた玉座に鎮座するSU-METALとMOAMETALが登場。オーディエンスの大歓声を受けながら、クールな表情を保ったまま新作アルバム『THE OTHER ONE』からの新曲「METAL KINGDOM」のライブパフォーマンスが始まった。神秘的なシンセシーケンスが印象的なシンフォニックな楽曲を披露しながらBABYMETALの二人は会場中央の円形ステージに集合し、ステージが上空に迫り上がっていく。そして、続く先行配信シングル「Divine Attack – 神撃 -」ではステージが移動を開始! この光景には思わず「してやられた」気持ちにさせられた。それまで「会場前方」だと思っていたドラムセットが設置されたステージが神バンドの舞台であり、実はそのステージとFOX GATEを繋ぐ花道こそが本公演における「メインステージ」だったことがわかったからだ。これはおそらく同じように驚いたオーディエンスも多かったのではないだろうか。
そして今回のライブのハイライトの一つと数えて間違いないシーンが、「PA PA YA!! (feat. F.HERO)」、「ギミチョコ!!」、「メギツネ」といった人気曲を経て披露された「ド・キ・ド・キ☆モーニング」だろう。BABYMETALのはじまりを告げたデビュー曲である本曲だが、途中から新アレンジがその姿を見せ、それに呼応するようにもう一つのステージが出現し、初期BABYMETALを彷彿とさせるスカートが赤い衣装を纏った3人組が現れたのだった。まるで“あの頃のBABYMETAL”がそのまま成長したかのようなその佇まいには「これがパラレルワールドのBABYMETALなのか?」などとライブパフォーマンス中にも関わらず“考察脳”を発動させずにいられなかった。これまでプロモーションやライブにおけるストーリー動画、エンディングの演出などでファンの想像力を刺激してきたBABYMETALだが、まさかライブパフォーマンスにそうした要素を取り入れてくるとは。
さらに、そんな初期BABYMETALを連想させるパフォーマンスに続いて演奏されたのは、エレクトロニックな要素とダンスミュージック的なビートが特徴的な「Light and Darkness」、メロディックなギターと劇的な展開がエモーショナルな「Monochrome」という『THE OTHER ONE』収録の新曲2曲。ここまで披露された4曲から窺えるのは、『THE OTHER ONE』はBABYMETAL史上もっともシリアスな作品なのではないか?……と、ここでもやはり考察脳が発動してしまうが、アルバムリリース前のライブであることも含めて無理もないだろう。
さて、初期曲である「ヘドバンギャー!!」、「イジメ、ダメ、ゼッタイ」の後に披露された「Road of Resistance」は、2014年に初の海外ツアー最終公演で初披露され、それにも関わらずシンガロングが沸き起こった伝説的なエピソードを持つ楽曲である。そんなBillboard JAPANのインタビューにおいてもSU-METALとMOAMETALの2人が揃ってBABYMETALのターニングポイントとして挙げたこの楽曲が、この日も大きな役割を担うことになった(※BABYMETAL、10周年記念インタビュー 道無き道を行く彼女たちの10年を振り返る)。ブレイクでのSU-METALの求めに応えるように、客席から会場中に歌声が響き渡る。そう、長らくBABYMETALのライブから失われていた、オーディエンスの“声”がはっきりと戻ってきたのだ。
これは偶然か、あるいはBABYMETALを導く「キツネ様」の力によるものなのか。ライブ前日の1月27日に政府が新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針を変更。これによってマスクを着用すれば満席の会場でも大声での歓声が可能となったのである。もちろん、まだ戸惑いのある観客も少なくはなかっただろう。実際、まだ以前のライブほどの迫力には達していなかったように思う。だが、ついにこの日、マスク着用以外は“あの頃”と同じようにライブを楽しめる環境が戻ってきたのだ。体力に自信のないオーディエンスや小さな子供連れの観客を保護できる「SILENT MOSH’SH PIT」が用意されていたことも含め、この2DAYSは“完全復活”に向けた最高の環境だったと言えるのではないだろうか。そんなことを最後の曲「THE LEGEND」を聴きながら考えていた。
オープニングで登場した空席の玉座、2日目のエンディングで見られたという“3人目”の姿などからも、BABYMETALは今後さらに我々を驚かせる活動をしてくれることだろう。そして、その過程で、我々の止まっていた時間が再び元通りに動く日はそう遠くないはずだ。
Text:照沼健太
Photo:Taku Fujii/Takeshi Yao
◎公演情報
【BABYMETAL RETURNS – THE OTHER ONE -】
2023年1月28日(土)29日(日)
千葉・幕張メッセ国際展示場
<セットリスト>
01. METAL KINGDOM
02. Divine Attack – 神撃 –
03. Distortion (feat. Alissa White-Gluz)
04. PA PA YA!! (feat. F.HERO)
05. ギミチョコ!!
06. メギツネ
07. ド・キ・ド・キ☆モーニング
08. Light and Darkness
09. Monochrome
10. ヘドバンギャー!!
11. イジメ、ダメ、ゼッタイ
12. Road of Resistance
13. THE LEGEND
J-POP・ROCK
ゴールデンボンバー、T.M.Revolution、DJダイノジ、back number、BABYMETAL、MAN WITH A MISSION
東京2014/1/18