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<ライブレポート>稲葉浩志、約7年ぶりとなるソロライブで再認識したファンとの“縁”「生まれ変わったような気分です」

 稲葉浩志が、2月1日に横浜アリーナで【Koshi Inaba LIVE 2023 ~en3.5~】を開催した。

 アルバム『マグマ』(1997年1月29日発売)でソロデビューしてから27年目を迎えた稲葉浩志。B’zでは主に松本孝弘が作曲、稲葉が作詞を務めているのに対して、ソロでは作詞作曲、アレンジを一人で担当している。そのため、ソロでは稲葉の素の表情が、リリックだけでなく音でも感じることができるのだ。今回、約7年ぶり5回目となるライブは、同開場で2日間開催。2日目はライブビューイングと配信ライブも同時に行われた。

 オンタイムで暗転すると、花道からサポートメンバーと稲葉が登場。フロア中央に設置されている円型のステージに移動していく。準備が整うと、早速スローなドラムに合わせて稲葉が哀愁あふれるハーモニカを乗せていく。ジャジーなプレイを経て、「Hey!」という一声から「愛なき道」を披露。華やかなスタートを切った後は途切れることなく「The Morning Call」へ。センシティブな恋愛を語る歌詞と、アグレッシブなギターリフが会場に鳴り響いた。今回のサポートメンバーにはMr.ChildrenのJENこと鈴木英哉(Dr.)が参加している。稲葉からの直々のオファーで参加が決定し、Mr.Children以外のバンドでサポートメンバーとして叩くことは初だという。そして、B’zやソロを長年サポートしてきた徳永暁人(Ba.)、ソロライブに参加したことがあるDURAN(Gt.)、過去にB’zのツアーに参加したことがあるサム・ポマンティ(Key.)と、彼らの生み出す安定感あるサウンドは素晴らしいものだった。

 「皆様こんばんは。お元気でしたか?」と問いかけると、大きな拍手が巻き起こった最初のMC。耳を傾けて頷く稲葉は「なんて素敵な景色なんだ!」と笑顔を見せる。「Golden Road」が終わった後も「ゾクゾクします!」と感情の高まりを吐露した。そして、稲葉が奏でる芯のあるエレアコサウンドが魅力的な「I AM YOUR BABY」、「Salvation」が続いていく。

 今回のライブはガイドラインを遵守した上で、声出しが可能となっていた。「念書」では念願のコールアンドレスポンスが会場全体に広がっていく。その分、ライブが進行するにつれて拍手と歓声が何倍にも膨れ上がっているのを感じる。そこにロックチューン「正面衝突」で爽快なビブラートを轟かせる稲葉。声出しができる久しぶりの環境に「感動!」と稲葉は心を弾ませていた。

 一転してミドルテンポの「BLEED」では、メンバー全員が向き合うスタイルで演奏された。少し掠れた声で「さらば強くあれ」と叫ぶところが醍醐味のこの楽曲。ステージ上の柱を描くような照明も楽曲を引き立たせていた。稲葉が静かにコードを奏で、DURANが畝るようなイントロを弾き始めた「波」。「もっと奥へ」という稲葉の囁きから、アウトロでダンサンブルなバンドアンサンブルが披露された。穏やかな気持ちになったところで、感情を露わにするような歌声と、エモーショナルなギターが聴きごたえのある「Little Flower」へ。アルバム『マグマ』のエンディングに添えられている楽曲であり、数十年経った今、どういった心境で稲葉は声にしているのか考えさせられる瞬間だった。その後に披露されたのは新曲「NOW」だ。「この声が消え去るまで歌う」という稲葉の決意を投影した楽曲ではないかと感じさせられた。

 今回のライブを【~en3.5~】と銘打った経緯を語る稲葉。コロナ禍で楽曲を制作しているうちに、披露したい欲が強くなり、ちょうど2月が空いていたとのこと。そんな心温まるMCから「JENさん準備Okayですか?」(稲葉)、「Okayです!」(JEN)という掛け合いで「Okay」がスタート。稲葉はステージを一歩一歩踏み締めるように歩み始め、オーディエンスに歌声を届けていった。ここからアクセル全開で「YELLOW」「羽」を投下し、どんどんオーディエンスを虜にしていく稲葉。ヒートアップしていくフロアに対して「生まれ変わったような気分です! 皆さんに会えてよかった!」と述懐していた。本編ラストの「ハズムセカイ」は、「一緒にいてよ」という歌詞がまさに“稲葉から見たオーディエンスとの距離感“と解釈することもできた。

 アンコールは弾き語りによる「あの命この命」から始まった。現在の社会情勢に沿った歌詞が胸に刺さる。そして、1月27日に品川Club eXで開催された前哨戦【Koshi Inaba LIVE 2023 ~en-eX~】で初披露された新曲「BANTAM」へ。本作は蔦谷好位置がサウンドプロデュースを務めている楽曲だ。どこを切り取っても耳に残るフレーズばかりで、流石と言うべき蔦谷の御業と稲葉浩志の編み出すメロディが相性抜群だ。最後に稲葉は「新たなチャレンジ実現しております。ありがとうございます。皆さんの愛の力、沢山頂きました!」と感謝を込めて「oh my love」をパフォーマンス。愛を振り撒き、ステージを後にした。

 稲葉が大切にしている言葉「en」には、表現の “演” 、人と人とをつなぐ “縁” 、ひとつになる “円”など様々な意味が込められている。コロナ禍は、ファンとの距離感や“縁”を見直すきっかけとなったに違いない。そんな稲葉の心情は、逆境を乗り越える強さを歌った「BANTAM」、前向きな気持ちを歌った「NOW」といった新曲にも顕著になっている。今、不安定な時代にこういったメッセージ性の強い楽曲が届けられたのも合点がいく。そういった意味では、稲葉浩志としてソロライブが動き出したのも必然的だったのかもしれない。

Text by Tatsuya Tanami

◎公演情報
【Koshi Inaba LIVE 2023 ~en3.5~】
2023年2月1日(水)
神奈川・横浜アリーナ
<セットリスト>
M1 愛なき道
M2 The Morning Call
M3 Stay Free
M4 Golden Road
M5 I AM YOUR BABY
M6 Salvation
M7 念書
M8 正面衝突
M9 BLEED
M10 静かな雨
M11 波
M12 Little Flower
M13 NOW
M14 Okay
M15 YELLOW
M16 羽
M17 遠くまで
M18 ハズムセカイ
M19 あの命この命
M20 BANTAM
M21 CHAIN
M22 oh my love

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