<ライブレポート>マカロニえんぴつ、10周年を経て新たな夢への第一歩を踏み出したツアーファイナル

2023年1月16日 / 17:00

 マカロニえんぴつが、2023年1月8日埼玉・さいたまスーパーアリーナにて10周年記念全国ツアーのファイナル公演【マカロックツアーvol.14 ~10周年締めくくり秋・冬ツアー☆飽きがくる程そばにいて篇~】を開催した。

 このライブは、2022年9月からスタートした全国14か所19公演をめぐる全国ツアーの締めくくりとして、自身最大規模の会場となるさいたまスーパーアリーナにて前日の7日に続いて行われたもの。ツアー19公演はすべてソールドアウトとなっており、この日も会場はギッシリ。バンドの勢いを物語っていた。

 開演前のBGMには、ビル・ウィザース「Lovely Day」等、ソウルやポップスの名曲が使われており、定刻の15時を過ぎ暗転すると、SEとしてザ・ビートルズ「Hey Bulldog」が大音量で流れ出した。薄暗いステージに、はっとり(Vo./Gt.)、高野賢也(Ba./Cho.)、田辺由明(Gt./Cho.)、長谷川大喜(Key./Cho.)が上がり、シルエットが浮かび上がる粋な演出からSEがピタッと止まると、「yeahー!」と勢いよくはっとりが第一声をかけて、「トリコになれ」からライブがスタートした。幻想的な照明の中で繰り広げられるファンクミュージックを受けとめて、暗闇の客席で多くの人が体を揺らしている。続く「洗濯機と君とラヂオ」では一転して、カラフルな光線が飛び交い、スクリーンにメンバーの姿が4分割した画面で映し出された。<ずっと前から僕らを 待っていた、待っていたんだ>と歌った直後に、「待っていましたか?」と客席に語り掛けるはっとりに、思わず嬌声が上がる。さらに「たまアリ、そんなもんか!?」との煽りで一気に盛り上がるオーディエンス。ミディアムテンポの「ワンルームデイト」ではオーセンティックなギターサウンドに心を掴まれた。

 最初のMCでは、はっとりが会場を見渡して「観てくださいこの景色を!すごいね!2日目だけど新鮮ですね。これだけの人たちが、マカロニえんぴつだけを観に来てくれているわけでしょ?最高です。いろんなきっかけで知ってもらえてライブに来てくれた人たちと、こうやって音楽で会話ができるのが嬉しいです。今日は僕らから感謝を込めて、“ああ、ここが私の魂の居場所だな”と思えるライブにします。よろしくお願いします」と伝えてから、「たましいの居場所」を歌い上げた。

 ギターを爪弾く音がクリアに響いた「MUSIC」、スケールの大きな音像に乗せて熱唱した「mother」と、ツアーを経てより一層強固になったであろうアンサンブルの安定感が心地良い。ピンスポットを浴びたはっとりのギター弾き語りで始まった「夜と朝のあいだ」では、オルガンの音も相まってノスタルジックな空間を創り上げた。ツアーの振り返りで各地の美味しいものについてトークが始まると、はっとりがお気に入りの中華料理店が閉店してしまったことを嘆きつつ、結構長めな前振りから「街中華☆超愛」へ突入した。ハイテンションな演奏と共にチャーハンやラーメンなどが映し出される、会場の誰もがお腹が空いたに違いないこの曲の後半には、金テープも炸裂して、遊び心満載のコーナーとなっていた。

 混沌としたサウンドの「カーペット夜想曲」からは、空気が一変。ミステリアスな導入からしばし続いたインストから、「ブルーベリー・ナイツ」、「愛の手」へと進んだ流れは、バンドの演奏力に支えられた表情豊かな楽曲のバリエーションに惹きつけられる、中盤のハイライトとなっていた。「まだ元気残ってるかい!?」とはっとりが呼び掛けて、パンキッシュな「ワンドリンク別」でさいたまスーパーアリーナがライブハウスさながらの盛りあがりとなった。

 終盤、「ヤングアダルト」では、淡々としたビートとは裏腹に生々しくウェットな心情が歌われる。10周年の締めくくりをこんな大会場で2日間ソールドアウトさせているバンドとは思えないほどの、泥臭く人間味のある曲だ。いや、だからこそこんなにも大勢の人が支持しているのだろう。真剣にステージを見つめる人々の姿が目立った。歌い終わると、はっとりはMCで「僕は、自分の孤独は自分にしか救えないと思っていたんです。でも最初に惚れちゃったのが、UNICORNっていう才能集団だったから。UNICORNの「開店休業」っていうMVを見て、バンドをやりたいと思ったんです。もっと言うと、UNICORNになりたいと思っていたんです」と、バンドを始めた理由を語る。さらに、紆余曲折あった10年間について自問自答するような長いMCで想いを吐露するはっとり。さらにメンバー1人ひとりのことに触れると、「もう、俺なりのUNICORNはあなたと一緒にできあがりました。救ってくれてありがとうございます。もう1人じゃないと思えてきた!」と叫んでから、「なんでもないよ、」へ。ピアノと共に歌い出して、他のメンバーが加わって行く様に、これまでのバンドの歩みが重なった。

 アンコールでは、TBS系ドラマ『100万回 言えばよかった』の主題歌に決定している新曲「リンジュー・ラヴ」を披露すると、「僕らは夢の中」でははっとりから長谷川、高野、田辺へとボーカルをリレーして、バンドの結束の強さを感じさせた。「実りのあるツアーだったし、10周年をこんなにお祝いしてもらえて本当に幸せなバンドです。これから先も、一緒に楽しいことを追いかけましょう。余計そう思える1日になりました。本当にありがとうございました!」とのはっとりの感謝の言葉から、最後は「鳴らせ」で最高のグルーヴを広い会場中に放って、2時間21曲に及ぶライブを終えた。そして、終演後には全国6都市のZeppで開催するワンマン&対バンツアー【マカロックツアーvol.15 ~あやかりたい!煌めきビューチフルセッション編~】を発表。5月19日東京公演Zepp DiverCityのゲストは、なんとUNICORN。10周年を経て、新たな夢の実現へ向けて前に進むマカロニえんぴつに、客電がつき明るくなった場内からは万雷の拍手がいつまでも贈られていた。

Text:岡本貴之
Photo:酒井ダイスケ

◎公演情報
【マカロックツアーvol.14 ~10周年締めくくり秋・冬ツアー☆飽きがくる程そばにいて篇~】
2023年1月8日(日)
埼玉・さいたまスーパーアリーナ
<セットリスト>
1. トリコになれ
2. 洗濯機と君とラヂオ
3. ワンルームデイト
4. 愛のレンタル
5. たましいの場所
6. MUSIC
7. mother
8. 恋人ごっこ
9. 夜と朝のあいだ
10. 街中華☆超愛
11. カーペット夜想曲
12. ブルーベリー・ナイツ
13. 愛の手
14. ワンドリンク別
15. MAR-Z
16. 星が泳ぐ
17. ヤングアダルト
18. なんでもないよ、
EN1. リンジュー・ラヴ(新曲)
EN2. 僕らは夢の中
EN3. 鳴らせ


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