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2022年の年間Billboard JAPANストリーミング・ソング・チャート“Streaming Songs”で、Tani Yuuki「W/X/Y」が首位を獲得した。
「W/X/Y」は、Tani Yuukiが2021年5月26日に配信したシングルで、同年12月にリリースされたアルバム『Memories』にも収録。もともと自身の楽曲「Myra」がTikTokの発表する【#TikTok流行語大賞2020】でノミネート30選に入るなど、同プラットフォームを中心にバイラルヒットしたことで知名度を一気に拡大したTani Yuukiだが、この「W/X/Y」も同様、SNSでカバー動画やダンス動画をはじめ、様々な二次創作(UGC)がユーザーによって投稿された。
当チャートでは2022年1月5日に99位で初登場し、その後89位→52位→33位と順位を上げ、3月2日に10位で初のトップ10入りを果たす。3月25日にはYouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』のパフォーマンス映像が公開され、4月6日に6位、4月13日に2位、そして4月20日でついに初の週間首位を獲得した。以降も地上波音楽番組やツアー、音楽フェスティバルなど、披露される機会も増え、着実にリスナー層を開拓していった結果、年間ではチャートイン48週、通算4回の週間首位をマーク。再生回数は328,051,348回を記録している。
2位を獲得したのは、優里の「ベテルギウス」。2021年10月に放送開始されたドラマ『SUPER RICH』の主題歌として書き下ろされた楽曲で、翌11月4日に配信開始された。当チャートでは11月10日に22位で初登場、翌週には首位を獲得し、これまでに3週連続、通算5回の週間首位をマークしている。年間の再生回数は314,414,896回で、1位との差は小さい。この曲は『THE FIRST TAKE』で音源が初解禁され、後から楽曲の配信がスタートしており、ドラマのタイアップと合わせて事前に高い話題性を集めていたことが、好調なチャートアクションの滑り出しにつながったと考えられる。なお、優里は6位の「ドライフラワー」や19位の「シャッター」など、年間ストリーミング・ソング・チャートでは計6曲をトップ100内に送り込んでいる。
3位はSaucy Dogの「シンデレラボーイ」で、年間の再生回数は303,025,674回を記録。バンドが2021年8月にリリースしたミニアルバム『レイジ―サンデー』の収録曲で、イラストレーターのますだみくが手掛けたミュージック・ビデオも話題を呼んだ。当チャートでは2021年10月13日に100位で初登場、11月3日には32位にまで上昇し、今年2月2日に8位で初トップ10入りを果たしている。これまでに週間チャートの首位獲得こそないものの、一度もチャートアウトすることなく数字を積み重ね続けた。
続く4位にはマカロニえんぴつ「なんでもないよ、」が入っており、ライブハウスや音楽フェスを中心に活動してきた若手バンドの楽曲が、今年はTikTokをはじめとするSNSで新しいリスナー獲得のチャンスを見出し、ストリーミングの再生回数を伸ばしていった動きも特徴的だった。強力なタイアップがブレイクを後押ししたOfficial髭男dismやKing Gnuらとはまた異なるヒット・パターンを確立し始めているのではないだろうか。
一方で、話題性の高いタイアップ、特に人気アニメ作品とのコラボレーションによってポピュラリティーを獲得する楽曲も多数チャートイン。TVアニメ『鬼滅の刃』遊郭編のオープニング・テーマに起用されたAimerの「残響散歌」は、年間で272,655,388回再生を記録して5位に。また、Official髭男dismはTVアニメ『SPY×FAMILY』のオープニング主題歌「ミックスナッツ」が8位に、TVアニメ『東京リベンジャーズ』のオープニング主題歌「Cry Baby」が17位にそれぞれ入った。
とりわけ今年大きな注目を集めたのは、Adoが作中のキャラクター、ウタの歌唱パートを担当し、様々なアーティストが楽曲提供した映画『ONE PIECE FILM RED』の音楽だ。年間ストリーミング・ソング・チャートでは9位に「新時代 (ウタ from ONE PIECE FILM RED)」、24位に「私は最強 (ウタ from ONE PIECE FILM RED)」、39位に「逆光 (ウタ from ONE PIECE FILM RED)」、45位に「ウタカタララバイ (ウタ from ONE PIECE FILM RED)」、98位に「Tot Musica (ウタ from ONE PIECE FILM RED)」が入った。Ado名義の楽曲を含めると計9曲がトップ100内に入っており、これは当チャート最多の曲数でもある。
集計期間が50週以上にわたる年間チャートの特性上、どうしても年度前半にリリースされた楽曲が上位を獲得しやすく、長期的なチャートインが重要になるストリーミング・ソング・チャートではなおさらだ。今年の年間ストリーミング・ソング・チャートの中で比較的、最近リリースされた楽曲を見てみる。まずは33位のOfficial髭男dism「Subtitle」。川口春奈を主演に迎えて10月6日に放送開始したドラマ『silent』の主題歌で、10月12日に配信がスタートした同曲は、11月23日に累計再生回数が1億回を突破した。BTS「Butter」と並び、歴代最速となるチャートイン6週目で達成しており、週間再生回数も異例の4週連続2,000万回超えを果たすなど、文字通り、記録的なヒットソングとなっている。また、58位の米津玄師「KICK BACK」は、TVアニメ『チェンソーマン』のオープニング・テーマで、アニメ初回放送と同日の10月12日に配信開始、歴代2番目の速さとなるチャートイン7週目でこちらも累計1億回再生を突破した。
すでに社会的な認知度を持ち、熱心なファンダムも形成している人気アーティストの最新曲が早くも記録を残すなか、64位には2021年5月からYouTubeやSNSを中心に楽曲を公開し始めたシンガーソングライター、なとりの「Overdose」がエントリー。9月7日にリリースされた同曲は、なとりの第一弾シングルとして各配信プラットフォームで聴くことができるが、前述の通り、YouTubeやSNS上では多くの楽曲がそれ以前から公開されており、中には万を超えるいいね数や再生回数を記録しているものもある。こうした次世代アーティストの台頭も、1年間の総括としての年間チャートの結果を通して見えてくる、次年度以降の兆しだ。
Text by Takuto Ueda
【Billboard JAPAN Streaming Songs of the Year 2022】トップ10
1位「W/X/Y」Tani Yuuki(328,051,348回再生)
2位「ベテルギウス」優里(314,414,896回再生)
3位「シンデレラボーイ」Saucy Dog(303,025,674回再生)
4位「なんでもないよ、」マカロニえんぴつ(285,309,243回再生)
5位「残響散歌」Aimer(272,655,388回再生)
6位「ドライフラワー」優里(254,251,667回再生)
7位「水平線」back number(250,107,972回再生)
8位「ミックスナッツ」Official髭男dism(249,561,642回再生)
9位「新時代 (ウタ from ONE PIECE FILM RED)」Ado(238,386,089回再生)
10位「一途」King Gnu(204,469,071回再生)
集計期間:2021年11月29日(月)~2022年11月27日(日)
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