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<来日インタビュー>Ink Waruntorn、タイで”シンセ・ポップの女王”と呼ばれる理由とは

 タイで絶大な人気を誇るポップ・シンガー、Ink Waruntornが来日した。母国タイでは”シンセ・ポップの女王”と呼ばれ、これまでに発表したミュージックビデオのYouTube総再生回数は2億8000万枚超え。1万人級のアリーナ会場をソールドアウトにする。2021年にタイSpotifyで年間最も再生された女性アーティストとなり、Spotify EQUALプロジェクトでは世界女性アーティスト35人に選出。11月9日には全曲が日本語で歌われるニューEP『bloom.』をリリースした。それに合わせて11月15日に東京・渋谷wwwで来日公演を開催。シンセ・ポップへの拘りから、日本語で歌おうと思ったきっかけ、タイの音楽シーンやキャリアについてなど、直接本人に話を聞いた。

ーー昨夜の来日公演は如何でしたか?

Ink:とても楽しかったです。ライブに来てくださった方々が、とてもカワイイ人たちばかり。素晴らしい夜になりました。

ーー“シンセ・ポップの女王”(Princess of Synth-Pop)と呼ばれていますが、タイではいつ頃から、なぜそんなふうに呼ばれるようになったのですか?

Ink:もちろん私自身がそう名乗ったわけではないんです(笑)。でも、他の人たちからそう呼ばれてきました。おそらく“女王”というのは、たまたま私だけがその音楽分野における唯一の女性だったので、そう呼ばれたのだと思います。“シンセ・ポップ”というのは、6年ほど前のデビュー当初から、ずっと私が拘りをもっていた音楽なので、とても嬉しいです。

ーーそもそもシンセ・ポップやシティ・ポップ、80年代の音楽などに興味をもったきっかけというのは?

Ink:シンセ・ポップを聴くようになったのは大学時代でした。車で通っていたので、いつも運転しながらそういった音楽を聴いていました。当時のお気に入りは、欧米のアーティストではエレクトリック・ユースという2人組。元々少し古めの音楽が好きだったので、音楽アプリやストリーミングで深掘りしたり、その方面に詳しい友達と仲良くなって、どんどんシンセ・ポップにハマっていきました。

ーー大学ではクラシック・オペラを学んでいたそうですが。

Ink:そうなんです(笑)。

ーーオペラからポップ・ミュージックでは、180度違っていますよね。

Ink:ええ、でもオペラは大学の時に学び始めた音楽でしたが、ポップ・ミュージックは8歳から聴いてきましたから(笑)。高校時代にも音楽を専攻していて、ブロードウェイ・ミュージカルなどにも接していました。オペラはたまたま大学でポップ系の授業がなかったから選んだという感じで(笑)。

ーー今回リリースされたEP『bloom.』は、全曲が日本語で歌われています。なぜ日本語で歌おうと?

Ink:4年前に初めて来日した際に、東京の代々木公園で開催されたタイフェスに出演させてもらいました。その時に、歌詞の一部だけ日本語で歌ってみたら、多くの人たちから“すごくカワイイ”と言ってもらえたんです。私自身もまんざらではなくて、日本語で歌ったら“カワイイ”と思ったんです(笑)。ちょうど次のアルバムについて相談をしていた時だったので、「じゃあ、日本語でやってみる?」という話になりました。

ーー元々日本語を話せたのですか?

Ink:いえいえ、全然(笑)。それまではまったく日本語を学んだこともなくて、発音は凄く苦労しました。頑張りました。今回もこのEPの制作にあたっては、日本語で暮らしているタイ人の友人に連絡を取って、指導してもらいました。発音に関しては、かなり努力したと自負しています。

ーーEP『bloom.』に先駆けて、夏に発表されたシングル「Last Train」も日本語で歌われています。この曲でコラボした日本の3人組アーティスト、Three1989とは昨夜のライブでも共演されていましたが、どのように出会ったのですか?

Ink:実際に会ったのは、昨日が初めて。やっと対面できました(笑)。リハーサルをやって、そのままステージ共演も実現しました。Three1989の音楽はネットで見つけて、彼らのファンになりました。「日本のアーティストと共演するなら誰がいい?」と聞かれた時に、一番に彼らの名前を挙げていました。実際にコンタクトを取って「共演してくれませんか?」と頼んだら、快諾してもらえました。以来、ずっとパソコンやネット上でやりとりをしていたので、実際には全然会ったことがありませんでした。

ーー実はEP『bloom.』は、新型コロナのパンデミック以前に完成していたそうですね。

Ink:そうなんです、3年ほど前に完成していました。コロナ禍になってリリースがすっかり遅れてしまいました。でも、とても反響が良くて嬉しく思っています。「Last Train」のミュージックビデオも、日本で撮影する予定だったのですが、コロナ禍で断念しました。でも、やっとリリースと来日が叶いました。

ーーその曲「Last Train」は、何にインスパイアされていますか?

Ink:前回来日した際に、午前0時近くになった時、みんなが駅に向かって走っているのを見て、閃いたんです。これは絶対曲にしようと。終電に乗り遅れないように、みんなが一斉に走っていたのが凄く印象的でした。

ーータイの人は終電を気にしない?

Ink:そうですね(笑)。タイも終電は0時ぐらいなんですが、バイクのタクシーなどもあるし、いろいろと帰宅の手段がありますから。でも日本だと終電を逃したら、それはそれで好きな人と一緒にいれる口実になるのかな、とか思って、そんな可愛い乙女心を想像しながら作りました。

ーーEP『bloom.』に収録されている他の曲は、もともとタイ語で歌われていた楽曲ですが、どのような基準で選ばれましたか?

Ink:選曲の基準は、シティ・ポップ風の明るくてラヴリーな感じの曲。それが「YOU?」と「CALL ME」の2曲です。「STAY」に関しては、メロディアスでスローな感じが、日本の人たちの好みに合っているのではないかと思って選びました。気に入ってもらえると、凄く嬉しいです。

ーーEPのタイトルに『bloom.』と付けた理由とは?

Ink:1st EPのタイトルが『Bliss』という、至福の意味でした。今回は日本語で歌ったEPなので、日本のイメージといえば、まず浮かぶのが桜。桜の開花という意味を込めて『bloom.』と付けました。お花見をする桜の季節が、新しいことをスタートする時期なので、門出という意味も含まれています。私自身の成長を感じてほしいという願いを込めて。前作のタイトルと”bl”というパートが共通しているのも気に入っています。

ーーこれまでのキャリアを振り返って、ご自身ではどのように音楽的な変遷や進化があったと思われますか?

Ink:1st EP『Bliss』は、シンプルで聴きやすいイージー・リスニング的なポップス集だったと多います。女の子の素朴な気持ちを歌っていました。その後にタイでリリースしたアルバム『INK』では、かなりサウンド的にも変化があり、幅広い感情を歌っています。悲しい失恋もあれば、ハッピーな内容の曲まで、バラエティ豊かになったと思います。

ーータイでの絶大な人気の理由やきっかけは、どのようにご自身では分析されていますか?

Ink:一夜にして成功したのではなく、この6年間の努力の賜物です。ずっと続けてきたからだと思っています。最初の2年ほどは、それほど反応も得られませんでしたし、毎回ライブの後には、自分で反省会をしています。改善できる点があれば、もちろん改善に取り組みます。何か足りない部分がないか、補うべきところがないか、新しい要素を加えるべきではないか、など常に考えています。もちろんファンの皆さんが温かく見守ってくださったおかげも大きいです。

ーータイの現在の音楽シーンや人気のある音楽スタイルと、上手くマッチしたのも理由でしょうか?

Ink:それもあると思います。タイの人々は様々なタイプの音楽が好きで、様々な音楽を聴いているので、一様に括って何が一番人気かを指摘するのは、なかなか難しいです。けれども私の音楽が受け入れられた理由としては、聴きやすくて、分かりやすくて、誰もが共感できることを歌っている点だと思います。シンプルで簡単な歌詞でも、メロディやサウンドに工夫があり、ユニークな要素が入っていること。そこもポイントじゃないかと思っています。

ーー日本でも人気のビルキン(プッティポン・アッサラッタナクン)と共演されていますが、どのような経緯で実現しましたか?

Ink:4年ほど前に、ビルキンのミュージックビデオに出演したことがあって、その後に3年ぐらい前ですが、CMの撮影で再会しました。以来、凄く仲良くなって、親しい間柄です。「そのうち一緒にコラボしよう」とか言って、最初は冗談だと思っていたのですが、「本当にやってくれる?」と尋ねたらOKしてくれて、実現に漕ぎ着けました。

ーービルキンと同様、あなた自身も音楽のみならず女優やモデル、インフルエンサーとしても活躍されています。今後はどのようなバランスで活動されますか?

Ink:私としては最優先したいのは、もちろん音楽です。他の活動に関しては、スタッフと一緒に相談しながら進めています。音楽活動の合間に他のこともやっていく、そんなバランスで考えています。

ーー最後に改めて、EP『bloom.』をどのように聴いてほしいですか?

Ink:とにかく、このEPを聴いて、皆さんにハッピーになってほしいです。明るくて、幸せな気分を届けたいと思って作りました。私の日本語は完璧じゃないので、おかしい部分もあるかもしれませんが、聴いてハッピーになってもらいたいです。

ーー昨夜のライブからも、そのハッピーな気分を届けたい気持ちが凄く伝わってきました。本日は、どうもありがとうございました。
Ink:こちらこそ、どうもありがとうございました。コップンカー。

Text by 村上ひさし

◎リリース情報
EP『bloom.』
2022/11/9 RELEASE

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