DEZERT、自身初の日比谷野外大公演を開催!ライブレポートが到着

2022年6月20日 / 15:45

『DEZERT SPECIAL LIVE 2022 in 日比谷野外大音楽堂 “The Walkers”』2022年6月18日 at 日比谷野外大音楽堂 (okmusic UP's)

 絶望ではなく、希望でもなく。容赦のない雨に打たれる中ではあったものの、今宵のDEZERTが我々に向け示してくれたものとは、真摯に前を向き何事も諦めずここからまた歩き続けていくのだ、というバンドとしての強い意思だったのではなかろうか。

 このたび、DEZERTにとって史上最大キャパでの開催となった日比谷野外大音楽堂での『DEZERT SPECIAL LIVE 2022 in 日比谷野外大音楽堂 “The Walkers”』において、本編終盤で「「遺書。」」を歌いだすのにあたり、フロントマン・千秋が観衆に対して語った言葉。まず、このレポートではそれをあらかた記しておきたいと思う。

「俺たちは、DEZERTとしてかれこれもう10年やってます。次にやる曲は初期の頃から随分とお世話になってきてますが、当時の僕は生きたくもなく、死にたくもない、そんな弱い普通の青年でした。でも、前に進むためにはどちらかを選ばなきゃいけない。かっこつけてばかりでもいられない。じゃあ、そもそもなんで前に進まなきゃいけないのか?それは多分、いろんな人に出会える可能性が高いから前に進みたいんだと思います。前の方がきっと俺にとって価値のある人間がいるはずだから。(中略)俺にとっては前しか価値がないんだよ。だから、今日この歌は絶望ではなく、希望でもなく、もっと前に行くために今の自分を殺さなきゃいけない。そんな勇気の歌として、DEZERTからおまえたちにぶつけます」(千秋)

 ちなみに、本来「「遺書。」」は〈…明日を諦めますか??〉という疑問形のフレーズで締めくくられるのだが、当夜の千秋はその後さらに〈僕は諦めません!〉と断言する歌詞を追加して歌ってみせることに。

 また、話は前後するが本編中盤での「「擬死」」でもオリジナル音源では〈ねぇ、ちゃんといって目の前がもう見えないから〉と歌っていた部分を〈ねぇ、ちゃんと考えて じゃなきゃもう前に進めない〉と歌い替えたうえで、曲の最後に「全部受け容れてただ進もう。それしかないな。俺たちにはそれしかないから」という、受け手側へのメッセージのようでいて自己暗示ともとれるような言葉も添えていたのである。そして、これらふたつの場面でみられた事象たちは、やがて本編ラストに歌われた「The Walker」への布石となって繋がっていき、そのまま“The Walkers”と題されたこのライヴについての大義名分をあらためて明確にすることにもなった。

 だがしかし、その一方で今回のライヴについては小難しいことは抜きにして、彼らにとっての初野音であったという事実だけを捉えたとしても充分にその意味は大きいはず。何故なら、それこそ始動したばかりの初期あたりはもちろんのこと、なんなら5年ほど前でも内向性の強さが目立っていたDEZERTというバンドが、まさか日比谷野音で開放感&解放感のあるパフォーマンスをしてみせることになるとは…その未来図を描けていなかったのは何も筆者だけではあるまい。

 今春に行われていた『DEZERT LIVE TOUR 2022 “再教育ツアー”』を経ての収穫と成果がバンドの放つ圧の強い音の中にありありと反映されていた、オープニングの「再教育」といい。もはや円熟の域にさえ達しつつあると言っていいような、濃密グルーヴを全体のアンサンブルから存分に楽しむことが出来た「Thirsty?」といい。仮に歌詞の内容やメッセージ性だのを全て取っ払ってしまったとしても、そもそも今のDEZERTは純粋に音楽を奏でる団体として相当にレベルが高い。

 「Stranger」での叙情的にして繊細な千秋のヴォーカリゼイション、「殺されちゃう」でジミヘンばりの歯弾きソロまで披露したMiyakoのエモい攻めのプレイ、「Call of Rescue」で曲の輪郭を明瞭に醸し出しながらそこに奥行き感も与えていたSacchanの指さばき、「神経と重力」で時にワイルドな雄叫びまであげながらSORAが聴かせた男気満載のドラミング。どれもこれも、それらは全てDEZERTがここまで丁寧に時間をかけながら体得としてきたスキルとセンスによって実現されていたもの、と言って差し支えないのではないかと思う。

「今日は個人的には生きてて良かった日だと思っております。でも、人生ではなかなか上手くいかないことも多くあるから。きみたちも、これから望んでなかった辛いことはきっといっぱい起こると思う。むしろ、生きてて楽しいことなんか少しだけなんだよ。逆に、頑張らなくても良いことが起きて幸せな人生を送る人だっているかもしれないけどね。でも、やっぱりまた思うようにはいかない人生になることだってある。そんな時に「僕たちDEZERTはあなたの側にいる!」だなんていうことは言えない。無理だもん。じゃあ、何が出来るのかっていったら… これは春からやってた“再教育ツアー”で再確認したんだけど、俺たちが出来るのは物理的にではなくあんたらの側にいることなんだよ。(中略)あなたたちが気付いた時には、わたしたちDEZERTは“此処”にいるので。それだけは忘れないでいて欲しい。俺たちの音楽は、もし俺たちが死んだとしても、何時だって必ずあなたたちの隣にいる。ほんとにそう思ってます。信じて欲しい。だから、これからも僕たちをよろしくお願いします。次の曲も、絶望でも希望でもなくただ今日この場所が美しかった、正しい場所だったという、ただそれだけを証明するための曲です」(千秋)

 ここで歌われたのは、昨年からDEZERTが毎回のライヴで大切にしてきた「ミザリィレインボウ」。なお、従来この曲は本編最後に歌われることが定石であったが、この夜に関しては「ミザリィレインボウ」がある種の前提として供された感もあり、それを受けてのかたちで初披露されたのがこの日の入場者全員にCDが無料配布された新曲「The Walker」であったのだ。〈失ったモノの数だけ さぁ這い上がってゆく〉〈立ち止まらないで歩くんだ〉〈きっと綺麗な未来だけじゃないけど 僕は諦めないと決めた〉公演の途中から降り出した、容赦のない雨の中で歌われたこの歌の中に込められていた深い想いと固い決意。それは劇的かつ感動的なものとして、この場に居合わせた全ての観衆の心へ伝わっていったと確信する。

 一転してのアンコールでは、千秋いわく“バンド初の”ステージ上記念写真を撮影したり、「True Man」では千秋からの要望でオーディエンスがスマホライトを灯してキラめかせたり、続いての「包丁の正しい使い方〜終息編〜」ではSNSでの拡散を条件として観客にスマホでの動画撮影許可が出されたりと、あれこれ楽しい瞬間も用意されていたばかりでなく、フィナーレでは、DEZERTのワンマンライヴでは欠かすことの出来ないキラーチューン「「君の子宮を触る」」と、彼らの内に在る三つ子の魂が今もって不滅であることを物語る「「殺意」」の2曲が、俗にデザギャ・デザギャ男と呼ばれるファンらをおおいに喜ばせたことは間違いない。

「ありがとうございました。ここから俺らはまた歩き出すんで、おまえらもおまえらの人生を明日から歩いてください。そして、おまえらが気付いた時には俺らは“此処”にいるからな。じゃあね!」(千秋)

 かくして、終演後には出口にて何枚かのフライヤーが観客たちに手渡されることになり、そこでは以下3点が告知解禁されていたのでその内容もここにまとめておこう。《8月に過去のアルバムについて補習するための3DAYSのコンセプトライヴ[「study」]がSHIBUYA PLEASURE PLEASUREにて開催決定》《2022年秋 Newリリース 決定》《FC“ひまわり会”の発足および9月にFC限定の東名阪ツアー決定》

 絶望ではなく、かといって淡い夢でしかないような希望などでもなく。容赦のない雨に打たれる中ではあったものの、今宵をもってDEZERTが “The Walkers”となり踏み出した新たなる一歩は、諦めとは無縁な可能性に満ちた素晴らしい未来へと必ずや繋がっていくことだろう。

撮影:西槇太一/文:杉江由紀

『DEZERT SPECIAL LIVE 2022 in 日比谷野外大音楽堂 “The Walkers”』

2022年6月18日 at 日比谷野外大音楽堂

<セットリスト>

01 再教育

02 Thirsty?

03 胃潰瘍とルソーの錯覚

04 インビジブルビリーヴァー

05 Stranger

06 Sister

07 ミスターショットガンガール

08 殺されちゃう

09 Call of Rescue

10 「擬死」

11 神経と重力

12 秘密

13 デザートの楽しいマーチ

14 Your Song

15 「遺書。」

16 ミザリィレインボウ

17 The Walker

EN1 脳みそくん。

EN2 True Man

EN3 包丁の正しい使い方~終息編~

EN4 「君の子宮を触る」

EN5 「殺意」


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