ASH DA HERO vs ROTTENGRAFFTY、“GACHINKO”最終戦のライブレポートが到着

2022年5月2日 / 17:00

 渋谷Spotify O-EASTで2月からマンスリーで行なってきたASH DA HEROの主催による対バンライブのイベント【ASH DA HERO presents “GACHINKO”】。その第3回目【ASH DA HERO presents “GACHINKO” vs ROTTENGRAFFTY】が4月22日に開催された。

 まずステージに立ったのは、ゲスト・アクトの桃色ドロシー。もともと高校の軽音楽部で知り合ったハキイ。(Gt./Vo.)とキシベ(Dr./Cho.)らを中心に約10年前に結成されたロック・バンドだ。軽音楽連盟主催【神奈川県大会】で3大会連続優勝を飾るなど、注目を集める高校生ガールズ・バンドでもあった。これまで活動は地元の横浜など関東を中心としていただけに、知名度という点では全国区に及ばないかもしれない。この日も、初めましてのお客さんがほとんどだったと思う。

 だが、ハキイ。がアルペジオを弾きながら「好き嫌い」を歌い始めると、たちまち引き寄せられていく観客たち。その瞬間から桃色ドロシーの目の前に広がるのは、お客さんではなくファンと化していった。ハキイ。の伸びやかな歌声と、葛藤の末に見つけた自分らしい生き方を綴った詞。そしてコーラスというよりツイン・ボーカル的に絡みながらキレのいいドラミングで迫るキシベ。いわゆるガールズ・バンドから連想するかわいらしさを打ち出したものとは違い、本物の風格と演奏の質を持っている。曲を重ねる中でファンの心を確実に掴みながら、ハンドクラップを巻き起こすなど熱い空間も作り出す。ライブ・アクトとしての実力も当然のごとく持ち合わせていた。

 ライブ後半、5月6日から21箇所に及ぶ初の全国ツアーをスタートさせることも告げ、ASHとの出会いにも触れた。「2年前かな、私たちの企画ライブにASHさんが遊びに来てくれて。“いつか一緒にやれたらいいよね”って言ってくれて、めちゃめちゃ嬉しくて。それが実現するのを楽しみにバンドをやってきたんですけど、本日、その言葉が実現しました。みんなのおかげだと思います。本当にありがとう」

 そして、いつか近い将来、自分たちの力で再びここに立つこと、今日のライブを観たことを自慢できるようなバンドになって帰ってくることを誓い、「茜さす」をドラマティックに響かせた桃色ドロシー。自然にこぼれる感動の声と、大きな拍手が彼女たちを包み込んだ。

 勇ましい交響曲「610行進曲」と共にステージに登場したのはもちろんROTTENGRAFFTY。“610”と染め上げられたTシャツ姿のオーディエンスたちがコブシを振り上げたり、ハンドクラップを鳴らしたりと、行進曲を力強く彩る。早くもバンドと一体化したオーディンスに、煽り文句を怒号のように次々に浴びせかけるのはN∀OKI。鋭い視線でフロアの一人ひとりに睨みを利かせるのはNOBUYA。バンド・サウンドをかき鳴らすのは侑威地とHIROSHI。ギターのKAZUOMIは、ライブ活動から離れて、2022年3月からサウンド・プロデューサーとしてROTTENGRAFFTYを支えていくことになり、ステージにその姿はない。しかし彼のアンプなどが並び、ライブ用に録った彼のギター・プレイが生々しく鳴り響く。ROTTENGRAFFTYの極悪サウンドがオーディエンスの興奮を高め続けるばかり。

 そして突入したのは「ハレルヤ」。すでに結成から20年以上、そのキャリアにおごることなく徹底的に闘い抜く覚悟を封じ込めた曲でもある。バンド編成に変化を迎えた今、メンバーそれぞれのリアルな思いや熱さも重なって、さらに鼓動の激しい曲となって炸裂。黒装束姿のNOBUYAとカジュアルな格好のN∀OKIという見た目にも好対照な二人のボーカリストが、メイン・パートを掛け合いのように決めながら、突き抜けるメロディで攻めるNOBUYAとラップのリズム感を持ち込むN∀OKI。抜群のコンビネーションであると同時に、俺のほうがメイン・ボーカルとばかりに主張し合いながら火花も散らし続ける。そのギリギリのテンション感もROTTENGRAFFTYの真髄のひとつだ。

 その一方で、郷土愛が詰まったお祭りナンバー「響く都」では、HIROSHIが叩く祭り太鼓のようなフレーズに合わせ、N∀OKIとNOBUYAの掛け声でコール&拍手レスポンスも巻き起こす。レスポンスの良さに侑威地が笑顔をこぼすと、フロア側も無邪気な笑顔でいっぱいに。こうした楽しさもあれば、次の「So…Start」では胸をかきむしるような切ないメロディで酔わせた。「今日は俺たちROTTENGRAFFTYと出会ってくれて、どうもありがとうございます。…って言うと思ったか!? この場所に集まったからには、オマエら、一人も逃がさへんぞ! オマエら、やる覚悟はできてんのか、オラッ!ガチンコ勝負やぞ! 俺たちROTTENGRAFFTYを殺す気で掛かってこい!」

 ついさっきまでは美声のシンガーだったのに、完全にケンカの売人と化したNOBUYA。もちろん購入者は続出。NOBUYAが殺気だった視線で、フロアの一人ひとりを挑発しながら「THIS WORLD」を繰り出すと、オーディエンスもバンドに挑むようにコブシを突きつける。コロナ禍ゆえの様々なルールはあるものの、ここを支配するのはハンパじゃない熱さ。

 「ASHから愛のある果たし状、しかと受け取ってます。思いっきり脳裏にめり込む、刻みつけるようなライブしようと思ってます。ASHとこの前しゃべっていて、多感な時期に俺らの2003年のミニ・アルバムとかいろいろ聴いてくれてて。やっと自分の青春時代に聴いてた人と一緒に対バンできるって。ASHが今日はどんなライブをするのか、とくと見届けたいと思います」

 そんな言葉からASHが大好きな曲「マンダーラ」へ続く。N∀OKIのラップが冴える曲でもあるが、ASHに絡めたライムもアドリブで入れ込む。さらに「ASH DA HERO、ガチンコ、ありがとう!」とピースサインも掲げる。憧れの先輩たちからの最高のプレゼントだ。そこからアッパー・ナンバー「D.A.N.C.E.」へ続いたとき、ASH DA HEROの Dhalsim(DJ)、桃色ドロシーの二人が乱入。そして「輝き狂っていけー!」とN∀OKIの叫び声で決めるのは「金色グラフティー」。NOBUYA、N∀OKI、侑威地はステージ最前に張り付き、歌っては煽り、弾いては煽りの繰り返し。熱狂と笑顔があちこちで狂い咲いた。さすが、ライブ・バンド=ROTTENGRAFFTYである。

 すさまじいライブを見せつけられた格好のASH DA HERO。自分たちの出番を前にした今、メンバーを襲っているのは、武者震いだろう。SEが鳴り出す直前、客席にもハッキリ聴こえたのは、メンバーがステージ袖で行なっている気合い入れの掛け声。尋常じゃない気迫が伝わってきた。そしてSEと共にメンバーはステージに登場したが、驚くべきはギターのNarukaze。黒いスーツに左腕には黒いAの文字を描いた赤い腕章、さらに濃いめのメイク。イメージ・チェンジ前のROTTENGRAFFTYの、しかもKAZUOMIそのままの格好じゃないか。リスペクト溢れる姿で一礼してからのギター・プレイに、ROTTENGRAFFTYのファンも痺れた。

 「遊ぼうぜ、渋谷!」

 ASHの誘い文句から始まったのは新曲「Merry Go Round」。ラップもヘビーネスもポップも飲み込み、抑えきれない衝動を自覚した瞬間をリリックにした曲だ。ASHが名古屋でバンド活動していた時期、ROTTENGRAFFTYから大いに刺激を受け、突き動かされた経験を持っているだけに、言葉のひとつずつに力も入る。十代の頃、ROTTENGRAFFTYから受け取ったものを、しっかり返すがごとく。さらに曲が進む中で「オマエらのカッコいいところ見せてみろ!」とオーディエンスを鼓舞させていく。約10年前のあの日、ROTTENGRAFFTYのライブを客席側で観ていた自分が、今はROTTENGRAFFTYと対バンをしている。さあ、次はオマエらの番だ、とばかりに。夢を現実にした男だからこその説得力がそこにある。開演直前のメンバーの武者震いに似た感情が、フロアの全員に一気に伝染。声を出せない代わりに力強いコブシが次々に突き上げられていった。

 そしてライブが中盤に差し掛かるときだった。WANIのカウントを合図にNarukazeが弾き始めたのは、ROTTENGRAFFTYの「金色グラフティー」のリフ。全く予定になかった展開である。さっきのROTTENGRAFFTYからのプレゼントに、ASH DA HEROからの感謝の気持ちだ。「ロットンに愛を込めて!」とASHが叫びながら歌に突入すると、フロアでは“610”と“ASH DA HERO”のTシャツ姿のオーディエンスらが楽しそうにハイタッチしながら盛り上がり続ける。それを幸せな表情で見ながらプレイするNarukazeとSato、WANI、スクラッチで曲をさらに鼓動させるDhalsim。全てのオーディエンスと呼吸しながら作り上げるライブができるのも、やはり対バンを繰り返してきた成果だろう。

 曲のエンディングからそのままWANIがビートを刻み続け、DhalsimがDJプレイ。そこにASHがフリー・スタイル・ラップで絡み始めた。「ロットンTシャツの横に、俺のTシャツ、最高の景色」、「先輩に果たし状、その結果このステージで対バン」など、リアルタイムのライムが次々に飛び出す。そして飛び出したのは言葉だけじゃなく、ROTTENGRAFFTYのN∀OKI。共にラップを強いルーツに持ったシンガー二人が、ガチンコのラップ・バトルで感謝と愛と闘志をぶつけ合う。そのまま突入するのは「Nonfiction」。もちろん歌詞はその場のアドリブだらけ。煽るように、しかし勇気づけるように繰り返されるライムに、オーディエンスも両腕を突き上げ続けた。最後はASHとN∀OKIが笑顔でハグ。これこそがナマのライブ、興奮と高揚の大拍手が湧き上がった。

 「XIMERA」を叩きつけた後、ASHは改めて感謝を口にした。「ROTTENGRAFFTYは僕の青春時代というか、僕もいつもみなさんと同じ客席にいました。カッコいいなと思って、ロットンのライブをそこで観てました。俺もいつか、あんなカッコいいバンドを作るんだって。でもタフなことでさ。あきらめそうになること、折れそうなこと、何度もありました。だけど、あきらめの悪い男なんですね、僕は。いつか、あんなバンドやってみたいな、あんなバンドと対バンしてみたいなって、本気で願って、あがきながらあぜ道をずっと走り続けたら、今日はこんな素敵なところに辿り着きました。それもあなたのおかげです。みんなじゃない。一人ひとり、あなたのおかげです。ありがとうございます。感謝の気持ち、感動の気持ち、みんなに与えたい元気、俺たちASH DA HERO、全力で一人ひとりに刺しにいきますんで。初めて観るみなさん、ぜひ、ASH DA HEROという名前だけでも覚えて帰ってください。…なんていう気持ちはさらさらありません。ASH DA HEROのファンにガッツリなってもらいます!」

 そこから突入したライブ後半。優しさに溢れたメッセージを届けることもあれば、アリーナ級のスケール感でバンド・サウンドを聴かせる場面もある。そしてポジティブな未来に引き連れていくナンバー「PARADE」では、今度はROTTENGRAFFTYのNOBUYAがサビで歌いながら登場。ASHとNOBUYAは向かい合いながら共に力強く歌い上げてゆく。ある対談ではNOBUYAのことを“日本刀”と称したASH。憧れのNOBUYAと一緒に歌う今のASHは、青春時代のギラつきを放ったナイフか。どちらにしろ一点曇りもない輝きに満ちたシンガー二人の歌いっぷりは、強力であり感動的。二人の歌声を全身で浴び、やはり輝く笑顔を見せるオーディエンスだった。

 さらに新曲「世界をぶん殴れ」に入ったとき、ダンサーとして登場したのは桃色ドロシーの二人と、幕間のMCとしてガチンコを盛り上げたマクシム。それに加えて、リュック姿の一名の不審者まで現れた。と思ったら、バンド内のイジられ役であり、オフではお笑い担当のROTTENGRAFFTYのHIROSHI。曲に合わせて着ていたSatoのスウェットをリュックに丁寧にしまうと、ASH DA HEROのTシャツ姿になって、奇妙なダンスでオーディエンス全員とASH DA HEROのメンバーを笑かしに掛かる。ワチャワチャなフェス感まで実現してしまったガチンコとなった。
 
 そのガチンコの首謀者であるASHは最後にこう約束もした。「オマエらが好きに暴れられる未来を必ずたぐり寄せてみせるから。またライブハウスへ笑顔で会いに来てください!」

 上半身ハダカになり、力を全身にみなぎらせ、魂をふるわせて決めるのは「HERO IS BACK 2」。ステージ袖にはROTTENGRAFFTYと桃色ドロシーも勢揃い。ガチンコ出演バンドやメンバー全員の気持ちを代弁するように、さらにパワフルに音もメッセージも轟かせるASH DA HERO。2月から続けてきたガチンコのラストにふさわしい場面が繰り広げられた。

 これで【ASH DA HERO presents “GACHINKO”】シリーズは終了となったが、これはASH DA HEROにとってバンド・シーンへの挨拶の始まりに過ぎない。次の野望に向けて、ASH DA HEROのスタートはすでに切られている。

Text by 長谷川幸信
Photo by 堅田ひとみ

◎公演情報
【ASH DA HERO presents “GACHINKO” vs ROTTENGRAFFTY】
2022年4月22日(金)
東京・Spotify O-EAST
OPEN 17:00 / START 18:00
出演:ASH DA HERO / ROTTENGRAFFTY / 桃色ドロシー(ゲストアクト)


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