『ナイト・コール』イヤーズ&イヤーズ(Album Review)

2022年1月24日 / 18:00

 オリー・アレクサンダー、マイキー・ゴールドスワシー、エムリ・タークメンによる英ロンドン出身のトリオ・バンド……であったのは昨年3月までのことで、以降オリーによるソロ・プロジェクトとして再スタートを切ったイヤーズ&イヤーズ。個々それぞれに長所・魅力があった3ピースの分散は残念ではあるが、SNSの投稿によると阻害要因となるネガティブな理由はなく、関係性も(おそらく)良好。エムリはプロデューサー業に、マイキーはライブのバンド・メンバーとして引き続き参加するとのことで、音楽に精通するという意味では縁が完全に断たれたというワケではないようだ。

 イヤーズ&イヤーズとしては、これまで「キング」や「シャイン」といったヒット曲を輩出したデビュー・アルバム『コミュニオン』(2015年)、【FUJI ROCK FESTIVAL ’18】来日直前に発表した2ndアルバム『パロ・サント』(2018年)の2枚をリリースしていて、本作『ナイト・コール』はそれに続く3枚目、オリー・アレクサンダーのソロ・プロジェクトとしては処女作となる。

 オリーは、自身のセクシャリティを明かしたうえでLGBTQ+コミュニティを支援する活動をしているが、本作ではその本質をより露わに、自由の主張や苦しみ、喜びなど経験を基にゲイ・アイコンとして何を伝えられるかを目的としている。サウンドも、カイリー・ミノーグやペット・ショップ・ボーイズ、ドラァグ・クイーンとしても知られる故シルヴェスター・ジェームスなど、クィア・コミュニティから高い支持を得ている先駆者の影響が随所に伺える、コンセプトに則ったダンス・ポップが満載。

 なお、昨年5月に開催された【ブリット・アワード2021】では、そのペット・ショップ・ボーイズの代表曲「イッツ・ア・シン」(1987年)をエルトン・ジョンとコラボレーションしたことが話題となり、同日にシングル・カットもされたが、本作には収録されていない。同コラボレーションは、HIVの感染拡大をテーマにしたオリー主演のドラマ『IT’S A SIN 哀しみの天使たち』が由来となっており、サウンド面からしても違和感はなかった……ように思えるが、そこはコンセプトや契約上の事情諸々があったのか、否か。

 それから、何といっても見逃せない……というか見逃さないのが、アルバムのカバー・アート。中心に腰かけている人魚に扮したオリーからも、オリー・アレクサンダーのソロ・プロジェクトであることは明確で、未だ偏見や差別はあるものの、こういったスタイルを堂々と貫くことができる世の中になったことは、彼らアーティストの努力の賜物もあるだろう。疾走感あるコズミック・ファンクで幕開けする「コンセクエンシズ」では、そんな「未だ偏見や差別がある」アンチLGBTQ+コミュニティへの言及がされている。

 華やかなサウンドの中に毒々しいメッセージを組み込むオリーらしいオープニングから、リード・シングルの「スターストラック」へ。同曲は、キャッチーなメロディと煌びやかなシンセが舞う、ライト感覚のニュー・ディスコで、タイトル、そしてオリーのキャラクターも十二分に映える傑作。昨今の“80’sリバイバル”という流行もしっかりおさえていて、米ダンス/エレクトロニック・ソング・チャートでTOP20入りしたのも納得の出来栄えだ。曲をよりたのしむには、ピアノの上でムーンウォークを披露したり、ラグジュアリー・ホテルを颯爽とステップするMVもおさえておきたい。

 日本盤ボーナス・トラックには、ラッパーのSIRUPとコラボレーションした「スターストラック(SIRUP Remix)」と、カイリー・ミノーグをフィーチャーしたリミックスも収録。なお、デラックス・エディションには、そのカイリーが昨年リリースした『ディスコ』のゲスト・リスト・エディションより「ア・セカンド・トゥ・ミッドナイト」も、ボーナス・トラックとして収録されている。

 宇宙旅行をしているような気分に浸る未来的エレクトリック・ファンク「ナイト・コール」で区切り、次の「インティマシー」では幻想と快楽をイメージしたレゲエ風のミディアムで一息つく。歌っているのは、タイトの通り同性愛者間における親密な関係性で、同性婚や世間の見方に対する彼是……と、様々な受け取り方ができる意欲作だ。一方、巨大フロアが浮かぶフレンチハウス「クレイヴ」では、想い人への無償の愛が歌われていて、オリー独自の世界観が堪能できる曲が続く。

 独自の世界観といえば、スウェーデンのエレクトロ・デュオ=ギャランティスを招いた「スウィート・トーカー」 もしかり。ストリングスが舞うゴージャス感、80年代のディスコ・フロアをエミュレートした雰囲気は、前2作にはない持ち味があり、グリーンのワンピースに網タイツで逃げ回る『ゼルダの伝説』風味のミュージック・ビデオも、カラフルでポップな世界観がオリー“らしい”仕上がりだった。2000年前後のアイドル・グループを彷彿させるエレクトロ・ポップ「スーナー・オア・レイター」~ファルセットが続く終始ソフトなセピア色のミディアム・メロウ「20ミニッツ」も、曲調が変われどオリー・ワールドは健在。

 「20ミニッツ」でダンスフロアへ促し、ダウンビートと脱力したボーカルで宇宙空間へ誘う「ストレンジ・アンド・アンユージュアル」~「メイク・イット・アウト・アライヴ」へ。後者は、失った後の喪失感と前向きなメッセージを乗せたミディアム・メロウで、繊細な歌い回しや情緒ある旋律からもその感情が読み取れる。本編最後は、レディー・ガガやケイティ・ペリーのポップ・センスを見習ったダンス・ポップ「シー・ユー・アゲイン」でオリーらしく締め括り、ボーナス・トラックでは再びダンスフロアへ……。

 ボーナス・トラックといえど侮れず、ダンスホールやラテンの要素を取り入れたエキゾチックな雰囲気の「イマキュレイト」、タイトルを裏切らないエロティックで妖しげなムードのゲイ・アンセム「マッスル」、80年代のフレンチハウス~シンセポップを今風に焼き直した「リフレクション」と傑作揃い。「ア・セカンド・トゥ・ミッドナイト」も無論すばらしいが、カイリーとは新曲でコラボレーションしなかったのが残念なところではある。

 本人が公言していたとおり、本作は自身のルーツである流動性に満ちたダンス・ポップ・アルバムで、恋愛観や思想、フロアでの想い出からセックスまで、内に秘めていた自分を解放した内容がソロ・プロジェクトとしての本質を明確に示した作品だった。デュア・リパの『フューチャー・ノスタルジア』に通ずるところもあり、解放繋がりでは、パンデミックの収束にかけたという意味でもタイミング的にフィットする。

Text: 本家 一成


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