<ライブレポート>あいみょんデビュー5年目の武道館、初心を忘れない弾き語りライブ

2021年12月14日 / 12:00

 今年5月より弾き語りツアー【AIMYON 弾き語りTOUR 2021 “傷と悪魔と恋をした!”】を行っているシンガー・ソングライターのあいみょんが、今からちょうど5年前にシングル『生きていたんだよな』でメジャー・デビューした同日の11月30日、東京・日本武道館公演にてライブを行なった。このメモリアルな特別公演は、ファンクラブ会員限定で生配信も行われた。

 真っ暗なステージで、一筋のスポットライトに照らされたあいみょん。まずはツアー・タイトルにもなっている未発表曲「傷と悪魔と恋をした!」からライブをスタート。たっぷりと間を取りながらアコギを力強くかき鳴らし、のびやかな声を披露した。続く「青春と青春と青春」は「君はロックを聴かない」のカップリング曲。先ほどよりも照明が明るくなり、ステージには最小限の機材のみが設置された、まるで路上ライブのようにシンプルなセッティングであることが分かる。スリーフィンガーのアルペジオに乗せて歌う「ポプリの葉」は、『おいしいパスタがあると聞いて』(2020年)に収録された“香り”と“記憶”にまつわる切ない恋の歌。一つひとつ、言葉を確かめるように丁寧に歌うあいみょんの姿が印象的だった。

 「武道館にようこそ! お待たせしました、やっほー見える?」と、2年9か月ぶりにここ武道館のステージに立てた喜びを、全身で表現しながら客席に向かって挨拶するあいみょん。新型コロナウイルスの感染防止対策のため、オーディエンスは“声”を出すことを禁じられているが、代わりにメッセージ・ボードを使ってやりとりしたり、ジェスチャーを駆使してなんとか想いを伝えようとしたり、通常のライブとは一味違うコミュニケーションをあいみょん自身もポジティブに楽しみながら、会場の雰囲気を和ませていく。

 「こういうのはもうないと思っているし、むしろ貴重でしょ? こんな感じで今日は、ゆるく楽しくやれたらいいと思っています」と呼びかけると、フロアからは大きな拍手が鳴り響いた。

 「2年前の武道館で、最初にやった曲をやります」と紹介し、自身の代表曲「マリーゴールド」を歌ったあとは、紫の照明に照らされ「スーパーガール」を披露。透き通るようなファルセットを時折入れながら、スリリングなコード進行の上で<未だ僕の指先誘導して><今は僕の上で踊っている>と官能的な歌詞をアンニュイに歌い上げる。かと思えば「朝陽」では、<愛されたい 愛されてみたい 愛されて 愛してみたい>と髪を振り乱しながらシャウトし、関ロシンゴのプロデュースによる軽やかなバンド・サウンドの音源とはまた違う魅力を、この曲から引き出していた。

 「弾き語りツアーはほとんどやってないから、初めて聴く人もきっと多いかも。もともと私はこのスタイルで、路上で歌ってきたんだけどやっぱり武道館だと緊張するね」。まるで自宅に友人を呼び寄せ、ギターを抱えて話し込んでいるかのような、気さくでフレンドリーなあいみょんの様子に会場の空気もどんどん緩やかになっていく。

 ライブ中盤では一転、ドラマ『私の家政夫ナギサさん』の主題歌にも起用された「裸の心」、『瞬間的シックスセンス』(2019年)収録のフォーク・ナンバー「恋をしたから」、そしてドラマ『婚姻届に判を捺しただけですが』の主題歌「ハート」と、しっとりしたバラードを続けて披露。「恋をしたから」では、狂おしいほど切ないメロを情感たっぷりに歌い上げ、恋をしたときの寂しさ、苦しさを表現してみせた。

 「メジャー・デビュー5周年で5歳になりました! この記念すべき11月30日の武道館がたまたま空いていたので、せっかくやしやることにしました。この空間にこうして一緒にいられるのが本当に貴重やなと思う。音楽は一人でも、いくらでも作って歌えるけど、こうやってみんなの前に立って歌い続けることは難しい。だからこの5年間は、ほんまに幸せでした。いろんなことがあったけどね、みんなのおかげで楽しく過ごせています。ありがとう!」と、ファンへの感謝の気持ちを伝えたあいみょん。ライブ後半では、デビュー前の18歳の頃から大阪梅田駅前の路上で披露していたという「夜行バス」「19歳になりたくない」の2曲を披露した。

 さらに、首からハーモニカ・ホルダーを下げ、敬愛する岡本太郎の作品『太陽の塔』に捧げる自伝的な内容の「TOWER OF THE SUN」を、ボブ・ディランばりに熱唱。そして、照明をぐっと落とした暗がりの中で、メジャー・デビュー曲「生きていたんだよな」を歌うと、そのセンセーショナルだが悲しいほど美しい歌詞が会場いっぱいに響き渡った。

 ライブ終盤には、今年リリースした新曲「愛を知るまでは」も披露。ドラマ『コントが始まる』の主題歌に抜擢されたこの曲は、あいみょんが22~23歳の頃に書いたという。「一番がむしゃらやったかも。『生きていたんだよな』を作ったときもキツかったけど、この曲を作っているときが、一番どうしたらいいか分からなかった。でも、そんな曲を26歳になってこうやってリリースできて、武道館で歌えるのはすごく嬉しいし、一つひとつ叶っていってるんやなって感じます」と、感慨深そうに語った。

 「次の曲は、みんなのリズム感と手拍子が必要です」と呼びかけ、「今夜このまま」を歌い始めると、自然発生的にハンド・クラップが沸き起こり、キメを全員で合わせるなど会場は一体感に包まれた。さらに続けて「サラバ」を歌い出すも、歌詞を間違えて最初からやり直すハプニングに見舞われる。

 「いつまで経ってもステージというのは、自分を新人に戻してくれるというかさ……自分はまだまだ新人なんやなって思いますけど、頑張ります!」と気持ちを切り替え、「君はロックを聴かない」を熱唱してこの日のライブを締めくくった。

 どこまでも等身大でありながら、アコギ1本と自身の歌声で武道館という大舞台を掌握したあいみょん。デビュー5周年という節目を迎え、これからどのような進化を遂げていくのか今から楽しみでならない。

Text by 黒田隆憲

◎公演情報
【AIMYON弾き語りTOUR 2021~傷と悪魔と恋をした▽ in 武道館~】(※)
2021年11月30日
東京・日本武道館

※▽=正式表記はハートの特殊文字


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