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<ライブレポート>三遊亭白鳥×田島貴男、噺家×ミュージシャンの異色のコラボが生み出す一夜限りの二人会

 1123日、FM COCOLOとサウンドクリエーターが主催する【三遊亭白鳥×田島貴男ペルソナとソウルの粋な戯れ『一期一会』】が、大阪市中央公会堂で開催された。

 本イベントは噺家とミュージシャンがコラボするもので、落語を愛するORIGINAL LOVE·田島貴男が敬愛する当代きっての噺家を迎える、まさに一期一会なイベント。今年6月には東京公演として噺家·柳家喬太郎を迎え、同時配信も行い大盛況のうちに終了。大阪公演は当初はライブハウスでの開催を予定していたが、新型コロナウイルスの感染拡大の状況を踏まえ、開催を延期。この日は噺家·三遊亭白鳥を迎え、同時配信も行いつつ、一夜限りの二人会が繰り広げられた。

 この日の舞台は重要文化財にも指定されている大阪市中央公会堂。高い天井にはシャンデリアが並び、金色に輝く装飾や大理石の柱など荘厳な雰囲気漂う歴史的建築物のなかに、1本のマイクと高座が設けられている。そして、落語でおなじみの出演者の名前が書かれた「めくり」には「一期一会」の文字が。豪華絢爛でいて、ほかにはない貴重な寄席の舞台、観客は記念にとステージを撮影する人も多い。 

 開演時間ちょうどを過ぎた頃にイベントの始まりを告げるSEが鳴るが、この日はSEからさっそく特別仕様だ。三味線や太鼓で演奏された出囃子Ver,”の「接吻」が鳴り、客席からは驚きと歓びを混ぜ込んだ拍手が聞こえる。「めくり」が「三遊亭白鳥·田島貴男」に変わると、上手から三遊亭白鳥、下手から田島貴男が登場する。三遊亭白鳥は白の着流しに胸には白鳥の紋を、田島貴男は黒をベースにしたジャケットスタイルだ。

 会場の空気を温めるべく、まずは2人のオープニングトークから。田島は「江戸落語の白鳥が上方落語の大阪に殴り込みにきた!」と観客を煽ると、白鳥は「勘弁を……」と苦笑い。田島はふらりと観にいった寄席で、東京公演でも共演した柳家喬太郎の高座を見て「すごい場所がある!」とショックを受けたという。そして自身が10年ほど前から開催してきた「ひとりソウルショウ」は落語から大きな影響を受けたものだと、落語愛を熱く語る。そして、この日共演する白鳥については「江戸落語の中でも新作落語を。アバンギャルドで変な落語をする噺家」と紹介するも、そこには白鳥への愛がたっぷり。田島は白鳥との出会いを語りつつ、「音楽と落語の絡みを楽しんで」と2人での夢舞台の幕開けを告げる。

 ステージはまずは田島貴男から。1曲目「フリーライド」、深みのあるリゾネーターギターをかき鳴らしつつ、ギターのボディを叩き鳴らしてリズムを生み出すボディ·ヒット、両足を使ってのフットストンプやタンバリンなど、一人きりのステージとは思えないほどの複雑な音を鳴らしていく。ひとりソウルショウの迫力は凄まじく、会場の空気が一気に引き締まったのが伝わってくる。ソウルフルでブルージーな演奏は次曲「遊びたがり」でも続き、ご機嫌に歌う田島の伸びやかな歌声、リズミカルな音の響きが心地良い。

 MCでは、この日の会場でのプレイは自身初だと語る田島。歴史ある建物ということもあり、過去にはアインシュタインなど世界の偉人も講演を行ったことから、「アインシュタインの残り香を嗅いでみたい」と冗談を飛ばすシーンも。大好きな落語とのコラボに終始ご機嫌な田島は「築地オーライ」で観客のクラップを煽りつつ、ブギウギにも似たリズムを鳴らす。と、ここで曲中に突然の語りが始まる。落語についてのストーリーを交えた語りだ。何が起きるか全く予測不可能ななか、上手から白鳥が登場すると、田島×白鳥のコラボステージが実現!しかも白鳥自ら作詞作曲したという「落語居酒屋」なるオリジナル曲の披露だ。田島がギターを鳴らし、白鳥が歌う。「人生が落語みたいだったらいいのに」と、有名落語の数々を盛り込んだ歌詞は2人が言うにはてけれっつのぱ(明治期に流行った流行歌)みたいだという。白鳥の歌唱はお世辞にも上手いとは言えなかったが、それもまた愛嬌。「歌は語れ、台詞は歌え」という名言のままに、音楽と落語が見事に交錯していく。

 ステージは再び田島のソロステージへ。「次の曲をやるのに、空気が乱れた感じになりました」と自虐しつつも、次に披露したのは名曲「接吻」だ。いつもより軽快なリズムに、後半に進むほどより広く深く響く歌声。吐息さえも甘い歌声に酔いしれる観客たち。そしてラストは「JUMPIN’JACK JIVE」。ブルースハープを吹き鳴らし、ボディ・ヒットにスキャットに、ひとり何役もこなしながら全身でソウルフルに音を鳴らす。観客のコール&レスポンス代わりのクラップに乗っかり、昂りを抑えきれない田島は吠えるように歌い上げステージを締めくくった。

 お次は三遊亭白鳥の高座だ。ステージに残った田島が白鳥の出囃子である「白鳥の湖」をボトルネック奏法で鳴らすなか、本題前の話まくらが始まる。さきほど田島のギター伴奏で歌い上げた「落語居酒屋」についての制作秘話では、田島の無茶ぶりから数日前に完成したばかりの楽曲だったことを告白。しかも歌唱は1番のみで、実は3番まであるとか。いつか田島に全曲歌ってほしいもんだと話しつつ、これも一期一会だとイベントタイトルに懸けた話が次々に出てくる。

  この日、白鳥が披露した落語は一席のみ。田島がリクエストしたという創作落語「奥山病院奇譚」だ。救急車に乗れずに亡くなってしまった給食センターで働いていたおばちゃん「よしえさん」にまつわる恐怖の伝説。その舞台である、奥山病院へ警備のバイトでやって来た男性が体験する驚愕&恐怖(!?)の一夜……という、文字にするとなんだか怖そうに聞こえるが、「あまり怖くない白鳥ホラー落語」と言うだけあって、くすりと笑ってしまうネタがわんさかと盛り込まれている。登場人物も設定もはちゃめちゃなんだけど、上下を切った白鳥の喋りや手ぬぐいや高座扇といった、落語ならでの小道具を使った仕草など、落語初心者な音楽ファンでも楽しめる内容に、気付けばグイグイと白鳥ワールドに引き込まれてしまう。

 ネタがどんどん進むなかステージの下手から再び田島が姿を現すと、ネタの最中に楽器を鳴らす鳴り物にギターで参加。落ち武者が登場するシーンではおどろおどろしい音を、車がガケから落ちるシーンではギターを豪快にかき鳴らしたりと、ライブ感満載のネタへと盛り上がっていく。そして、伏線回収しまくりな滑稽噺のオチに合わせ、最後のコラボへ。ネタ中に出てくる幽霊を成仏させるように、「フィエスタ」で多幸感たっぷりに田島が歌い、白鳥は高座で手ぬぐいを振り回してヘトヘトになるまで踊り明かし、一期一会な舞台の幕が閉じた。

 ミュージシャンと噺家、名人同士の一夜限りの掛け合いはなんとも贅沢だったが、この日で三遊亭白鳥×田島貴男贔屓になった人も多いだろう。一期と言わず、何度でもお願いしたい。  

Text:黒田奈保子
Photo:渡邉一生  

イベントタイトル
三遊亭白鳥×田島貴男 ペルソナとソウルの粋な戯れ 『一期一会』】
日程:20211123日(祝・火)
会場:大阪市中央公会堂大集会室
出演:三遊亭白鳥/田島貴男

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