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<ライブレポート>渡辺香津美、デビュー50周年記念ライブで遊び心に満ちた意思を浮き上がらせる

 弱冠17歳でリリースした『Infinite』がリリースされたのが、1971年のこと。つまり、2021年はジャズ界の前線を長年闊歩してきた渡辺香津美にとってアルバム・デビュー50周年となる。そんな彼の大きな節目を飾る、“スペシャルな”コンサートが行われた。会場は川崎駅近くの、ミューザ川崎シンフォニーホール。同所がずっと続けている<フェスタサマーミューザ KAWASAKI>の一環として、この公演は行なわれた。

 広いステージ上には渡辺のギターが、5本置かれる。エレクトリック・ギター2種、そしてアコースティック・ギターもガット弦、スティール弦、12弦のものが3種類。曲により彼は思うままそれらのギターを持ち替えて、自在に指板に指を躍らせる。どれを弾こうと、そのギターが持つ持ち味を彼は引き出し、彼ならでは高いスキルをあっさりとアピールする。まさしく、ギターのヴィルトゥオーソ。もう、その“どうにでも行けて、どこにでも行ける”様だけで、50年という彼ならではのギター人生を照らし出す。

 そうした様々な奏法や表情を飄々と出していく渡辺をサポートする演奏陣の顔ぶれが、また興味深い。共演アルバムを出してもいるフラメンコ・ギターの匠である沖仁、ジャズとブラジル音楽の間を行き来し渡辺貞夫のバンドにも在籍するベースのコモブチキイチロウ、そしてクラシックのエリート畑を歩んできているフルート奏者の荒川洋という面々。荒川は品が良くも、確かなソロを十全に聞かせてくれた。

 ようはドラムなしの編成のもと、繊細さや柔和さを抱える方向性を取り演奏が繰り広げられていく。その様は気温と湿度が高いこの時期、おおいに歓迎すべき清涼感や細やかな流動感を接する者に与える。面白いのは、渡辺とコモブチのデュオで始まったコンサートは4人全員で演奏される場合もあるものの、他にも“渡辺×沖”、“渡辺×コモブチ×荒川”、“渡辺×荒川”といったように、いろいろな組み合わせを取り送り出されたこと。それは音楽の送り出し方の正解は一つだけではなく、なにも一つにフォーマットに固定する必要はないという、渡辺の遊び心に満ちた意思を浮き上がらせる。

 公演は、2部制にて行われた。1部は、すべて渡辺香津美のオリジナル曲が演奏され、新たな手触りを持つものとして送り出される。MCで何度やってもスリリングな曲と自らコメントした「遠州つばめ返し」や当時本人も出演したカセット・テープのTV-CMで使われた「unicorn」といった1980年代上半期の有名曲も新たな表情を纏う。荒川が入った前者は透明感と迷宮度数が増し、沖の個性も存分に介された後者はまさに「哀愁のunicorn」という聴き味を持つものになっていた。

 一方、2部は渡辺曲とともに、ベートーヴェンやラヴェルや谷川公子の曲も取り上げるなど、より広い視点に立った、渡辺香津美の考える表情豊かな室内楽的表現が送り出された。そして、さらにポップ・ミュージックとジャズを俯瞰する活動をしてきているシンガーのSHANTIも出てきて、華と親しみやすさを加えた。彼女はアンコール曲を含め4曲歌ったが、米国を代表する作曲家の一人であるフォスターの1854年曲「ハード・タイムス・カム・ノー・モア・アゲイン」やスコットランド民謡発祥である「ウォーター・イズ・ワイド」というメッセージ性を持つヒューマン曲(ともに、ボブ・ディランもカバーしている)も歌う。その選曲とパフォーマンスはいまだ密を避けなければならない現況にこそ、強く訴求するものではなかったか。SHANTIは渡辺と谷川のインスト共作曲「Soleil」にも人間愛を愛でる新たな英語詞を付けて披露した。

 といった感じで、公演は本当に盛りだくさん。限られた時間のなか、これだけ情報量が多く、聴き所に満ちるパフォーマンスをまとめたのは、とても労力と工夫を要することだったろう。さすが、50年にもおよぶキャリアは伊達ではない。そんな生理的に壮大と言いたくなる公演をやり遂げた5人はアンコールを終えた後にステージ前に出てきて、横に並びにこやかに拍手に応える。その様が、生理的に美しかった。

Text by 佐藤英輔

◎公演情報
【サマーナイト・ジャズ渡辺香津美KW50「トワイライト・ジャム」】
2021年7月24日(土)
神奈川・ミューザ川崎シンフォニーホール
出演:渡辺香津美(Gt.)、荒川洋(Fl.)、コモブチキイチロウ(Ba.)、沖 仁(フラメンコ/Gt.)、SHANTI(Vo.)

【KW50 渡辺香津美「KYLYNが来る」】
2021年11月13日(土)
神奈川・ミューザ川崎シンフォニーホール
OPEN 16:00 / START 17:00
出演:渡辺香津美(Gt.)、井上銘(Gt.)、井上陽介(Ba.)、ヤヒロトモヒロ(Per.)、村田陽一(Tb.)、本多俊之(Sax.)
ゲスト:大西順子(p) ほか
チケット:S席 6,000円 / A席 5,000円 / B席 4,000円 / U25 2,000円(B席のみ)

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