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<ライブレポート>渋谷すばる 無念のツアー中止を経て開催した配信ライブで歌を止めないと高らかに宣言

 渋谷すばるが、2021年4月21日に無観客生配信ライブ【渋谷すばる ONLINE LIVE 2021「NEED」】を東京ガーデンシアターで行った。

 2020年1月の全国11公演&初のアジアツアーが中止となり、渋谷はその鬱憤と、歌う場所が欲しいと懇願を込めた2ndアルバム『NEED』をその年の11月にリリースした。リリース当時は誰もが新しい年に希望を抱いたが、ぶり返したこの未曾有のパンデミックによって、4月から開催予定だった全国ツアーが再び中止に。しかし、渋谷の直接ファンへ歌を届けたいという熱い思いは変わらなかったのだろう。歌い手としてできる最大限のパワーを屈指して、彼の情熱が約1時間半にわたって全国に届けられた。

 誰も座っていない、どこか物寂しげな客席が映し出され、最新アルバムのスタートナンバー「Sing -a cappella-」で配信ライブは幕を開けた。<歌が必要だ 俺にはどうしても/歌が必要だ 君にもきっと>と声一本で伝えるそのストレートかつ正直な願いが、画面越しながら胸に刺さる。塚本史朗(Gt.)やMASUO(Dr.)、山本健太(鍵盤)、なかむらしょーこ(Ba.)らプレイヤーたちにもフォーカスした「Earth Color」、渋谷がハーモニカを吹き荒らす「BUTT」と最新アルバムの収録曲が続く。温かみのあるオレンジがかった照明で、時折ステージ後方から客席に向かったアングルや渋谷のアップ、ズームイン/アウトを入れたり、カメラマンが走り回ったりするカメラワークで、視聴者を飽きさせない。

 「いろんなところから、いろんな環境で聞いてくれていると思いますが、それぞれの環境で、あなたが今いる場所で精いっぱい楽しんでくれ! 近所迷惑にならない程度にお願いします。我慢できそうにないなら、ご近所さんも連れてきて一緒に見ちゃえばいいんじゃないかな。」と、興奮気味にMCが入り、60年代ロックを彷彿させる「ワレワレハニンゲンダ」でステージに立つメンバー全員が、それぞれが持つ楽器や声でぶつかり合った。激しい演奏に反して、みなの表情は笑顔だ。ここまで休みなく次から次へと展開し、ウッドベース、カホン、アコースティック・ギターへとスムーズにチェンジすると、ジャジーな世界へひとっ飛び。さすがのノンストップ演奏に、渋谷から「しんどい!」という言葉が漏れた。

 一息ついた渋谷から「こんばんは」と挨拶されると、コメント欄にはたくさんの返事が。ここからはアコースティック編成で「水」、「今日はどんな一日だった」が演奏された。「2ndアルバム『NEED』が出て、だいぶ経ちました。去年のいつかに出たんですけど(笑)、そんななか、新しい曲も増えてますので、何曲か新曲をやりまして、次のリリースを匂わせておこうかな、というコーナー(に突入)です。(ツアーが中止で)大赤字ですので(笑)頑張っていきたいと思います。」と、ファンには嬉しい新曲3曲が初披露された。鍵盤のタッチが心地いい1曲目から、<急激な気温差はやめてあげてくださ~い>と中毒性の強いコメディチックなアップテンポ、そしてJRA【天皇賞(春)】のタイアップソングで、激情的に展開する「塊」まで、どれも表情が異なる楽曲で、ジャンルの幅広さをアピールした。

 ライブも終盤に差し掛かり、前半で見せた勢いを抑えて、渋谷の真骨頂である野太い声を活かした“聞かせる”ナンバーが続く。「人」は特にボーカルとハーモニカにフォーカスし、シンガーとしての実力を感じさせるパフォーマンスだった。仁王立ちで力強く始まった「生きる」でも、特別凝ったアレンジは入れず、歌を聞かせることに全集中。目をつぶり、声をふり絞るように歌う渋谷から、この難しい時期を、前を向いて乗り越えていけるような勇気をもらえた気がした。

 「好きで好きで仕方がないことを思いっきりやれていて、幸せです。これからずっとずっと死ぬまで続けていこうと思います。大事な人たちに囲まれながら一緒に続けていこうと思います。これからもよろしくお願いします。」と、決意表明をした渋谷は、その意志をメロディに乗せて「素晴らしい世界に」で本編に幕を下ろした。

 一度ステージから下がったものの、両腕を挙げて戻ってきた渋谷は「アンコールありがとうございます。最後にもう一曲だけ、言いたいことを言わせてもらいます!」と、アンコールに選んだのは2019年発表の1stアルバム『二歳』のスタートナンバー「ぼくのうた」。22年間所属したジャニーズ事務所を退所し、ソロとして第2のキャリアをスタートした彼なりの挨拶ソングを通して、“僕は音楽が、歌が大好きなんだ。器用に歌えないけど、歌う場所さえあればそれだけでいいんだ!”ということを、文字通り、声を大にして改めて宣言した。みなの気持ちが最高に高まった瞬間であり、有観客で開催されていれば、拍手が会場に鳴り響いた瞬間でもあったことだろう。それを本人に届けることができないのが非常に残念ではあるが、「みんなで一緒に歌ったり泣いたり笑ったりできる、そんな日のために明日からも一緒に頑張っていこう! ずっとずっと一緒に頑張っていこう。ありがとうございました。また!」と渋谷が望むように、その日が早く来ることを願って、今は少しだけ胸にしまっておこう。

Text by Mariko Ikitake
Photos by 伊藤岳

◎ライブ情報
【渋谷すばる ONLINE LIVE2021「NEED」】
2021年4月29日(祝・木)23:59までアーカイブ配信あり
チケット代金:3,500円(税別)

◎セットリスト
1. Sing -a cappella-
2. Earth Color
3. BUTT
4. たかぶる
5. ワレワレハニンゲンダ
6. 水
7. 今日はどんな一日だった
8. 新曲
9. 新曲
10. 塊(JRA「天皇賞(春)タイアップソング」)
11. 風のうた
12. 人
13. 生きる
14. 素晴らしい世界に
<アンコール>
1. ぼくのうた

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