世界中で大きな成功を収めたレッド・ツェッペリンの最高傑作『IV』

2020年10月9日 / 18:00

1969年、革命的なサウンドで華々しくデビューしたレッド・ツェッペリン。それから71年までの3年間に、数多くのツアーをこなしながら4枚ものアルバムをリリースしている。これはデビュー時から彼らがいかに多くのアイデアを持っていたかを示す証明になるだろう。ツェッペリンはハードロックやヘヴィメタルの元祖と言われることが多いが、実際にはブルースやブリティッシュトラッドのほか、カントリー、フォーク、ブルーグラス、ソウル、民族音楽など、さまざまな音楽をバックボーンに、多彩かつ重厚なサウンドを創造したグループだ。多くの音楽的側面を持つ彼らだが、今回取り上げるのは彼らの作品中、最もよく知られたタイトルのない4thアルバム(通称『IV』)で、本作にはロックのアンセムとして知られる「天国への階段(原題:Stairway to Heaven)」が収められている。
レッド・ツェッペリンの魅力

ツェッペリンのサウンドは重低音のリズムセクションと突き抜けるようなハイノートのヴォーカル、そして独特の覚えやすいギターリフが大きな特徴だと言われているが、彼らの魅力は実はそれだけにとどまらない。69年当時、デビューアルバムに収められた「グッド・タイムス・バッド・タイムス」や「コミュニケーション・ブレイクダウン」の印象があまりに強烈だっただけに、リスナー側がグループの音楽性を固定的に捉えてしまったのかもしれない。

しかし、彼らのリズム面に着目してみると、ジェームス・ブラウンやミーターズのようなファンクからの影響が大きいことがわかる。『II』(’69)所収の「レモン・ソング」を聴けば、ベースはジェリー・ジェモットやチャック・レイニーを彷彿させるし、ドラムはバーナード・パーディの跳ね方に近い。

面白いのは彼らがブルースをやってもツェッペリンならではのサウンドになっているところ。当時のイギリスのルーツロッカーたちは、いかに本場(アメリカ)の音楽(ブルースでもカントリーでも)に近づけられるかで競い合っていた感があって、例えばフリートウッド・マックの初期のサウンドと比べてみると、ツェッペリンのブルースはリズムのキレが良すぎてキワモノだと思われたかもしれない。それだけ、ジョン・ポール・ジョーンズとジョン・ボーナムのリズムは独特の世界を持っていた。特にボーナムのドラムは、彼以降のロックドラムの在り方を変えた先駆的なプレイだと言ってもいいだろう。
複数の楽器をこなすメンバー

もうひとつ、ツェッペリンの音楽的な魅力は多彩な楽器の使い方にある。ジミー・ペイジがブリティッシュトラッドに影響を受けていることはよく知られているが、変則チューニングのアコースティックギターの他、ペダルスティールやバンジョーなど、カントリー系の楽器をよく使っていることは、あまり語られてこなかった。これは当時共演もしていたヘッズ・ハンズ&フィート(スーパーギタリスト、アルバート・リー在籍)の影響であるかもしれない。後にペイジはストリングベンダー(バーズのクラレンス・ホワイトとジーン・パースンズが開発した装置)を使うことになるのだが、そのことからも彼が相当のカントリーファンであることが分かる。

また、ジョン・ポール・ジョーンズもベースだけでなく、ハモンドオルガンやシンセなどのほか珍しくフラットマンドリンを効果的に使っている。彼は後にアメリカでブルーグラスやオールドタイムのグループのプロデュースを担当しており、彼がフラットマンドリンを使っているのはペイジ同様、カントリー系の音楽に親近感を持っているからのようだ。

曲によってさまざまな楽器を使い分けるのはブリティッシュロックグループにしては珍しく、ツェッペリンならではの特徴と言えるだろう。
本作『IV』について

ツェッペリンのアルバムは1曲目に印象的なハードロックナンバーを持ってくることが多いが、本作では彼らを代表する名曲のひとつ「ブラック・ドッグ」が冒頭に選ばれている。この曲は印象的なリフをもつハードロックナンバーで、ギターの変則リズムが凝っている。続く「ロックン・ロール」はまさに典型的なロックンロールだが、重いボーナムのドラミングとゲストアーティストのイアン・スチュワート(元ローリング・ストーンズ)によるジェリー・リー・ルイス風の軽やかなピアノが対照的だ。この曲は多くのアーティストにカバーされている。

「限りなき戦い(原題:The Battle Of Evermore)」はブリティッシュトラッド風のナンバーで、ゲストヴォーカリストとしてサンディ・デニー(元フェアポート・コンヴェンション)が参加し、重厚なトラッド作品となっている。この曲が導入部のようなかたちとなり、続いて「天国への階段」が始まる。ツェッペリンの作品中、最もよく知られた曲である。ブリティッシュトラッドにCSN&Y的スパイスをまぶした前半部分が終わると、後半はペイジのギターを中心にドラマチックな展開となる8分にも及ぶ大作である。本作がまだリリースされていない71年の初来日の際、「ブラック・ドッグ」と「天国への階段」が披露され、大きな話題となった。

他に、ジョーンズのキーボードとペイジのツインギターが効果的な「ミスティ・マウンテン・ホップ」、プラントの巧みなボーカルが映える「フォー・スティックス」、CSN&Y風のさわやかなナンバー「カリフォルニア(原題:Going To California)」、そしてラストを飾るブルージーでヘヴィな大作「レヴィー・ブレイクス(原題:When The Levee Breaks)」は、泥臭いプラントのマウスハープとペイジのスライドギターが光る。最後の2曲はアメリカンロックっぽい仕上がりとなっている。

ビートルズ、ローリング・ストーンズに続くブリティッシュロック界の大物グループといえば、レッド・ツェッペリンをおいて他になく、その名声は本作に負うところが大きい。ロックファンであれば聴いておくべき一大傑作である。
TEXT:河崎直人
アルバム『IV』
1971年発表作品

<収録曲>

1. ブラック・ドッグ/Black Dog

2. ロックン・ロール/Rock and Roll

3. 限りなき戦い/The Battle of Evermore

4. 天国への階段/Stairway to Heaven

5. ミスティ・マウンテン・ホップ/Misty Mountain Hop

6. フォア・スティックス/Four Sticks

7. カリフォルニア/Going to California

6. レヴィー・ブレイク/When the Levee Breaks


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