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<ライブレポート>ブリング・ミー・ザ・ホライズン、サマソニ直後の8年ぶり単独公演 11月にはBABYMETALと共演へ

 ブリング・ミー・ザ・ホライズン(BMTH)が8月19日、東京・新木場STUDIO COASTにて単独公演を開催した。

 彼らの来日は2014年の【KNOTFEST JAPAN】ぶりとなるが、単独公演としては2016年に予定されていたアジア・ツアーがキャンセルとなったため、2011年の東京・渋谷CLUB QUATTRO公演以来、実に8年ぶりということになる。かつてデスコア界の若きプリンス的な存在だった彼らが、クラシックやエレクトロニカ、ポスト・ロックなどの要素も取り入れた4thアルバム『センピターナル』をリリースしたのが2013年。このあたりから調和と暴走を自由に行き来するように、サウンドの幅をジャンルレスに広げ始めた彼らだが、そのドラスティックな変遷を単独公演で、なおかつリアルタイムで目撃することが叶わなかった日本のオーディエンスにとって、今回は本当に悲願の来日公演だったのだ。

 ただ、今回のライヴで最もセンセーショナルだった点は、久しぶりに彼らのパフォーマンスを体感できたこと、ではない。10年以上のキャリアを刻んだ先の現在地として、クリエイターとしてもパフォーマーとしても、明らかに最高地点にいることがはっきりと分かるバンドの姿が何よりも感動的だったのだ。

 そんな一夜の始まりは、ゲスト・アクトとして出演したHYDEがまず華を添えた。ご存知の通りL’Arc~en~Cielのヴォーカリストである彼も、近年はVAMPSやソロ名義での活動でラウド・ロックへの志向性を強めている。特に6月にリリースされた最新アルバム『ANTI』では、国外のプロデューサーやエンジニアたちともタッグを組むなどして、グローバルな視点からサウンドのモダナイズを図っている。

 そんなニュー・アルバムからモダン・メタルコアのシンフォニックな重厚感を備えた「FAKE DIVINE」でスタートしたこの日のライヴ。熱心なファンが固まる前方エリアとそれ以外で最初はくっきりと分かれていた興味の2色コントラストも、ショーが進んでいくにつれて混ざり合い、一体感として会場をまとめ上げていく。謙虚な語り口でありながら、オーディエンスの盛り上げ方をしっかりと心得たMCもさすがで、HYDE自身にも心を掴んだ手応えがあったのか、「MAD QUALIA」では客席ダイブも敢行。そのまま「DEVIL SIDE」「ANOTHER MOMENT」「SICK」の3連打でラストは一気に駆け抜けたのだった。

 この日のメイン・アクト、BMTHのショーは最新アルバム『アモ』のオープナー「MANTRA」からスタート。続いて、5thアルバム『ザッツ・ザ・スピリット』から「Avalanche」、4thアルバム『センピターナル』から「The House of Wolves」を畳みかける。前述した通り、彼らはアルバム単位で音楽性を軽やかに変化させてきたわけだが、とりわけ4thアルバム『センピターナル』以降は、当初からの持ち味であるサウンドの攻撃性に、シンセやストリングスのより実験的なプロダクションを掛け合わせていくスタイルが主なファイティング・ポーズだ。つまりこの冒頭の展開は、いわばその方向性の追求を逆行していくような形になっていて、それは結果的に我々オーディエンスにとって、(単独公演が行われなかったという意味での)空白の8年間の大半を占める彼らの歴史を追体験するような流れでもあった。

 そんなオープニングの展開が象徴しているように、本公演では最新アルバム『アモ』が主軸でありながらも、『センピターナル』や『ザッツ・ザ・スピリット』の楽曲もセットに組み込まれ、直近3作品のアルバムのクロスオーヴァ―が大きな見どころだった。クレイドル・オブ・フィルスのダニ・フィルスをフィーチャーしたナンバーで、『アモ』随一のヘヴィ・サウンドを鳴らす「Wonderful Life」から、「Shadow Moses」「Happy Song」と旧曲のパフォーマンスが続いていくにつれ、ギター、シンセ、そしてオーディエンスのシングアロングの応酬が分厚い音壁となって迫る。さらに「Mother Tongue」を挟んで、サマソニでは未披露だった「Can You Feel My Heart?」へ。こういった新旧ナンバーの織り交ぜにほとんど落差が生じていなかった点は少々驚きだったし、各作品で彼らが立ち向かったチャレンジが決して付け焼刃などではなく、しっかりバンドの糧としてその後も生き続けていることを裏付ける、本公演の発見の一つでもあった。

 発見という意味では、ライヴハウス公演だからこその気づきもあった。例えば幕張メッセのステージでいくつもの火柱を吹き上げた「The House of Wolves」や「Antivist」では、巨大でエネルギッシュなサークル・ピットを生み出し、一方で新曲群も含めてほとんど全曲合唱できるオーディエンスのロイヤルティも格別だったのだ。サマソニの巨大空間にフィットしたパフォーマンスやステージ・プロダクションも圧巻だったが、この日は客席から放たれる熱気が室内で乱反射するような感覚もあり、それだけに躁鬱のアップダウンも激しかった。変化する音楽性に向けられる冷ややかな視線は、活動歴が長ければ長いほど、アーティストにとっては宿命じみたものとして付き纏い続ける。時代性や社会性、または自身の身体的・精神的な成熟に沿った進化を遂げながら、高い新陳代謝を保ち、常に新しいファンを獲得し続けるBMTHのようなバンドは、本当に稀有な存在なのだ。

 ライヴ中にオリヴァーが「11月に会おう!」と言い放っていたが、ちょうど先日、BABYMETALが11月にさいたまスーパーアリーナ、大阪城ホールで行うジャパン・ツアーへのゲスト出演が発表された。会場の規模感、集まるであろう客層を考えると、サマソニとも単独公演ともまた異なる雰囲気になることは間違いない。これを機に日本のリスナー層がさらに拡大し、今度はアリーナ規模の会場で単独公演が行われることを願いたいが、それ以上に、日本が世界に誇るド級のメタル・アクト、BABYMETALとのツーマンがどんなシナジーを生むのか、全ラウド・ファン必見の共演と言えるだろう。

◎公演情報
【BRING ME THE HORIZON (SUMMER SONIC EXTRA)】
2019年8月19日(月)東京・新木場STUDIO COAST
<セットリスト>
HYDE:
01. FAKE DIVINE
02. AFTER LIGHT
03. MAD QUALIA
04. DEVIL SIDE
05. ANOTHER MOMENT
06. SICK
ブリング・ミー・ザ・ホライズン:
01. MANTRA
02. Avalanche
03. The House of Wolves
04. Medicine
05. Wonderful Life
06. Shadow Moses
07. Happy Song
08. Mother Tongue
09. Can You Feel My Heart?
10. Sugar Honey Ice & Tea
11. Nihilist Blues
12. Antivist
13. Follow You
-En-
14. Drown
15. Throne

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