<ライブレポート>Awichと唾奇が描く物語の力 SOILやWONKメンバーが彩ったツアーの一夜をレポート

2019年7月9日 / 19:00

 今最も人気のあるラッパー2組、YENTOWNのAwich、Pitch Odd Mansionの唾奇によるツーマン公演が名古屋を皮切りに大阪、東京、沖縄の計4ヶ所で開催された。ここでは、6月29日に行われた恵比寿LIQUIDROOMでのライブをレポートする。

 この2人には多くの共通点がある。今世界を駆け巡るアジアン・アーティストが集うヒップホップ・クルー88risingのドキュメンタリーに登場したフィメールラッパーのAwichは、2017年にリリースしたアルバム『8』でその名を轟かせ、翌年にはダブルEPの発表でその人気が確固たるものであることを証明した。また、時は同じく2017年にビートメーカー/プロデューサーのSweet Williamとタッグを組み傑作『Jasmine』をリリース、その後BASIやDJ RYOW、SD CHARI&DJ TATSUKIらの楽曲に客演し、キラーチューンを生み出してきた唾奇。両者は沖縄出身で同胞、時代を共に駆け抜けるストーリーテラーでもある。

 本ツアー【Awich×唾奇 Supported by Reebok CLASSIC】では、両者の後ろにそれぞれ異なるバンドが迎えられることも話題に。バンドメンバーにはSOIL&”PIMP”SESSIONS、WONK、小林うてな、MELRAWら国内屈指のプレイヤーが揃うスペシャル・セットで届けられた。

 最初に登場したのは唾奇。バックにはhokuto(MPC)が登場し、両者がフィーチャリングしたことでも話題となった「Cheap Sunday」、たたみ込むように「Made my day」を披露。オーディエンスが全ヴァースをシンガロングするほどの熱量で、フロアは一気にヒートアップしていく。BASIの「あなたには」をビート・ジャックすると、続けざまに今年のアンセムの一曲となった「愛のままに」、その後も次々とクラブ・バンガーを炸裂させていく。「all green」で息継ぎの一息をもオーディエンスと共有すると、少し間をおいてバンドが登場。昨年夏に渋谷の某所で行われた伝説のゲリラ・ライブでは、荒田洸がドラムを叩いていたが、その縁もあってかWONKから同氏とベースの井上幹がメンバーに参加。サックスに”第5のWONK”としても知られる安藤康平(MELRAW)も加わり、ジャズをアップデートさせながらヒップホップにアプローチしていくセットが組まれる。バンドが醸成する繊細で伸びのあるサウンドが加わり、「kikuzato」「Walkin」と唾奇の物語の世界観は一層深みを増していく。終盤は「Good Enough」にkiki vivi lily、「ame」にHANG(glitsmotel)が客演、ラストはクラシックとなった「道- TAO-」で生活にある惰性と不条理、出会いと別れにシャウトを送った。

 Awichはスタートからバンドとともに登場。SOIL&”PIMP”SESSIONSのメンバーを中心に、小林うてな、コーラスを担うMeg&Kyokoで構成されたバンドはとにかく大胆なサウンドが印象に残る。A-W-I-C-Hというコーラスが響き、バンドがジャズトーンで重厚なリズムを奏でる。満を辞して登場した歌姫Awichが初っ端から披露したのは「Remember」。彼女の代表曲でもあるこの楽曲が披露されると、オーディエンスの盛り上がりは沸点に達し、いきなり最高潮に。クラブでバウンスするトライバルなトラックは、バンドによってよりスムーズでアーバンな印象に。小林うてなのマリンバはエキセントリックで不思議なポップさで彩りを足していた。早々とフロアに熱を投げた歌姫は、次曲に行く前にその余裕を見せつけていく。ステージに金色のティーカップを持参、お香を焚いて服を一枚脱ぎ始めると、ヒップホップ的手法で完全に注目を惹きつける。続いてドロップしたのはKOJOE「BoSS RuN DeM」でさらにオーディエンスを煽っていく。同曲のフレーズ”Come Again”をループさせて「Come Again」に、さらにバンドはダブへと移行して「Crime」へ。エキセントリックでセクシーなムードを演出した後は、「Move Way」でロックにシャウトする。

 Awichは、SOIL&”PIMP”SESSIONSの最新アルバム『DAPPER』収録曲「Heaven on Earth」でゲストボーカルとして参加している。まだステージに姿を見せていなかったSOIL&”PIMP”SESSIONSのメンバー・タブゾンビ(トランペット)が登場すると同曲を披露。また、続いて演奏されたAwichと娘の大切な思い出、絆が綴られる「Ashes」では引き続きタブゾンビも参加し、メロディーを奏でた。小林うてなが叩くスティールパンからスタートしたのは、ライブで最も盛り上がる曲の1つの「WHORU?」。客演にANARCHYも登場し、この日一番の歓声が上がる。ドラムソロを挟んで続くトラップ・ナンバーの「NEBUTA」にはYENTOWNよりkZmが客演し、キレキレのラップを披露した。メンバー紹介とともにChaki Zuluがプロデュースする「Love Me Up」で本編が終了。

 アンコールで登場して演奏されたのは、2017年に大ヒットを記録した「Cho Wavy De Gomenne」。まさかのJP THE WAVYカバーに度肝を抜かれたところで、ラストの楽曲へ。先行で登場した唾奇が参加し、Chaki Zuluプロデュースによるソウルフルな新コラボ曲「Deigo」を披露。デイゴ (梯梧)の花言葉には、”咲くと嵐が来る”という意味が込められており、台風通過のニュースが流れていたイベント当日と照らし合わせないわけにはいかなかった。楽曲の中で唾奇は<あなたは雲の上 俺はステージの上に>とバースを蹴る。不条理な社会に対して、両者の物語をぶつけ答えを導くこの楽曲の正体はいつ明らかになるのだろうか? 3時間強となったイベントは、未来への展望を示しながら幕を閉じた。

Text by 船津晃一朗
Photo by Ryohei Anbo

【Awich×唾奇 Supported by Reebok CLASSIC】

日時:2019年6月29日(土)<終了>
場所:恵比寿 LIQUIDROOM

<Awich Band Set>
Vocal:Awich
Piano:丈青(SOIL&”PIMP”SESSIONS)
Bass:秋田ゴールドマン(SOIL&”PIMP”SESSIONS)
Drums:みどりん(SOIL&”PIMP”SESSIONS)
Manipulator:社長(SOIL&”PIMP”SESSIONS)
Percussion:小林うてな
Chorus:Meg
Chorus:綿引京子

<唾奇 Band Set>
Vocal:唾奇
Drums:荒田洸(WONK)
Bass:井上幹(WONK)
Sax:安藤康平(MELRAW)
Keyboard:George(MOP of HEAD)
Guitar:小川翔
MPC:Disk Nagataki
MPC:hokuto


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