BiSとして生まれてから死ぬまでの生涯を要した一代絵巻―――解散まで1か月切った福岡公演「9人それぞれが“自分のBiS”を」

2019年4月14日 / 23:15

 2016年から始まった第2期BiSの最終章、事実上最後となる全国ツアー【Are you ready to go? TOUR】を敢行中のBiS。9人で解散ライブまで駆け抜ける彼女たちが4月14日、DRUM Be-1にて福岡公演を開催した。

<9人それぞれが“自分のBiS”を後悔ないよう表現できたら>

 最終的に「この時代のBiSも伝説になった」と言われるようなBiSを残したい―――。5月11日のマイナビBLITZ赤坂でのラストライブまで残り1か月を切り、解散までに爪痕を残さんとする想いも高まっている9人(キカ・フロント・フロンタール、ペリ・ウブ、アヤ・エイトプリンス、ゴ・ジーラ、パン・ルナリーフィ、トリアエズ・ハナ、ムロパナコ、ミュークラブ、YUiNA EMPiRE)。開演前に話を伺ったところ、

 ペリ「楽屋入りしてからいろいろ思い出しました。前来たときも楽しかったし、前の前に来たときは私が胃腸炎になって……もうBiSで来ることがないんだなって寂しい気持ちになったりしましたけど、最後に華々しく終われるように頑張りたいなって思います」

 ゴジ「「良い思い出にしてやろう」って気持ちはさらさらなくて(笑)。福岡の皆さんのトラウマになりたいなと思っていて、心に傷を負わせたいでーす!」

 ハナ「何度かお世話になっているハコですし、BiSの音楽を楽しんでもらえたらいいですね。だから楽しんでもらえるようにがんばります! ……ゴジにあんなこと言われたあとじゃ話しづらいよ(笑)!」

 ミュー「忘れられないように、来てくれた人の心に残すライブにします!(ゴジ「忘れさせない為には傷つけるのがいちばん! 人は傷つけるしかないんだよ(笑)!」」

 ムロ「今日という日は私にとってとても大切な日で、でもライブしたくない気持ちもあって。なぜなら「解散の日が近付いちゃう」といちばん実感するのがライブなんですよ。けど、だからこそ今日のライブをめちゃめちゃ大切にしようと思う!」

 アヤ「私は℃-uteのライブを観て、たった1回でも一生忘れられないライブになったですよ。今でも私の人生の糧になっている。だからBiSも毎回誰かの人生の心の中に生き続けるライブがしたいと思います。命を懸けて頑張る! キラーン! ラブ&ピース! ……ゴホンゴホン(急に咳き込む)」

 キカ「もう10本しかないので、BiSの歌を歌える機会がもう10回しかないんです。毎回がカウントダウン。しかもお客さんにとっては最後のライブになるかもしれないので、1回1回伝説になるように、次のBiSに繋げられるようにライブしたいなと思っています」

 YUiNA「本当に後悔がないようにやりたい。9人とも個性も考え方もバラバラだけど、だからこそ9人それぞれが“自分のBiS”を後悔ないよう表現できたらいいなって思います」

 パン「毎回クライマックスなので、今まで観てきたいろんな体制のBiSの中で「この9人のBiSがいちばん。もっと観ていたい」と思ってもらわないと前に進めないし、自分たちも純粋に「もっとやっていたい」と思えるようなライブにしたいと思います」

<壮絶な物語のすべてが積み重なった先にある第2期最後のBiS>

 そんな9人9様の覚悟と渇望を胸に開幕した福岡公演。超満員の感情あふれる研究員(BiSファンの呼称)の大歓声と熱視線を浴びながら、2016年から始まった第2期BiSのキラーチューンを片っ端から全身全霊でパフォーマンスしていく9人。

 命懸けの合宿オーディションから始まり、BiSの封印が爆音と共に解かれたデビューライブ、それぞれ「正真正銘のBiSであること」を証明する為に臨んだ新BiS初の100kmマラソン、それぞれの美しさも醜さもぶつけ合った車中泊ツアー、葛藤しながらもアイドル史に残るドラマをいくつも生んだアヤ・エイトプリンス×カミヤサキのレンタルトレード期間、BiS創始者が愛しい呪いに別れを告げて後輩たちにすべてを託したプー・ルイ卒業劇、BiSを背負いながらメンバー同士心を通わせる難しさも喜びも知った新体制、パンとペリがBiSを代表して決死の覚悟で参加した合宿、その小さな体で「CHANGE the WORLD担当」を背負った愛しきももらんどとの別れ、幼き新メンバーたちとの出逢いと共に始まるも各々に「BiSとしての正しさ」と「理想のアイドル像」の狭間で悩み苦しみ続けたBiSリーグ、絆の意味をそれぞれに自問自答しながらも不器用な単細胞の「BiSを好きになりたい」という想いを全員で抱きしめたアヤ単独100kmマラソン、ハートブレイクで終わらせない為の痛みとの戦いとなった47都道府県ツアー&時間制限付き100kmリレーの果てに待ち受けていたネル・ネールとの別れ、9人が瞬間気持ちを重ねた2019年&新体制初ライブ、BiSのメンバーと歴史と楽曲への愛情を深めながら「これから私達が作るBiSは、誰も欠けない、誰が欠けてもBiSじゃなくなる、9人で固まって強くて大きなグループにしていきます」とBiSの概念を覆す宣言に至った69時間イベント、戦力外通告を受けたアヤとムロとハナとYUiNAがBiS人生のすべてを懸けて戦い続けた合宿、そして、解散決断と共に手にした9人揃ってのラストツアー。

 その壮絶な物語のすべてが積み重なった先にある第2期最後のBiS。今のBiSをどうにか伝えようとエモーションを爆発させる瞬間がこの日は何度もあった。個性も考え方も生き方もてんでバラバラでありながらも、それゆえに認めてもらうことも褒めてもらうことも難しかったメンバーたちではあるものの、自身の理想をどうしても守りたかった頑固者9人それぞれのBiS像への想いが迸り、それが大きなうねりとなって奇跡的に一体感を生む瞬間がこの日は何回もあった。これまで幾度となく歌い続けてきたフレーズのすべてに彼女たちの人生が乗り、これまで幾度となく彼女たちを愛し、励まし、支え、喜びも悲しみも分け合い、何があろうと応援し続けてくれた人たちへの気持ちが溢れかえってしまう瞬間がこの日は何回もあった。

<BiSとして生まれてから死ぬまでの生涯を要した一代絵巻>

 同ツアーは、5月11日に開催されるマイナビBLITZ赤坂でのラストライブまで続くゆえセットリストの明記は避けるが、2016年から始まった第2期BiSの音楽がここまで人の心を揺らし、鼓舞し、あらゆる感情で埋め尽くし、愛しき楽曲群へと昇華されるとは正直思っていなかった。無論、いずれも元々素晴らしい楽曲であることは分かっていたし、それをパフォーマンスする彼女たちの歌声や姿に涙した経験だってたくさんある。けれども、第2期BiS最後のツアーにおけるソレらは、過去最大に命の蠢きを感じさせる。かつて誰もが物語の登場人物となった旧BiSに対し、新BiSは誰もが俯瞰で見ていると記したこともあったが、ここで撤回させて頂きたい。第2期BiSは今完全に彼女たちの命となり、その楽曲たちは今ここにいない元メンバーも含め、彼女たちの人生となり、その楽曲たちに熱狂する我々の人生にも確実に影響を与える力を持った。

 その原動力は、ペリにとっては思い出かもしれない。ゴジにとっては傷かもしれない。ハナにとっては歌と音楽かもしれない。ミューにとってはファンかもしれない。ムロにとっては二度と戻らない今日かもしれない。アヤにとっては愛と平和かもしれない。キカにとっては未来へのタスキかもしれない。YUiNAにとっては仲間かもしれない。パンにとってはBiSへの純愛かもしれない。いずれにしても9人がそれぞれに大切にしてきたモノ、どうしても譲れなかったモノ、解散が決まった今も諦められないモノ。それらへの想いを体現するようなライブがここにはあり、これが第2期BiSが最終的に辿り着いた答えなのだなと思ったら目頭が熱くなった。終盤に披露されたクイーン「ボヘミアン・ラプソディ」オマージュの11分24秒のシングル曲「Are you ready?」。おそらく9人の個性や価値観をよく加味して制作された第2期BiSの事実上最後の楽曲は、そんな今の彼女たちへのレクイエム、もといラブレターのように感じられたし、同時に9人はこの楽曲を完成させる為に自分を曲げず、この物語を選んだようにも感じられた。自らの人生を懸けて音楽を完成させる。まさにBiSとして生まれてから死ぬまでの生涯を要した一代絵巻である。

 第2期BiS最後のツアー、次回は4月21日 HEAVEN’S ROCKさいたま新都心VJ-3公演。その前日にはタワーレコード八王子店 店内イベントスペースにて観覧フリーのインストアイベントも行われるので、ぜひ第2期最終章のBiSを体感してほしい。

 解散まで残り27日。

取材&テキスト:平賀哲雄


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