『ホワット・イズ・ラブ?』クリーン・バンディット(Album Review)

2018年12月3日 / 18:00

 イギリス、ドイツ、アイルランドなどで1位を獲得し、米ビルボード・ソング・チャートでもTOP10入りを果たした「ラザー・ビー」含む、2014年のデビュー・アルバム『ニュー・アイズ』から約4年半ぶりにリリースされる、クリーン・バンディットの2ndアルバム『ホワット・イズ・ラブ?』。本作には、UKチャートで首位獲得を果たした3曲のヒット・シングルはじめ、豪華ゲスト陣によるタイトルが全16曲(ボーナストラック含むと18曲)収録されている。

 アルバムの目玉といってもいい先行シングル「ロッカバイ」は、UK、オーストラリア、ドイツ、スウェーデンなどの主要国でNo.1をマークし、全米チャートでは「ラザー・ビー」の10位を上回る9位まで上昇、自己最高位を更新した。今なお目覚ましい活躍を遂げるレゲエ界のスター=ショーン・ポールと、今年マシュメロとコラボした「フレンズ」を大ヒットさせたアン・マリーの2人がゲストとして参加した、ダンスホール調のナンバーで、これまでのクリーン・バンディットっぽくもあり、今までの作品にはなかった最先端型のクラブ・ミュージックでもある。制作は、クリーン・バンディットのメンバーを中心に、英サリー州出身の音楽プロデューサー=スティーブ・マックと、マルーン5やエド・シーランなどを手掛けるアマール・マリクが担当している。

 日本では、「富士フイルム・アスタリフト」のCMに起用されヒットした「シンフォニー」も、同UKチャート1位を獲得。MNEKとコラボした「ネヴァー・フォーゲット・ユー」(2015年)のヒットで注目された、若手女性シンガー=ザラ・ラーソンのキュートなボーカルをフィーチャーしたクラシカル・ポップで、前述のスティーブ・マックに加え、ノルウェーの女性シンガーソングライター=イナ・ロードセン、アッシャーやクレイグ・デイヴィッドなどを手掛けるイングランドのソングライター、マーク・ラルフも制作陣にクレジットされている。「ロッカバイ」よりキュートなこちらが好み、という方も(結構)多い。

 昨年10月にリリースした「アイ・ミス・ユー」は、全英首位獲得を逃したものの、そのUKチャートで4位、ベルギーで5位をマークした人気曲。ジャスティン・ビーバーの「ソーリー」(2015年)で頭角を現した、女性シンガー・ソングライターのジュリア・マイケルズがゲスト・ボーカル、そして制作・プロデュースも手掛けている。前2曲と比べると若干地味ではあるが、フォルクローレっぽいニュアンスの独特なダンス・ポップは、ジュリアにしか生み出せない業。世界を歩き回るミュージック・ビデオも、曲の世界観をうまく表現できていてすばらしい。

 そして、3曲目のUKチャート1位を獲得したのが、何かとお騒がせの(?)デミ・ロヴァートをフィーチャーした「ソロ」。スタンダードなEDMに乗せた、少しパワーを抑え気味にしたデミのボーカルが際立つ。視聴4億回を突破したミュージック・ビデオは、暴力的な彼氏を新薬で犬にして飼いならすという、近未来的というか何とも恐ろしい内容。一方、親日家の彼らが“日本版”として公開したジャパン・バージョンは、京都で撮影された美しい日本の和風景が続く内容で、舞妓に扮して踊るガールズ・ダンスユニット“KikiRara”のNANAによるパフォーマンスも見事だった。本作には、この曲のピアノ・バージョンもボーナス・トラックで収録されている 。

 アルバムの発売直前にリリースされたシングル「ベイビー」は、2017年に通算16週の全米1位をマークした「デスパシートfeat.ジャスティン・ビーバー」の大ヒットで名を冠したルイス・フォンシと、女性シンガー・ソングライター=マリーナ・アンド・ザ・ダイアモンズの2人が参加した、ラテン・ダンスポップ。マリーナのセクシーなボーカルと、ラップを交えたルイス・フォンシのパートが、エキゾチックな雰囲気を生み出し、コンガのリズムに合わせて思わず腰が浮く。同曲には、メンバーのジャックに加え、プロデュースを担当した前述のマーク・ラルフ、そしてSEKAI NO OWARIのNakajinの3人がギターを演奏している。

 アルバム冒頭から「アイ・ミス・ユー」を除く4曲の大ヒット・シングルが続く、もはやベスト盤に近い内容になっているが、以下、オリジナル・ソングも充実している。

 イギリスでも高い人気を誇るエリー・ゴールディングをフィーチャーした「ママ」は、ラテンっぽい雰囲気のダンス・トラック。数あるエリーの曲の中でも、こういったタイプは珍しいかもしれない。「ロッカバイ」に続きアン・マリーが参加した「シュドヴ・ノウン・ベター」は、トロピカル・ハウス調のキュートな曲。「ロッカバイ」や「フレンズ」もそうだが、否が応でも曲に惹きつけられるのは、やはりアン・マリーの“声”なんだろう。UKの中堅R&Bシンガー=クレイグ・デイヴィッドと、人気オーディション番組『ザ・ヴォイス』出身のカーステン・ジョイがコラボした「ウィ・ワー・ジャスト・キッズ」も、その路線のダンス・トラック。

 昨年「アイ・スパイfeat.リル・ヨッティ」(全米4位)の大ヒットでブレイクした若手ラッパーのカイルと、アウトキャストのビッグ・ボーイという世代を超えたヒップホップ・アーティストたちによる「アウト・アット・ナイト」は、今年再ブームをむかえたダンスホールっぽい曲。彼らの個性が良い意味で活かされていない……というか、ヒップホップ的アプローチは曲間のラップのみにしたことが、逆に良かった。そのカイルと、先日2ndアルバム『フェニックス』をリリースしたばかりのリタ・オラによる「ノーウェア」は、リタのパワフルなボーカルと、カイルのユルいフロウが相性良く重なった、セピア色のミッド・チューン。この時季というよりは、夏の夕暮れ時に聴きたい曲だ。

 スウェーデンの女性エレクトロ系ポップシンガー、トーヴ・スティルケと、ビジュアル・パフォーマンス共に強烈なインパクトを放つUK産フィーメール・ラッパー=ステフロン・ドンという斬新な組み合わせの「ラスト・グッバイ」も、ステフロンのラップを強調し過ぎない、レゲエをベースにしたまったり系のいい曲。ヤスミン・グリーンがボーカルを務める「24・アワーズ」もまんまレゲエで、ダンス・トラック続きでリスナーを飽きさせない工夫もされている。日本でも人気のチャーリーXCXと、“不良少女”としてメディアに扱われたラッパー/シンガーのバッド・ベイビーという2人の美女が参加した「プレイボーイ・スタイル」も、クリーン・バンディットというよりは、チャーリー寄りのドリーム・ポップで、ゲストの特色もしっかり活かしている。そして、ダヴィド&ラヴ・サガによる「ビューティフル」~ルイーザ・ジョンソンのパワー・ボイスが光る「ティアーズ」と、ラストは再びダンスフロアへ……。

 前作から 4年半という期間を経てリリースされた本作 『ホワット・イズ・ラブ?』は、まさに“ファンの期待を裏切らない”計算されつくした完璧なエレクトロ・ポップ・アルバム。しかも、ボーナストラックには「ラザー・ビーfeat.ジェス・グリン」も収録されるというから、ファンのみならず、多くのリスナーを獲得するだろう。

Text:本家一成


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