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『フェニックス』リタ・オラ(Album Review)

 女優、モデルとしても活躍し、カルヴィン・ハリスやトミー・ヒルフィガーの御曹司との色恋沙汰も報じられる、いわゆる“マルチ・タレント”的なポジションで活躍するリタ・オラ。しかし、彼女の本職はやはり“歌手”なのだと納得させられる、すばらしい新作『フェニックス』が2018年11月23日にリリースされた。

 本作は、UKチャートでNo.1獲得を果たしたデビュー・アルバム『オラ』(2012年)以来、実に6年もの長い期間を経て制作された、2枚目のスタジオ・アルバム。その前作からは、「ハウ・ウィー・ドゥ(パーティー)」、「R.I.P.」、「ホット・ライト・ナウ」の3曲が同チャートで1位に輝き、アルバムのヒットに繋げたワケだが、本作『フェニックス』からも4曲のTOP10ヒットが生まれている。

 2017年5月にリリースされた1stシングル「ユア・ソング」は、同年の年間チャートを制した「シェイプ・オブ・ユー」が大ヒットする中、エド・シーランがペンをとった曲。同イングランドの人気音楽プロデューサー=スティーブ・マック(エド・シーラン、リアム・ペイン、セレーナ・ゴメスなど)がプロデュースを手掛けたキュートなポップ・ソングで、UKチャート7位、アメリカのダンス・クラブ・チャートでは1位を獲得した。

 続いて、2017年10月に発売された「エニウェア」もUKチャート2位にランクインするスマッシュ・ヒットを記録。この曲は、リタの他にもセレーナ・ゴメスやデミ・ロヴァートなどの人気女性シンガーのプロデュースするサー・ノーランと、ビヨンセやリトルミックスなどのアルバムに楽曲提供したアリ・タンポジによる、ヨーロッパ方面でウケが良さそうなエレクトロ・ポップ。フロアでヘヴィ・プレイされ、ダンス・チャートでは1位をマークした。

 そして、今年2月に公開された映画『フィフティ・シェイズ・フリード』からの先行トラックとして発売されたリアム・ペインとのデュエット曲「フォー・ユー」も収録された。前述のアリ・タンポジと、テイラー・スウィフトの『1989』~ 『レピュテーション』で大活躍したアリ・ペイアミ、そして今年カミラ・カベロの「ハバナfeat.ヤング・サグ」を大ヒットに導いたアンドリュー・ワットの3人が手掛けたエレクトロ・ポップで、リアムとの掛け合いも相性抜群。UKチャートでは、最高8位をマークした。

 発売直前の9月にリリースされた最新シングル「レット・ユー・ラヴ・ミー」も、同チャート最高4位を記録。自身が抱える不安な気持ちを、切ないボーカルワークで表現したミッドテンポのナンバーで、この曲ではカミラ・カベロの「ネヴァー・ビー・ザ・セイム」を大ヒットさせた、スウェーデンの女性シンガー・ソングライター=ヌーニー・バオが制作・プロデュースを担当している。

 「レット・ユー・ラヴ・ミー」の4か月前に発売された「ガールズ」は、今年目覚ましい活躍を遂げたカーディ・Bとビービー・レクサ 、そしてチャーリーXCXという同世代の女性アーティストとコラボ曲で、「女の子ともキスしたい」という歌詞が登場する「バイセクシャルのためのアンセム」と評価される一方、一部のLGBT+コミュニティから批判を受け、4人が謝罪する事態に発展した、いわくつきのシングル。よって、ラジオやストリーミングが伸び悩み、大ヒットには至らなかったが(UK22位)、話題性には富み、サウンド・クオリティも高く評価されている。

 また、リタのシングル曲ではないが、昨年夏に故アヴィーチーが残したEP盤『アヴィーチー (01)』からの1stシングルとしてリリースされた「ロンリー・トゥゲザー」(UK4位)も4曲目に収録され、本作からは計5曲のTOP10ヒットが輩出されたことになる。同曲は、アヴィーチーらしい旋律の哀愁系EDMで、おそらく、追悼の意を込めて選曲したのではないかと思われる。アルバムの最後(本編)を飾る「ヘル・オブ・ア・ライフ」も、メロディアスで儚い旋律の、心に染みる壮大なエレクトロ・ポップ。

 アルバムから、次のシングルとしてカットされる予定の「サマー・ラヴ」は、UKチャート1位を獲得した「ジーズ・デイズ」のヒットで知られる、ドラムンベースを基とするダンス・ユニット=ルディメンタルとのコラボレーション。テンションをおさえたヴァースから、一気にテンションをあげるフックに繋ぐダンス・ポップで、リタの楽しそうなボーカルにテンションが高くなる。ワン・ダイレクションのプロデュースで知られる米ニューヨークのソングライター=ジョン・ライアンと、アリ・ペイアミのタッグによる「ファースト・タイム・ハイ」も、テイラー路線の爽やか系ポップ・ソング。

 対照的に、女性シンガー・ソングライター、エミリー・ウォーレンが手掛けた「オンリー・ウォント・ユー」は、リタの歌唱力をフィーチャーした“聴かせる”タイプのメロウ・チューン。ジャスティン・ビーバーのプロデュースや自身のシングル 「イシューズ」(2017年)のヒットで知られるジュリア・マイケルズとのデュエット曲「キープ・トーキング」も、「イシューズ」直結の独特の世界観が、これまでのリタのイメージを覆す。彼女の他には、ジャスティンの「ソーリー」(2015年)でもタッグを組んだジャスティン・トランターと、ノルウェイのプロデューサー・チーム=スターゲイトもクレジットされている。

 デラックス・エディションに収録されたアコースティック・ポップ「ヴェルベット・ロープ」や、トロピカル・ハウス路線の「フォーリン・トゥ・ピーシーズ」も好曲。国内盤には、「エニウェア」のR3HABリミックと、「レット・ユー・ラヴ・ミー」のMOWEリミックスも収録されている。

 本作について、「解放感を感じながら“利益”を気にせず作った」と話すリタ・オラ。シングルも多数収録され、どちらかというと“売れ線”な気もするが、「ヒットは気にしないで制作することができた」という意味なのかもしれない。なお、カルヴィン・ハリスが制作したUKチャートNo.1ソング「アイ・ウィル・ネヴァー・レット・ユー・ダウン」と、同チャート3位を記録した「ポイズン」は収録を見送られた。リタは、本作を引っ提げて2019年の3月にZepp DiverCity TokyoとZepp Nambaで来日公演を開催する。

Text: 本家 一成

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