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映画『レディ・プレイヤー1』はなぜ洋楽ヒット満載に? スピルバーグが音楽面にも仕掛けた“イースター・エッグ”に注目

 スティーブン・スピルバーグ監督による最新映画『レディ・プレイヤー1』が、いよいよ明日4月20日より公開となる。仮想現実ゲーム世界「オアシス」の覇権を掛けて、主人公と仲間たち、そしてライバルたちが謎解きに挑む一大アドベンチャー映画。最新の3D技術を駆使した圧倒的な映像の迫力と、スピルバーグならではのアクション演出、魅力的なキャラクターと物語。そのすべてを備えた、この春、最もヒットの期待される映画の一つだ。

 原作は『ゲームウォーズ』という邦題で2014年に日本でも出版されたアーネスト・クラインによる同名小説(アメリカでの出版は2011年)。ハリウッド映画や日本の特撮映画などキャラクターが、作品の枠を超えて登場するクロスオーバー作品として、出版時点から大きな反響を得ていた。今回、スピルバーグの指揮のもと映画化されるにあたり、クロスオーバーの要素は更にパワーアップ。映画や特撮に加え、アニメやゲームのキャラクターも画面狭しと登場する、“80年代(以降の)ポップ・カルチャーの一大絵巻”といった様相の作品となった。

 映画の中で、特に重要なキーワードとして扱われているのが「イースター・エッグ」。ゲーム用語でいう、本来の物語や機能に直接関係しない(時に隠された)メッセージやアイテムのことで、ゲーム製作者の遊び心やユーモアを象徴する要素として、多くのゲームファンに愛されてきた。この『レディ・プレイヤー1』では、イースター・エッグが物語上の重要な鍵にもなっている。加えて興味深いのは、この映画自体が巨大なイースター・エッグ探しの場となっているということ。前述通り、様々な作品からクロスオーバーしてこの映画に登場するキャラクターやアイテムの数々は、それらをスクリーン上から探して見つけるだけでも、ワクワクするようなエキサイティングな体験となっているのだ。おそらく全ての人が、一度や二度、観ただけでは、全てのキャラクターを発見することはできないだろう。

 本作において、そうした視覚的な要素と同じように、制作陣が強いこだわりを見せているのが音楽だ。『レディ・プレイヤー1』においては音楽もまた、それを探し、見つける楽しみに満ちたイースター・エッグのように扱われている。全体のスコアは映画音楽の巨匠、アラン・シルヴェストリ(『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『フォレスト・ガンプ』など)が担当。そもそもの原作小説が、80年台のハリウッド映画へのオマージュを多分に含んだ作品であったことを思えば、これ以上ない人選だと言える。シルヴェストリのペンによる勇壮でロマンチックなオーケストレーションは、映画の臨場感をこれでもかと盛り上げてくれている。そして、それと同じくらい重要なことが、このスコア自体にも、様々な作品からの引用が聴き取れること。画面に登場したキャラクターと結びつく象徴的なメロディが不意に引用されては、スコアの中に溶け込んでいく。そんな独特の仕掛けが、映画の要所要所に施されているのだ(もちろん、その実現のためには作曲家に相当なスキルが必要であることは言うまでもない)。その音のオマージュを、ぜひ映画館で楽しんでみて欲しい。

 そして、本作の音楽面で、もう一つの大きなポイント=イースター・エッグとなっているのが、80年代のメガ・ヒット曲の数々に占められた挿入歌だ。予告編でも大々的にフィーチャーされているヴァン・ヘイレンの「ジャンプ」をはじめ、プリンス、ホール・アンド・オーツ、ビリー・アイドル、ビー・ジーズ、ブロンディ、アース・ウィンド&ファイア、ティアーズ・フォー・フィアーズ、ジョージ・マイケル、ニュー・オーダー、デュラン・デュラン…などなどの代表的が本作の中では次々と挿入される。選曲はスピルバーグ自身によるもので、原作がオマージュを捧げる80年代ポップ・カルチャーに、音楽でもオマージュを捧げよう、という意図があることは間違いない。

 さらにその選曲は、実際の映画のストーリーともしっかりと噛み合っている。前述のヴァン・ヘイレン「ジャンプ」も、映画を観れば“ジャンプ”という要素自体がストーリーの中核に据えられていることがよく分かる。あるいは他の曲に関しても、その曲が流れる場面と、そこで歌われている内容がしっかりとリンクしている。単に“あの時代”を想起させるだけではなく、演出的な効果もまた着実に計算されているのだ。そういう意味いうと本作は、ある種のミュージカル映画と捉えることもできる。本作と同じくレース・シーンが重要な役割を担い、挿入歌とストーリーが強く結びついた近年の(風変わりな)ミュージカル映画といえば『ベイビー・ドライバー』(2017年)が思い浮かぶが、その監督のエドガー・ライトが、本作のオフィシャル・サイトにコメントを寄せていることは、両作の共通点の大きさを思えば単なる偶然ではないのかも知れない。

 最後は少し脱線となったが、『レディ・プレイヤー1』は、純粋な映像体験として優れているだけではなく、音楽(スコア、挿入歌とも)と映画演出の関係においても、ユニークで力強いアイデアを持った作品だ。21世紀のスピルバーグの代表作と見なされるであろう一本を、ぜひ劇場の大スクリーン&大音響で体験して欲しい。

TEXT:佐藤優太

◎公開情報
『レディ・プレイヤー1』
2018年4月20日(金)全国公開
監督:スティーブン・スピルバーグ
出演:タイ・シェリダン、オリビア・クック、マーク・ライランス、サイモン・ペッグ、T・J・ミラー、ベン・メンデルソーン、森崎ウィンほか
(C)2018WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED

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