ART-SCHOOL 2週連続ワンマン【volume1 ~BLACK~】光が存在しないとき、光がほとんど吸収されてしまうとき

2017年12月20日 / 18:30

 人間は光で色を知覚する。その量で「暗い」または「明るい」、波調で「赤」なのか「青」なのかなどを判断できるわけだが、光が存在しないとき、光がほとんど吸収されてしまうとき、私たちはそれを「黒」と呼ぶ。

 2017年12月15日、ART-SCHOOLが2週連続ワンマンライブの初回【ART-SCHOOL LIVE 2017 『New Day Rising volume1 ~BLACK~』】を東京・新代田FEVER で開催した。彼らのイメージカラーを挙げるとしたら、多くの人が「黒」を選ぶのではないだろうか。それも漆黒――闇の色である。

【ニトロデイ】轟音に衝動を乗せる男女混同バンド「悔いのない演奏をしたい」

 今回のオープニングACTには、2週それぞれ木下理樹(vo,g)が気になっている若手アーティストを起用。【BLACK】には2016年3月に結成、メンバー全員がまだ10代という男女混同4ピースバンドのニトロデイが出演した。結成年は【COUNTDOWN JAPAN 16/17】に出場、今年デビューEP『青年ナイフep』をリリースするなど注目を集めている彼ら、小室ぺい(ギボ)は好きなアーティストとしてニルヴァーナ、ソニック・ユース、ペイヴメントなどを挙げており、木下が気になるのも納得である。

 この日の演奏曲は全6曲。叫ぶように言葉を放つ小室と、ボブカットに眼鏡という優等生的ビジュアルで刃物のようなフレーズを紡ぐやぎひろみ(ジャズマスター)、ソバージュのロングヘアを揺らしながら野太い低音を響かせる松島早紀(ベイス)、パワフルな打音で全体の音圧を押し上げる岩方ロクロー(ドラムス)。衝動を90年代グランジ・オルタナティヴサウンドに乗せるニトロデイは、「最後までこのライブに貢献できるよう、悔いのない演奏をしたいと思います」という小室の言葉を見事に実現してみせた。

【ART-SCHOOL】まばゆいステージにもたらされる凄惨なまでの翳り

 全楽曲数が200曲近く、それも「BLACK」に相応しいものが数多くあるART-SCHOOL。そのためセットリストには悩んだらしいが、戸高賢史(g)曰く「言葉が危険」「18禁みたいな感じ」で組んだとあり、危なげな雰囲気漂う真っ赤なライティングの下、Aメロとサビでそれぞれ繰り返されるフレーズが特徴の「EVIL」を皮切りに、心の焼け付くような際どいナンバーが披露されていく。ライブの冒頭だけを見ても、「EVIL」<売春婦 俺の本能 これは何て 美しい気持ちだ>、「foolish」<此処へ来て、僕に麻酔を打ってくれ>、「NEGATIVE」<街路樹の猿 汚物にまみれて>、「夜の子供たち」<アンドロイドの精子>、「JUNKY’S LAST KISS」<ジャンキー、アラスカの海、この青い夜の終わりに>……壮絶な始まりである。

 最初のMCでは、戸高がニトロデイのドラマーを除く3人が現役高校生ということに触れ、当時ピザ屋の宅配アルバイトをしていた木下がピザを捨てて帰ったという、ファンの間では有名な逸話を披露。そして木下は先日の騒動について口火を切る。Twitterアイコンが外国人の美女に変わり、ハッシュタグ「#アイコンセクシー乗っ取ったやつやめて」も誕生、トレンド入りを果たしたこの騒動、本人は「(2014年末に発表、2015年2月から約一年間の)活動休止よりも話題になってたよ」と苦笑したが、戸高はのちに「アカウントを乗っ取られるやつはロックですよ。大山純(ストレイテナー/ex.ART-SCHOOL)からも『さすがに笑った。耐え切れなかった』って夜中に連絡来ましたから」とも明かしてみせた。

 また、「セクシーがクリスマス・イヴに裸足のまま逃げ出す曲やります」「木下のLoveとHateをセクシーに捧げますか」などと、戸高がセクシーアイコンネタをユーモラスに用いる場面もあったが、演奏になるとただならぬ緊張感を漂わすのがART-SCHOOL。上記の流れからはギターフレーズの印象的な冬の名曲「アパシーズ・ラスト・ナイト」、静かな悲哀と衝撃が融合した「Love / Hate」を続け、そのほか爽やかなサウンドと陰鬱な歌詞の対照的な「汚されたい」など、まばゆいステージに凄惨なまでの翳りをもたらしていく。悲痛に溢れているものの、その美しさを認めずにはいられない楽曲群である。

【ART-SCHOOL】全身を包み込んでくれるような深みのある轟音

 まぶたを閉じて聴き入る人もいただろう数曲のあとは、「今日はロックでお願いしまーす」という木下の掛け声により勢いも加速。中尾憲太郎(b)が体全体で刻むベースフレーズと、藤田勇(dr)が全体重を乗せ踏むバスドラが大迫力の「BABY ACID BABY」から、木下もモニタースピーカーの上に立ちオーディエンスを煽った定番曲「ロリータ キルズ ミー」、この日は外せない2つのナンバー「BLACK SUNSHINE」「FADE TO BLACK」などでバンドの底力を見せつけた。耳に痛い、やみくもな轟音ではなく、音の粒子で全身を包み込んでくれるような深みのある轟音。激しくも優しいART-SCHOOLの魅力が詰まった一時だ。

 今年1月にB SIDES BEST『Cemetery Gates』をリリースし、それに伴うツアーを敢行(ライブレポート:http://bit.ly/2zOb36N)、そして7月には配信シングル『スカートの色は青』を発表。10月にはワンマンライブを開催し、11月にBURGER NUDSの自主企画【Pure vol.1】(ライブレポート:http://bit.ly/2z11yma)、12月にASIAN KUNG-FU GENERATIONと英ロックバンドのフィーダーの対バンツアーに出演するなど、2017年は精力的に活動した一年であった。

 そんなART-SCHOOLだが、アンコール前には2018年3月7日にニューアルバム『In Colors』をリリースすること、それに伴うツアーを開催することを発表。歌入れが終わったばかりだといい、戸高は「大変だったじゃん。ほんとにこの歌詞を歌うの?っていう。でもやっぱり、いいメロディを書く人だなあと思いましたよ」と称賛。すると木下は照れ笑いを浮かべつつ、「ほんとにね、死ぬんじゃないかっていう感じで……気合が違うんです」と、新作への自信を覗かせた。

 続けて「あと一曲だけやって、FEVERをあとにします。ニトロデイ、本当にありがとう。また会いましょう。また会えるはずだから……来週、会えるはずだから」と呟いた木下。笑顔も多く溢れた漆黒の一夜は、薄情と激情の共存する「刺青」で締めくくられたが、闇があるから光が射すように、これは【WHITE】へと続く【BLACK】である。

TEXT:佐藤悠香
PHOTO:井野友樹

◎セットリスト
【ART-SCHOOL LIVE 2017 『New Day Rising volume1 ~BLACK~』】
2017年12月15日(金)東京・新代田FEVER

▼ニトロデイ(オープニングACT)
01. アイスエイジ
02. カラス
03. 最低
04. 炭酸状態
05. レモンド
06. ユース

▼ART-SCHOOL
01. EVIL
02. foolish
03. NEGATIVE
04. 夜の子供たち
05. JUNKY’S LAST KISS
06. アパシーズ・ラスト・ナイト
07. TARANTULA
08. サッドマシーン
09. LILY
10. Love / Hate
11. 汚されたい
12. BABY ACID BABY
13. BLACK SUNSHINE
14. ロリータ キルズ ミー
15. Outsider
16. UNDER MY SKIN
17. FADE TO BLACK
EN. 刺青

◎ライブ情報
【ART-SCHOOL LIVE 2017 『New Day Rising volume2 ~WHITE~』】
2017年12月22日(金)東京・新代田FEVER
出演:ART-SCHOOL
オープニングACT:MONO NO AWARE
※SOLD OUT

◎ツアー情報
【ART-SCHOOL TOUR 2018 「In Colors」】
3月02日(金)千葉LOOK
3月18日(日)京都磔磔
3月20日(火)広島Cave-Be
3月25日(日)HEAVEN’S ROCKさいたま新都心
4月01日(日)DUCE SAPPORO
4月08日(日)名古屋APOLLO BASE
4月11日(水)福岡the voodoo lounge
4月13日(金)梅田Shangri-La
4月18日(水)仙台LIVE HOUSE enn 2nd
4月20日(金)金沢vanvan V4
4月21日(土)松本ALECX
4月30日(月・祝)恵比寿LIQUIDROOM

<チケット>
料金:3,800円(tax in.) ※ドリンク代別途必要
▼一般発売:2018年1月27日(土)
▼ART-SCHOOL モバイル会員先行 ※オリジナルデザインチケット
受付期間:12月15日(金)22:00~12月31日(日)23:00
枚数制限:1公演につき4枚まで
URL:http://bit.ly/2c0nSSC
▼ART-SCHOOL オフィシャルHP先行
受付期間:12月15日(金)22:00~1月8日(月)23:00
枚数制限:1公演につき4枚まで
URL:http://bit.ly/2bkmrQ3

◎映像
ART-SCHOOL – B SIDES BEST『Cemetery Gates』Trailer:https://youtu.be/cdvu4UmrUxQ
ニトロデイ「青年ナイフ」Music Video:http://youtu.be/9Nzvl9XSt5U


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