独自のスタイルを貫くエミネムのキャリア集大成ともいえる力作『リバイバル』(Album Review)

2017年12月18日 / 18:00

 「ザ・リアル・スリム・シェイディ」で大ブレイクした2000年から早17年。何かと世間を騒がせてきたエミネムも、今年の10月で45歳になった。相変わらずなところもあり、丸くなった……とまでは言えないが、感情むき出しで攻撃的にラップしていたあの頃とは、キャラもリリックも大分落ち付いたように思える。また、パートナーのドクター・ドレーをはじめ、DJカリルやフレッドレック、マーク・バトソンなど、過去の作品でもおなじみの面々がプロデューサーとして参加しているが、彼らもエミネムと同じように歳はとるワケで、若者にウケる曲を作り続けることは難しくなってきたのではないだろうか。

 しかし、若手を起用したりはせず、無理に流行りに乗っかる必要はない…と言わんばかりに、独自のスタイルを貫くエミネム。EPMDの「イッツ・マイ・シング」をサンプリングした「クロラセプティックfeat.フレッシャー」や、怪しげなバックサウンドを従えて叫んでみたり、つぶやくようにラップする「フレイムド」、エミネムの代表曲「スタンfeat.ダイド」の続編的な、スカイラー・グレイがボーカルを務めるメロウ・チューン「トラジック・エンディングス」など、初期の作品を彷彿させるナンバーも健在。とはいえ、時代遅れだとは感じさせないところが凄い。なぜなら、エミネムの曲は何年経っても同じ、“エミネム”というジャンルだから……。

 ビヨンセが祈りを捧げるように熱唱する先行シングル「ウォーク・オン・ウォーター」では、「何もないところからマイク1つで戦い、全てを生み出してきた」と、もはや悟りを開いたような(?)ことを歌っている。この曲をはじめ、4年振りの新作『リバイバル』では、自分自身についてやアメリカの現状・社会情勢、家族についてなど、割と真面目なことを訴えている。歌詞のみならず、ヒップホップというカテゴリーでは分類できない、様々なジャンルが入り混じったサウンドも、クリエイティヴィティに満ちている。

 ジョーン・ジェット&ザ・ブラックハーツの名曲「アイ・ラブ・ロックン・ロール」を上手く起用した「リマインド・ミー」や、チーチ&チョンの「エアラチェ・マイ・アイ」を使用したミクスチャーっぽい「アンタッチャブル」、ランD.M.C.の「キング・オブ・ロック」をサンプリングした「ヒート」などのロック色の強いナンバーから、ファンク界のレジェンド、チャールズ・ブラッドリーの「イン・ユー」をサンプリングしたファンキーな「オフェンデッド」、ベット・ミドラーの代表曲「ローズ」がバックで流れるラストに相応しいメロウ「アロウズ」など、ネタ使いも見事。

 また、オルタナティヴ・ロックバンド=X・アンバサダーズとコラボした「バッド・ハズバンド」や、個性派R&Bシンガー=ケラーニのファルセットとストリングスが印象的な「ノーホエア・ファスト」、10月にリリースした新作『ビューティフル・トラウマ』に続き、4度目の共演を果たしたピンク(P!NK)との「ニード・ミー」など、ゲストが参加した楽曲の完成度も高い。ジェイ・Zとのコラボ「エンパイア・ステイト・オブ・マインド」を大ヒットさせたアリシア・キーズは、同曲を意識したような壮大なサビを「ライク・ホーム」で歌い、「エミネムと何をやりたいかはっきりした考えがあった」とインタビューに答えていたエド・シーランは、5曲目の「リヴァー」でコラボを実現させている。「リヴァー」は、アルバムの中でも特に耳に残る傑作で、シングル・カットすればヒットも期待できそうだ。

 2002年リリースの3rdアルバム『ザ・エミネム・ショー』に収録された「ヘイリーズ・ソング」の主役である娘のヘイリー・ジェイドも、今年で21歳になった。彼女の年齢からも、年月の経つ早さをあらためて実感させられるが、エミネムのサウンドは20年近く経っても良い意味で変わらず、色褪せない。おそらく、10年後も。本作『リバイバル』は、そのキャリアの集大成ともいえるアルバム。ファンのみならず、「あの頃、エミネムを聴いていたなぁ」なんて方にも、是非聴いていただきたい。

Text: 本家 一成

◎リリース情報
『リバイバル』
エミネム
2017/12/15 RELEASE
2,700円(plus tax)


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