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【Nulbarich インタビュー】2017年を駆け抜けたNulbarichが新作で見出したさらなる飛躍の布石

Nulbarich (okmusic UP's)

昨年、突如シーンに現れ、ブラックミュージックをベースにした自由なサウンドと活動が大歓迎されたNulbarichが、2017年の締め括りに2nd EP『Long Long Time Ago』をリリース。新たな挑戦がさらなる飛躍を期待させる4曲について、中心メンバーのJQが語る。
びっくりさせるのも、ふざけるのも、 音の中でしかできないんですよね

──17年はNulbarichにとって飛躍の1年になりましたね。
「本当にいろいろな経験をさせてもらいました。2月に初めてワンマンライヴをやらせてもらったんですけど、その後は11月からてワンマンツアーを行なうことを視野に入れた上で、多くの夏フェスにも出演させてもらいました。11月のワンマンツアーは年の初めには到達できるとは思っていなかった規模だったので、ツアーファイナルの恵比寿LIQUIDROOMでは“ここじゃ狭いよね”って思わせるライヴをしなきゃいけないっていうのがひとつの目標としてあったんですよ。」
──その中で、自分たちの音楽やライヴに対する取り組み方はアップデートを重ねていったんですか?
「そうですね。ひと括りにフェスと言っても、それぞれに別の色があるわけだから、“自分たちはこれだから”というよりは、いかにそこに自分たちの音楽を浸透させていくかというか、伝わっているか確かめながらという感じでしたけど、フェスを通してアップデートという意味で、自分たちの音楽も変わるとは思っていました。夏フェスに入る前に1st EP『Who We Are』をリリースしたんですけど、2月のワンマンライヴのリハーサルをやっている頃に作ったので、希望に満ちあふれているのと同時に“これからフェスいっぱい出るぞ!”という意気込みにあふれた作品になったかなと。その答え合わせしていく感じというか、フェスに持って行くためにリリースしたEPを引っ提げて、フェスを回りながら、“俺らが観せる”“お客さんが観る”ではなくて、一緒に楽しませてもらった感覚がありました。あと、僕らの“よろしくお願いします”という初対面の感じがすごく新鮮でしたね(笑)。僕たちよりもそのフェスにいるお客さんのほうがベテランですから。だから、混ぜてもらった感じのほうが大きかったです。そこの世界に入れてもらった。“こんな世界があるんだ!? じゃあ、もっと頑張りたい!”と思わせてもらえた日々でした。」
──もちろん、そこでは自分たちの音楽が伝わっているという実感や、もっと多くの人に届けられるんじゃないかという手応えもあったわけですよね?
「自分たちの可能性というよりは、観てくれる人の愛を感じました。“俺らってイケるじゃん”って感覚は全然ないというか、“思っていた以上に期待してくれてるじゃん。じゃあ、ちゃんと返していかなきゃね”って。僕たちがやらなきゃいけないことだと思うのは、それですね。今年はそれをすごく感じて、もっと期待してもらえるように頑張らなきゃって。恵比寿LIQUIDROOMの次が新木場STUDIO COASTの2デイズで、その時にさらなる次のステージが…それはキャパだけじゃなくて、アーティストとしての可能性も含め、見えるライヴをしないと。ただ、僕たちってやれることが少ない。ほんとに、ただのバンドなんですよ(笑)。びっくりさせるのも、ふざけるのも、何かするのも全部、音の中でしかできないんですよね。僕らの表現する場所ってライヴと音源しかない。もちろん、好きでそうしているんで、逆に楽ですけどね。そこに集中して、フルスイングするだけなんで。だから、常にライヴの準備と音作りにはすごい時間をかけています。言っちゃえば、それだけのバンドなんです。」
──今回のEPもとても聴き応えがありました。印象としては2017年を締め括るというよりは、来年以降につなげるとか、今後の飛躍の布石になる一枚ではないかと感じました。
「今回はさらなる挑戦に向かっていると思うんですよ。」
──どんな作品にしようと考えたのですか?
「基本的に作品って感情の詰め込まれた宝箱だと持っているので、いつも設計図を書かずに作り始めて、できた曲を最後に並びかえるだけなんですよ。曲を作る時もバランスを考えずに、その時にいいと思っているものを曲にすることが多い。今年感じたものが全てここに入っているという意味では締め括りなんですけど、その時に感じた“もっとこうしたい”という感情が次につながるアレンジになっていることを考えると…どうなんだろうな? 締め括らないですよね(笑)。常にTo be continuedじゃないですけど。」
──それは感じました。新曲3曲と代表曲である「NEW ERA」のリミックスが加えられていますが、何曲か作った中から今回の3曲を選んだのですか?
「感情的なものが一番フレッシュなものを選びました。アレンジも含め、出来上がってきた曲たちの中のカッコ良いベスト3みたいなイメージです。世の中にたくさん曲はありますけど、僕らの作品は自分たちがその時に一番カッコ良いと思っている曲をリリースしたほうがいいと思っているんです。もちろん、それはバランスも含めてだとは思うんですけど、今回はEPなんで、そこまでバランスは考えなくてもいいかなと思いました。」
曲を作る時の合格ラインは 自分がアガるか、アガらないか

──さっきおっしゃった、さらなる挑戦はどんなところに表れていますか?
「アルバムも含め、これまでリリースしてきた3枚は、温かいイメージのやさしさが入っている曲が多かったんですけど、今回はまた別の感情が見える作品になっていると思います。「In Your Pocket」もビートが効いていたり、強めのリフが入っていたりして。もともとリフものが好きなので、サウンド面でもどこか耳に残るものは必ず入れたいと基本的に思っているんですけど、今回はなんて言うのかな、今まで出していなかった感情がサウンドにも、歌詞にも、歌のテイストにも入っているのかな? “これまでと違う”と言う人がもしかしたらいるかもしれないぐらい。ただ、そもそも僕たちってジャンルを決めて、こういうコンセプトでっていうバンドではないんですよ。メンバーそれぞれに経験してきたものをそれぞれに持ち寄って、ケミストリーを起こして、何ができるか楽しむバンドなんですよ。だから、今回は喜怒哀楽の喜、次は怒っていうことでもないし、みんなで感情を掻き鳴らしながら、今回の作品が出来上がった時に“こんなのなかったね”って。感情も含め、いろいろなものを、全員が一個のミキサーに入れるんですけど、出来上がりは誰も想像できていないんで、新たな自分たちのかたちを知ることができたっていう驚きはありましたね。」
──もっと確信的に作っているんだと思っていました。
「唯一の共通点がブラックミュージックで、それ以外は好きなアーティストもそれぞれに違うし、普段聴く音楽も全然違うし。だから、ケミストリー待ちみたいなこともかなりあるんです。曲の作り方も僕が曲のラフを作ることもあるし、セッションしたものを持ち帰って、僕が曲にすることもあるし。今、メンバーとはすごい一緒にいるんで、“あいつ、ライヴでこんなフレーズ弾いてたな”とか、“今、あいつこんなブームなんだ”とか、そこでいろいろな種が生まれるんですよ。それをしっかり摘んでいって、曲の器をまず作って、みんなの意見を聞きながらっていうやり方が多いですね。ライヴでもその時のテンションでアレンジが変わることがあるし。だから、作品だけを聴いている人は変わったと思うかもしれないけど、今回のEPの節はすでにライヴに出ていたと思うんですよ。今回の曲が出来上がった時は、“あっ、こんなことやるんだ!?”って言われたんですけど、経験したことから作っているものがほとんどだから、僕ら的にはすごくナチュラルで、超リアルタイムな感情が入っていると思います。」
──その感情を言葉で表すとしたら?
「今、僕らって、今まで分からなかったことに気付いていっている段階だと思うんですよ。その分、可能性があるってことなんですけど、もちろん不安もありますよ。ただ、バンドを組んだ時、心の中で無敵だと思っていた僕らがその後、現実を知ったり、予想外のことが起きたりする中で、感情が豊かになったところが出ているんじゃないかな。この1年で新たに発見した感情が詰め込まれている。だから、聴き返すと、その時に経験したことを歌詞にしているから、自分の勝手な思い出ソングにもなっているんですよね。」
──「In Your Pocket」のイントロのリフは無敵ですね。
「最初、作った時はそう思ってました(笑)。今は、ありがとうございますと思っています。作った時は“無敵だな。勝った!”と思いましたけど、今はその驕りもちょうどいいサイズになっています(笑)。でも、できた時は踊り狂いました。アガるなって。」
──曲を作る時、アガることは欠かせない要素ですか?
「そこが大前提というか…しっかりしたコンセプトのあるバンドだと思われがちだと思うんですけど、曲を作る時の合格ラインは自分がアガるか、アガらないか。アガる曲じゃないとリリースしないです。「In Your Pocket」のサビメロとリフは、自分の中の合格ラインを超えた気がしました。」
──その「In Your Pocket」は、Nulbarichらしいアンセミックな曲だと思うのですが、ヒップホップソウルっぽい「Spellbound」とブギの要素もある「Onliest」は挑戦的というか、かなり攻めてきたという印象でしたが。
「「Spellbound」は、それこそ今までにない感情が入っている曲だと思うんですけど、ライヴで結構エモくなる時の感情を落とし込んだんです。もともと持っていたものがナチュラルに出てきたんですけど、今までのやり方に落とし込んでいたらできていなかった曲なんじゃないかな? 新しいことに挑戦するのってワクワクするじゃないですか。しかも、それが上手くいった時はなおさら嬉しいし、ライヴでやるのも楽しみになるし。自分たちがその時にフレッシュに感じているものを取り入れるというワクワクが、今回の3曲がこういう曲になった一番の理由だと思うから、ほんと、その時の刹那をぶち込んだEPだと思います。「Onliest」はかなりシンプルな曲なんですけど、理想に近い音色の数…迷うと音色の数って増えると思うんですけど、この曲はいい感じで隙間もあって、理想の落としどころになりました。」
──「NEW ERA」のジャジーなリミックスバージョンを収録したのは、どんなアイディアから?
「単純にこのアレンジをやりたかったんです。ローズピアノとウッドベースとミニマムなドラムという編成が本当に好きで、その3つでやってみたいというのが夢のひとつだったんですよ。それを「NEW ERA」でやってみたらハマったんです。歌も録り直したので、リミックスではなくて、もはや別曲なんじゃ?っていうのはあるんですけど(笑)、この柔軟性はこのバンドならでは。僕ら、ライヴの場所や環境によってメンバーを入れ替えたりするんですけど、メンバーが変わると、当然、音も変わる。この1年、そういうケミストリーのトライもやってきたわけですけど、今回の「NEW ERA」の化け方や柔軟性は、今後の布石になるという気はしています。今、ライヴに挑む姿勢もアレンジも含め、超自由なんですよ。」
──より一層、今後が楽しみになりますね。
「もし変な方向に進んだら言ってください。でも、その時は“進化です!”って言い張るかもしれないです(笑)。変わっていくことが楽しみというか、収まることをしないほうがカッコ良いと僕は思っているんですけど、それには常にアップデート、アップデートして、自分たちの音楽を塗り替えていくのがアーティストとしての僕の生き方だと思っています。」
取材:山口智男
EP『Long Long Time Ago』
2017年12月6日発売

RAINBOW ENTERTAINMENT

NCS-10174

¥1,200(税抜)
ライヴ情報
『Nulbarich 1st ONE MAN TOUR “Change The Track”』

12/13(水) 東京・LIQUIDROOM

『Nulbarich ONE MAN TOUR 2018 “ain’t on the map yet” Supported by Corona Extra』

3/14(水) 大阪・なんばHatch 

3/16(金) 東京・新木場STUDIO COAST

3/17(土) 東京・新木場STUDIO COAST

4/06(金) 広島・CLUB QUATTRO

4/07(土) 福岡・イムズホール

4/13(金) 愛知・名古屋 ダイヤモンドホール
Nulbarich
ナルバリッチ:メンバーであるシンガーソングライターJQがプロデュースするバンド。メンバーは固定されておらず、親交の深い仲間とともにスタイルやシチュエーションなどに応じたベストなサウンドを作り出す。ファンクやアシッドジャズなどのブラックミュージックをベースに、ポップス、ロックなどにもインスパイアされたサウンドは、国内外のフィールドで唯一無二のグルーブを奏でる。
「In Your Pocket」MV

https://www.youtube.com/watch?v=KA79T74sTsY

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