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【SION】 歌を作ることしかできないと認める SIONが新作に込めた気迫と覚悟

(okmusic UP's)

時に自分のケツを蹴り上げ、時に傍にいる大事な人に語りかける。そんな真心からの歌の数々が多くのリスナーを虜にしているシンガーソングライター、SIONがアナログ盤も同時リリースされる新作『今さらヒーローになれやしないが』について語る!
──2年振りとなるオリジナルアルバム『今さらヒーローになれやしないが』を完成させた現在の心境は?
「春にTHE MOGAMI(池畑潤二:Dr/井上富雄:Ba/細海魚:Key/藤井一彦:Gu)とThe Cat Scratch Combo(藤井一彦:Gu/清水義将:Ba/相澤大樹:Dr)とレコーディングしたんだけど、今回もドカッと、そして繊細にね。一彦と魚が5曲ずつアレンジしてくれたんだけど、毎回“こうきたかぁ”なアレンジがあるから、アレンジデモを聴くのが楽しみです(笑)。そして、レコーディングはMOGAMIとCSCだから間違いないですよ(笑)。レコーディングはいつも同録なんだけど、歌っててね、みんなの音やうねりの中で鳥肌が立つことが今回もあったから。いやぁ、気持ち良かった(笑)。」
──前作『俺の空は此処にある』をSIONさんはふわっとした作品と表現していましたが、今回はどんな作品になったと感じていますか?
「そんなこと言いました? その取材の時、俺がふわっとしてたんだろうなぁ(笑)。今回レコーディングした曲のほとんどは去年出した『Hello〜大切な記憶〜Naked Tracks9』(Naked Tracks:毎年SIONがひとりで作っているアルバム)からなんだけど、自分で“こういう歌ですよ”と最初のかたちを出してる曲が、アレンジや演奏でその向こうへ連れてってくれるから聴き比べたら面白いと思うよ。今回もひとりの男がすったもんだしてる曲が10曲だけど、この曲たちが聴いてくれる人が真ん中の、自分の景色になってくれたら嬉しいなぁと、はい。…多くの人に聴いてほしいんだけどあれなんだなぁ、たまにテレビに出ると、“大きなヒットはないものの、知る人ぞ知る”って紹介をされるんだよなぁ(笑)。売れてないからしょうがないんだけど、最近分かったんだよ。スタートからそうだったと(笑)。今は中学生も高校生も普通に洋楽を聴いてるだろうけど、昔俺がいた田舎ではそういう子はクラスにひとりぐらいしかいなかった。歌謡曲やアイドルの曲には興味なくて、誰も知らない向こうの曲を聴いてる、ちょっとおませなカッコ良い子が。そういう人に聴いてもらえるような歌唄いになりたいと思ったんだよね(笑)。もしかしたら、そういう歌唄いにはなれたかもしれないなって(笑)。でも、考えたら、そういう人って人数が少ないんだよ。30人か40人の中にひとりしかいないんだから。そこだったんだよ(大笑)。そうか、みんなに愛されることをやっておけば良かった〜。だけど、クラスにひとりいたちょっとおませなカッコ良い人には人気があるアルバムだぜ(笑)。」
──(笑)。でも、1曲目の「春よ」の力強い歌声に、いきなりガツンとやられましたよ。気迫というか、凄みというか、覚悟のようなものも感じたのですが。
「みんなそうだろうけど、毎回命懸けだからね。加藤和彦さんが生前、朝起きたらギターの弦を張り替えると言っていて、毎日張り替えるってすごいと思ってたけど、ある日、張り替える気がしなくなって、その瞬間に自分は終わったんだと分かったって。その気持ちがすごく理解できて…結構、命懸けなんだよ(笑)。俺なんか線が細いでしょ?(大笑) フッとされたら消えちゃいそうだから余計にね(笑)。」
──今回、老いや体の衰えを真正面から受け止めた上で、それでも歌い続けるという曲が多くないですか?
「まだ笑い話にして歌えるから問題ないんだけど(笑)、まぁしょうがないよね、それは。20代の頃はキース・リチャーズの白髪とか皺とかカッコ良くて、俺も皺が増えんかなってぐらい憧れてたのに、実際に増え始めると嫌だなって(笑)。“金があったらちょっとここを〜”って(笑)。そうなるんだよ。40代は楽しい。50代も楽しい。いや、やっぱり60代が楽しい。って言う人いるよね。でも、絶対そんなはずはない(笑)。だって、60代を楽しむしかないんだもの。言うんだよ。“60代になったら、いろいろなものが違って感じられて、今が心も一番穏やかだ”って。嘘つけって。帰れるものなら帰りたいだろって(笑)。」
──その一方では、うぶな恋心を歌った「大好きで」みたいな曲を56歳になった今でも歌えるところがいいですね。
「たまにそういう何と言うか、すごい好きなタイプの人に会うことがあるんだよね。もう子供に戻ってしまうというか。だからってどうこうするわけじゃない意気地なしなんだけど(笑)。何て言うかなぁ、小学校や中学校の頃、教室とかベランダとか、誰もいないところで好きな子とふたりきりになった時とか、手がちょっと触れただけで心臓がバクバクなるくらいドキッとする瞬間。あそこまではさすがにもうないけど、でも時々、そんな気持ちになることがあるとですよ(笑)。」
──《お前が傍にいたいと思う奴でいたいのさ》と歌う「今さらヒーローになれやしないが」は、逆に長年のパートナーに語りかけるようなラブソングですが、それをアルバムタイトルにしたのはなぜだったのですか?
「ディレクターが“この曲、弾き語りしたいほど好き。アルバムタイトルにしたい!”とおっしゃるから(笑)。」
──その曲を聴きながらずっと考えているんですよ。どうしたら“傍にいたい”と思われるようになるのかなって(笑)。
「それは我慢と忍耐でしょ(笑)。なんでそうなんだろう?って自分が思った時は、向こうもたぶん思っているんだよ。付き合いが長ければ長いほどね。そういうことを歌った「長い間」って曲も書いたけど、やっぱり自分とは違う生き物だからね。でも、分かろうとするうちはお互い寄り添えるんじゃないかと。最後にその曲のオチを言うと、“今さらヒーローになれやしないが”なんて歌っている奴は、まだ諦めていない(笑)。なってやる!って、どこかで思ってるんだよね。」
取材:山口智男
アルバム『今さらヒーローになれやしないが』
2017年9月20日発売

テイチクエンタテインメント

【CD】

TECI-1540 ¥2,778(税抜)

【LP(アナログ盤)】

TEJI-37013 ¥3,500(税抜)
『SIONアコースティックツアー2017

〜SION+Sakana Hosomi & Kazuhiko Fujii〜』
12/01(金) 愛知・名古屋 JAMMIN’

12/10(日) 大阪・umeda TRAD

12/20(水) 福岡・博多 Fukuoka INSA

12/23(土) 東京・代官山 UNIT
SION
シオン:1985年に自主制作アルバム『新宿の片隅で』でデビューし、86年にアルバム『SION』でメジャーデビュー。その独特な声、ビジュアル、楽曲は日本のミュージックシーンにおいて唯一無二の存在で、多くのアーティストから敬愛されるミュージシャンズ・ミュージシャンであり、ワン・アンド・オンリーな存在感で輝き続けている。リスペクトしているミュージシャン、俳優、タレントには枚挙にいとまがない。また、長年培った充実したライヴには定評があり、近年は20~30代を中心とした客層を持つバンドとも積極的に対バン公演を行なっている。そして、毎年恒例の日比谷野外大音楽堂でのワンマンライヴは夏の風物詩として定着している。

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