吉川友、ファンに“看取られ”バースデーライブ「言葉のミスは25歳になっても変わりません。」

2017年5月9日 / 20:10

 吉川友が自身の誕生日となる5月1日にバースデーライブを渋谷RUIDO K2にて開催。5月24日にリリースとなるシングル『さよなら、スタンダード』のカップリング曲「アンバランス アンバランス」を初披露したほか、アイドル史上最長とも言われている17分超えの大作「花」などを全編生バンドで披露した。

 2011年、19歳でソロデビューしたきっかも今年で25歳。当時は無茶苦茶なトークで、ファンとファン以上に関係者の大人たちをヒヤヒヤさせた彼女だが、あれから6年が経ち、すっかりと大人の落ち着きあるトーク……が、できるはずがない。我々は忘れちゃいけない。この日、ステージに立つのは他でもないきっかである。

 吉川友が発表した数々の楽曲がBGMとして流れる中、フロアは入り口の階段にも人が溢れる超満員状態。開演時刻が過ぎて、バンドメンバーがステージイン。いよいよバースデーライブの幕が上がる。観客のコールに煽られるように「吉川友、25歳になりましたー!」とステージに登場したきっかの1曲目は、“明日も今も懐かしいあの日々も無駄じゃない”と未来へ向けて歌い上げる「Stairways」。バースデーライブにふさわしい始まりで、友フレ(吉川友ファンの総称)の声援にも熱が入る。

 「やだー、どうしようー。年取っちゃったー。ほんと泣きそう25歳ー。おばさんだねー。ほんとにー。」

 と、巷のおばちゃんたちの井戸端会議のような発言からMCを始めるきっか。そしてバースデーライブだけでなく、吉川友の言葉の迷宮、トークラビリンスの扉も開かれることになる。

 「みなさんにわがまま言っていいですか? せっかく誕生日当日ということで、Twitterとか、ありとあらゆるSMSで“おめでとう”のコメントはたくさんいただいているんですけども、直談判といいますか、直接、みんなの生声で、ハッピーバースデーを歌ってほしいなって思うんです。(バンドに向けて)ちょっとなんか音楽お願いしますよ。一発、なんかハッピーバースデーの。いつもの、エブリデイの。」

 ひとつひとつ解説をするなら、まず、きっかのもとにみなさんからの「おめでとう」のコメントがたくさん届いたのは“SMS(ショート・メッセージ・サービス)”ではなく“SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)”。そして“直談判”とは、まさに今、きっかが友フレに「直接、みんなの生声で、ハッピーバースデーを歌ってほしい」というお願いをしている“その状態のこと”を言う。さらにここでの“いつも”とは“every day”ではなく“usual”であり、加えていうと、そもそも吉川友はルー大柴ではない。ただ、その発言のひとつひとつにおいて、友フレからはざわめきこそ発生したが、デビューして6年、ひとつひとつ訂正を挟むことなく意思疎通が図れてしまうのは、きっかと友フレの間に築き上げられた信頼関係の賜物である。本当に慣れとは恐ろしいものである。

 きっかからのお願いで「ハッピー・バースデー・トゥー・ユー」を全員で大合唱したのち、「今日はこれで帰れます!」と堂々帰宅宣言をするきっかを「いやいやいや……。」と、友フレが引き止める。そんなお約束のようなやり取りを終えて、きっかは「今までの自分とはちょっと違う自分を見せたらいいな。」という今年のバースデーライブのテーマを紹介する。「次の曲は2年ぶり。私たち、大変だったねという思いがあるんですけど、その大変さが分かる曲を歌いたいと思います。」という曲振りを経て流れてきた音の重なりは、2015年の5月にリリースされた、トータル17分25秒というアイドル史上前代未聞の超長いシングル曲「花」。記者にとっては、当時のリリースイベントにて、歌が始まったというスタッフツイートを受けて恵比寿駅から山手線外回りに乗り込んで、会場となっていた新宿のタワーレコードまで行ってみたら、まだ歌が続いていたという検証を行なったことがある、本当に長い曲だ。しかも今回は、この曲を生バンドで行なうというのだから、これまたアイドル史上前代未聞である。

 もっとも、不安定要素の宝石箱のようなトークとは異なり、吉川友の歌唱力の高さはアイドルファンの間ではよく知られている事実。次々に展開とメロディーが変わる組曲「花」のような難曲でも、しっかりと安定した歌声を聴かせる。それが吉川友エンターテインメント。ライブに足を運ぶ友フレの多くは、この歌とトークのアンバランスのようなバランスで成り立つエンターテインメントに魅了されている。

 ボーカルとバンド、そして観客の熱量がぶつかりあって、激しい一体感を生み出していた「花」を経て、3曲目「こんな私でよかったら」では、友フレからの生誕サプライズが贈られる。吉川友=黄色という定番カラーの光に変わって、フロアで強い輝きを放っていたのは、開演前に友フレ有志によって配布されていた青いサイリウム。それは“こんな吉川友だけど応援し続ける。どこまでもきっと行ける。”という友フレからの決意のようなもの。友フレはバースデーライブごとに決意を新たにして、自己を奮い立たせるのである。

 サプライズと盛り上がりを目の当たりにして嬉しそうなきっかだったが、テッパンの盛り上げ曲「Time to zone」で飛び跳ねたあたりから、まさかのスタミナ切れ寸前。「歯をくいしばれっっ!」のイントロでキーボードに手を付きつつ、「疲れた……。」と漏らした本音をマイクが拾って観客は爆笑。「いやいやこれは『歯をくいしばれっっ!』に入るための、吉川友なりの演出なんじゃないか……?」と、思った新規ファンもいたかもしれない。甘い。長年見てきた友フレならわかるように、なんでもない、ただの彼女の本音だ。

 こういう状態を見越して大森靖子が書いたかのような、言葉の洪水が続く「歯をくいしばれっっ!」が、きっかの体力をジリジリと削っていく。しかしきっかは、友フレの声援を受け、グロッキー気味になりながらもしっかりと歌い上げることに成功。思わず友フレから大きな歓声が巻き起こる。

 「25歳になって、私、気づいたことがある。……体力がない。いやー、びっくりしたー!」と、冒頭からの5曲を振り返るきっか。「『花』、17分25秒を3曲ぶんだと考えたら、8曲歌ってですよ、8曲でこんなに息ハアハアって。デビュー当時にはありえなかったことだなって。」と、ジムで30代後半と言われた体年齢を痛感している様子だ。

 さらにきっかは、「25歳。“人生の曲がり角”って言うんです。」と、会場の誰もが初耳なフレーズを突然言い出してフロアを大きく動揺させる。この騒然具合にきっかも間違いに気づいたのか、「違う。“お肌の曲がり角”って言うんです。」と言い直す。確かに、お肌の曲がり角が人生の曲がり角かのように思ってしまう若い女性も世の中にはいるかもしれない。が、しかし、目の前のアイドルに勝手に人生の曲がり角を設定され、さらに気づいた時には曲がり角はゆうに通り過ぎていたという手遅れな状態に叩き落されそうになったこちら側の気持ちにもなってほしいものである。

 そんなお肌の曲がり角を迎えて、24歳最後の夜にはなかったものの、朝を迎えて25歳になった途端に顔に自称・ニキビ(という名の吹き出物)ができたきっかは、MCを続ける。

 「ネットで『25歳 女性』で調べると、“女としての一番カワイイ時期は24歳。25歳は潮時”って。そんなネットの記事を読みまして。“ちょっと、私ももう潮時なのかー。”そう、ひしひしと感じているんですが……まだまだやれる。私は大丈夫。なので、25歳の誕生日を迎えて、目標とか訊かれるんですけど、目標は、『身体のメンテをちゃんとする』。体力をつけるだったり、いろいろ“垂れてくる”っていうのがネットに載ってたので、それをちゃんとケアをして。心も身体もケアをして、30代、40代になっても、可愛らしいみんなのアイドルでいようかなって思ってます。」

 そんなきっかの25歳の目標に笑いも喝采も起これば、ライブはいよいよ初披露の楽曲へ。5月24日リリースのシングル「さよなら、スタンダード」のカップリング曲「アンバランス アンバランス」の力強いドラムがスタートする。キャッチーがサウンドと、25歳の吉川友を投影したような歌詞は、茨城県常陸太田出身のマシコタツロウ(一青窈「ハナミズキ」やEXILE「あなたへ」など制作)による作品で、常陸太田のアンバサダーを務めるきっか曰く「茨城の曲」だそうである。

 さらにバースデーライブは、ここからオーディエンスのボルテージを一気に引き上げにかかる。「ハコの中のブルー」で疾走感を演出すれば、アカシックの理姫と奥脇達也が書き下ろしたロックチューン「チャーミング勝負世代」で、熱量は限界点を軽く超えていく。サウナ状態となったフロアに撃ち込まれた「アカネディスコ」の吉川ブートキャンプで客席を踊らせ、体力の限界へと誘えば、お約束のコール・アンド・レスポンスで「吉川友」「25歳」「四捨五入」「三十路!」を求めておきながら、実際に観客からのレスポンスが返ってきたら途端にきっかは顔を曇らせる。そんな「アカネディスコ」の後には、バンドアレンジでさらに磨きがかかったキラーチューン「URAHARAテンプテーション」。地を這うようなベースラインの上を妖艶にうごめくギター、そして小悪魔的なボーカルが絡み合って、RUIDO K2は極限の興奮状態へと昇りつめ、ステージに君臨する吉川友の「跪くのよ」の言葉に、誰もが我先にと従うのだった。

 「ありがとうございます。最高? ありがとうございます。今日は、バースデーということで、こうやってたくさんのいつも応援してくださっているファンのみなさんに“看取られながら”、“見惚れ?”……ん? ファンのみなさんに25歳の吉川友を“見まもわれながら”……あ、見守られながら、ライブすることができて、本当に今、“絶好期”。ありがとうございます。言葉のミスは25歳になっても変わりません。これからもこういった場所でミスするのはいいけど、ネットの記事(ツイート)とかで誤爆はしないように気をつけたいなって思います。」

 日本語特有の繊細な表現技法を独創的かつ大胆に用いつつ、感謝の気持ちを示したきっか。本編最後は、冒頭の「今までの自分とはちょっと違う自分を見せたらいいな。」というコンセプトどおり、大人になった吉川友だからこそ歌える、テンポを落として歌詞の意味をしっかりと伝えるアレンジへと着替えた「あまいメロディー」を披露する。描かれた許されざる恋の切なさと、それをしっかりとひとりひとりに届ける吉川友の表現力。観客はただただその歌声に聞き惚れ、そしてステージパフォーマンスに見入るのだった。

 新曲「さよなら、スタンダード」から始まり、6年前と変わらない笑顔と当時と変わらない熱いコールが混ざりあったデビュー曲「きっかけはYOU!」も歌われたアンコール。最後の曲「ずっとずっとずっと君がスキだ」に行くタイミングで、バンドメンバーおよびスタッフからのサプライズが発動し、「ハッピー・バースデー・トゥー・ユー」の演奏および2回目の合唱に乗せて、ケーキが運ばれてくる。

 「予期せぬ出来事にびっくりしちゃった! こういうのサプライズって言うんですね!」と、きっかは驚きと喜びの表情を浮かべると、「25歳、どうなるかわかりませんけど、“ありがとう”と“ごめんなさい”と“大好き”を言える25歳になりたいと思います。」と語って、さらに「みなさん言わせてください。大好きです。ありがとう!」と続ける。そんな、デビュー当時から確実に成長したトーク運びを聞かせて、あらためて最後の曲「ずっとずっとずっと君がスキだ」で、吉川友25歳のバースデーライブは終演を迎えた。

 「今日は楽しい時間を過ごすことができました。いつも毎年、こうやって何年も連続で祝っていただいて思うのが、この世界に入ってなかったら、こんなにたくさんの人に祝ってもらうこともなかっただろうし、この世界を選んでよかったなって。ひしひしと感じています。最近はね、私の周りで同期の子が卒業とか、いろんなアイドルの子が卒業していくタイミングの年だなって。そういうのを見ていると、不安もあるんですけども、それでも私は、この世界には卒業せず、居たいなって思っています。来年の26歳の誕生日も、再来年も、何十年先の誕生日も、みなさんに祝っていただけたらハッピーです。吉川友の応援、よろしくお願いします。」

 ライブ中、ずっと芸能界で活動していくことを誓った吉川友。活動を続けるという覚悟。それは支えてくれているファンの想いに応え続けるということ。

 この日、一番幸せだったのは、誕生日を迎えてたくさんのお祝いを受け取ったきっかではなく、そんなきっかの言葉を耳にすることができた友フレだったのかもしれない。

 なお、きっかはバースデーライブを終えたのち、場所を移動してSHOWROOMのレギュラー番組『吉川友のShowroomで配信してみっか!』に出演。ステージに登場したバースデーケーキは、番組内にて美味しくいただいたそうである。

◎リリース情報
シングル『さよなら、スタンダード』
2017/5/24 RELEASE
[初回限定盤A(+DVD)]
POCS-9162 1700円(税込)
[初回限定盤B(+DVD)]
POCS-9163 1700円(税込)
[通常盤]
POCS-1592 1080円(税込)


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