ピュリティ・リング【単独来日公演】渋谷の一角にある“子宮”を温めた“誓いの指輪”

2017年3月8日 / 18:00

 カナダ・モントリオールを拠点としているフューチャー・ポップ・デュオ、ピュリティ・リング(Purity Ring)。「ピュリティ・リング」とは婚前交渉は一切しないという誓いの意が込められた指輪の名だが、彼らの初となる単独来日公演が行われた場所は、ネオン・サインの輝かしい渋谷の一角にあるWOMBだった。会場名の意味は「子宮」。偶然に違いないが、なんとも意味深な状況の通り、2017年3月6日の夜はひどく神秘的なものとなった。

 詳しいプロフィールや活動履歴は公演プレビュー(http://bit.ly/2mznkYA)にある通りだが、この日は会場が暗転すると左右の壁からスモークが噴射され、ヴォーカリストで作詞も手がけるミーガン・ジェイムズ(Megan James)と、トラックと楽器を担当するコリン・ロディック(Corin Roddick)が登場。拍手と喝采による歓迎を受け、2015年にリリースされた2ndアルバム『Another Eternity』と同じく「heartsigh」でライブの幕を開けた。

瞬時に打ち出される神秘性――コリンの手によって生まれる光

 地鳴りのように重いビートと瞬く星のように煌びやかなシンセ音、軽やかなヴォーカルが印象深いこの楽曲のあとは、1stアルバム『Shrines』の収録曲を織り交ぜながらノンストップで4曲を披露。ミーガンはステージを自由に行き来し、ときに立ち止まり、ときに体をくねらせながら、マイクに声を吹き込んでいく。ステージ衣装のデザインや裁縫もこなす彼女、この日はカールした金髪のキュートなヘアスタイル。途中までサイズの大きな白いジャケットを身にまとっており、それを脱いだあとは肩の尖ったデザインの黒いつなぎのような服装に。一方、コリンの前には多角形の照明がU字に配置されており、彼がそこにつけられているパッドを叩くたび、楽曲に応じて赤や黄や青などの色が浮かぶ。背後のスクリーンに投影される映像効果も相まってさながら総合芸術のようである。

 5曲目「Lofticries」を終えると、ミーガンは「演奏できて嬉しいです。呼んでくれてありがとう」と挨拶。彼らの代表曲でもあり、サビ前に4連打されるビートと2拍目から始まるメロディラインが心地よい違和感を生み出す「push pull」ではより大きな歓声が上がり、同じフレーズが輪唱のように広がる「Crawlersout」ではミーガンも演奏に参加。カナダの都市、エドモントンで出会った2人だが、高校卒業後にミーガンはハリファックスへ、コリンはモントリオールへ移住したため、1stアルバム『Shrines』はインターネットを介して作られた。その後、自分たちの関係を見つめ直し顔を合わせる機会を増やしたことで、お互いオープンになったというコリンとミーガン。彼らの開かれた心はこういったパフォーマンスの中にも見て取れた。

一転し押し出される攻撃性――ミーガンの指先から放たれる光

 10曲目「sea castle」辺りからは歪んだサウンドとストロボに代表されるライティングなどで攻撃性も押し出し、前半とは少し違った趣へ。その中でも一時、静謐の戻った14曲目「stillness in woe」では、ステージ袖から扇形の物体が出現。腰くらいまでの高さがある棒状の照明が組み合わされたもので、一つひとつの先端から上向きに光が発射されるのだが、手袋をつけたミーガンがその光源へ手を伸ばすと様々な方向へ白いビームが突き抜ける。指先に鏡の破片のようなものが貼り付けられており、そこに光が反射するという仕組みだ。ライブでの美しくユニークな演出にも定評のある彼らだが、実際目の当たりにすると息を呑まずにはいられない。

 その後は「Fineshrine」で再び会場を激しく揺らし、最後のMCでは「5年前にフジロックで来日して以来なので今日はとても特別です。いま私たちはこんなに素敵な国にいます。本当にありがとう」と笑顔で話したミーガン。「次で最後です」と紹介された「begin again」では、皆が皆、これで終わるとわかっていながらも、繰り返される<Begin again>を大合唱。ピュリティ・リングの生み出した音と光によってこの日のWOMBが最大に温まったこの瞬間、彼らの再来日を早くも望んだ人だって少なくないだろう。もちろんそのときの景色はまだ誰にもわからない。次はまたまったく違ったステージになるはずだ。

テキスト:佐藤悠香

◎単独来日公演セットリスト
2017年3月6日(月)東京・WOMB
01. heartsigh
02. Amenamy
03. repetition
04. Obedear
05. Lofticries
06. push pull
07. Belispeak
08. Crawlersout
09. bodyache
10. sea castle
11. stranger than earth
12. dust hymn
13. flood on the floor
14. stillness in woe
15. Fineshrine
16. begin again


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