恐るべきティーンエイジャー達の新作が伝える、深く広いポップ・ミュージックへの理解。~リス(Liss)『First EP』(Album Review)

2016年6月29日 / 18:30

 名門XLレコーディングスと契約を結び、4曲入りの『First EP』でデビューを果たした、デンマークの4人組バンド、リス(Liss)。メンバー全員が十代のうちに2015年に結成され、「Try」そして「Always」という楽曲をインターネット上に公開してきた。甘く柔らかな、しかも驚くほど練り上げられたソングライティングを武器に、注目を集めるようになったインディー・バンドだ。

 「Always」はメランコリックな陶酔感とソウルフルなグルーヴを併せ持つナンバーだったが、『First EP』に収録された楽曲はいずれも新曲。XLのロディ・マクドナルド(これまでにザ・エックスエックスやサヴェージズ、ドーターなどを手がけてきた)がプロデュースしたサウンドは、豊かさと洗練に満ち溢れている。

 大胆な音の隙間からエモーションを立ち上らせて始まるリード曲「Sorry」は、うっすらと悲しみに染まる歌声が、ハーモニーワークやトロピカルなフレーズに彩られてゆく。ギター・バンドとしての基本構造を持ちながら、音楽的なヴィジョンの広がりが素晴らしい。続く「Good Enough」はファンキーなヴォーカルの節回しでグルーヴを牽引してゆくナンバーだが、メロディのフックをしっかり残してゆく。

 そして3曲目の「Miles Apart」は、オーガニックとエレクトロニックの絶妙な配合と、AORばりのアレンジが効いた逸品だ。コーラス・パートの一度聞いたら覚えてしまうキャッチーな響きに至るまで、隙が見当たらない完成度の高さを誇っている。EPを締め括るのは哀愁のレゲエ・チューンとなった「Without Me」であり、ストリングス風のシンセ・サウンドがドラマティックにフィナーレへと導いてゆく。捨て曲の見当たらない一枚だ。

 もちろん、メンバー4人の才能は目を見張るものがあるけれども、大人の階段を上る若者が感受性を解き放ったとき、こんなにも広く深いポップ・ミュージックへの理解が生まれ、哀愁を宥めるための楽曲が生まれるのだということにこそ、感動を覚える。決して背伸びした作風でないことは、楽曲群の一貫したマインドの在り方からも明らかだ。今春には欧州諸国をツアーで回り、夏季のフェス出演も次々に決定しているリス。いずれ、来日公演にも期待したいところだ。(Text:小池宏和)

◎リリース情報
『First EP』
2015/05/13 RELEASE
iTunes:https://itunes.apple.com/jp/album/first-ep/id1104537511


音楽ニュースMUSIC NEWS

AA=、配信SG『FIGHT & PRIDE』ジャケット写真公開

J-POP2024年4月28日

  AA=が、5月23日にリリースとなる配信シングル『FIGHT & PRIDE』のジャケット写真を公開した。   バンテージが巻かれた手の写真は、旧来より上田剛士と親交のある格闘家の五味隆典がフィーチャーされている。さらにVICT … 続きを読む

ロクデナシ、ニューSG『ユリイカ』収録曲の詳細発表

J-POP2024年4月28日

  ロクデナシが、ニューシングル『ユリイカ』の収録曲の詳細を発表した。   同作にはオリジナルTVアニメ『終末トレインどこへいく?』のエンディング主題歌「ユリイカ」に加えて、シングルダブルリードトラックとしてボカロP・Guianoをコンポー … 続きを読む

Perfume、ライブ映像作品『Countdown Live 2023→2024』本編スペシャルティザー公開

J-POP2024年4月28日

  Perfumeが、2023年末に神奈川県のぴあアリーナMMにて開催した【Perfume Countdown Live 2023→2024 “COD3 OF P3RFUM3” ZOZ5】映像作品本編のスペシャルティザー映像を公開した。   … 続きを読む

AZKi、代表曲「いのち」リアレンジバージョン配信リリース決定

J-POP2024年4月28日

  AZKiが4月30日に「いのち(2024 ver.)」を配信リリース、同日20時30分からミュージックビデオをプレミア公開することが決定した。   AZKiは先日『100万人を目指して100曲を歌う』生配信を実施。記念すべき100万人突 … 続きを読む

すとぷり、新曲「リテラシー」MV公開

J-POP2024年4月28日

  すとぷりが、新曲「リテラシー」のミュージックビデオを公開した。   新曲「リテラシー」は志倉千代丸が作詞・作曲を手掛けた、現代社会を生き抜く等身大の自分を歌った1曲。シリアスで重い雰囲気の曲調で社会を生きることの葛藤を綴りながら、自己と … 続きを読む

Willfriends

page top