【ハイレゾ聴き比べ vol.1】内田彩「アップルミント」は唇の動きが伝わってくるかのような歌声を再現

2016年3月19日 / 19:00

内田彩 (okmusic UP's)

音楽好きなら数年前から耳にしていたであろう“ハイレゾ”。ハイレゾリューションオーディオの略であり、簡単に説明すれば文字通り、“high-resolution=高解像度”のオーディオということになる。まぁ、正式名称まで知らなくとも「綺麗な音で聴くことができる」というのはご存知のことと思う。その原理は「ハイレゾはCDでは入りきらない音の情報量を持っている」とか「CDと比べてより細かくデジタル化している」とか、細かく語っていけば複雑な仕様や技術によるものなのだが、このコラムはそこを跳び越し、同じ楽曲、同じアルバムのハイレゾ音源とMP3音源を実際に聴き比べて、ハイレゾの優秀性を検証してみようという試みである。

μ’sのメンバーとしても活動する人気声優
クラシックもポピュラーも、古きも新しきも、古今東西の様々な音源がハイレゾ化されており、本稿作成用にあたっても多くのハイレゾ音源が用意されたが、その中に「アップルミント」というタイトルを見つけた。歌手は内田彩だという。不勉強なことに、「アップルミント」はおろか、この方がどなたか存じ上げなかったが、調べてみると彼女は声優さんでもあり、昨年、NHK紅白歌合戦にも出場したμ’sのメンバーとある。μ’s と言えば、いくらアニメや声優に疎い自分でも、(さすがその日付までは知らなかったが)3月31日と4月1日に東京ドームでファイナルライヴを行なうことくらいは知っている。この東京ドーム公演は両日共にソールドアウトしており、聞けば、ステージ裏側にあって出演者を直接見ることができない“完全見切れ席”までも売り切れていると言うではないか。内田彩とμ’sとではアーティスト性は異なるのだろうが、彼女がどんなアーティストなのか俄然興味が湧いた。ありがたいことに音源のチョイスはこちらにお任せという状態であるし、このハイレゾ企画の第1回目は内田彩「アップルミント」を取り上げたいと思う。今まで聴いたことがない音源なら予断を持ちづらいし、表情豊かなヴォイス・アクトレスならではの歌声がハイレゾ音源で如何に聴こえるのかも楽しみだ。

まず、既存のMP3音源を聴いてみる。ロックだ。ドラム、ベース、ギター、キーボード、そしてヴォーカル。シンセの高音がやや立ちすぎているきらいはあるが、リズム隊がグイグイと楽曲を引っ張る。意外と…と言っては失礼かもしれないが、かなり本格的なバンドサウンドを聴くことができる。いや、誤解を恐れずに言えば、ヴォーカルだけを前面に出すのではなく、楽曲全体で圧すタイプと思ってもらった方がいいかもしれない。とりわけベースはうねりまくっており、かなり個性的だ。間奏を聴く限り、ギターはヘヴィで暴れている様子。ヴォーカルは終始スウィートで、高音もよく伸びる。歌詞には“fu-wa”とか“ドキドキ”といった擬声語もあり、この辺での表現力はさすがに声優さんと言えるのかもしれない。サビもかなりハイトーンだが、しっかりと聴かせてくれる。また、サビ後半転調時、Cメロでヴォーカルのみの所謂ブレイク部分があり、ここでは彼女の息遣いを感じることもできる。

歌も演奏もシャープで、楽曲の奥行きがアップ
さて、続いてハイレゾ音源(24bit/48kHz)である。パッと聴き、明らかに音像は違うことにまずびっくり。各パートがクリアで、イントロからしてギターのカッティング、その刻み具合がはっきりと分かる。既存のMP3音源でも聴き取れないわけではないものの、シンセと重なってしまって印象に残らない感じだ。それがハイレゾ音源では、小節ごとに小刻みに音階が上昇していくシンセとギターとがしっかりと棲み分けされていることを確認できる。もちろんギターソロやAメロで聴かせるノイジーな音色もよりくっきりとした印象もある。リズム隊に関しては、ベースは基が個性的なだけに大きく変わった感じはしないが、それでも密集感を増す部分では埋もれてしまいがちなフレーズをはっきりと聴くことができるし、ドラムスの音の抜けは間違いなくいい。スナッピー(註:スネアの裏側に張られているバネ状の金具)の振動すらも感じられるほど…と言っても大袈裟ではなかろう。

前述した“シンセの高音がやや立ちすぎているきらい”だが、これは単に好みの問題かと思っていたら、それぞれの音の位置が分かれていることを認識できるので、シンセだけが浮いているような感じはなく、80年代風の電子音はあまり気にならなくなった。各パートがクリアーになっていることで、こういう現象も起こるのだろう。面白いものだ。演奏部分での聴きどころは数々あるが、推したいのは後半のCメロ周辺。具体的なタイムを挙げれば、3分10~25秒の辺りだ。ブレイクして薄めのシンセをバックにヴォーカルが入り、そこにトレモロ的な電子音が奏でられた後でバンドサウンドが重なり、転調してサビへ向かう途中でエレキギターとシンセとが左から右へと走る──個々のパートがシャープに聴こえるからこそ、スリリングさが増幅されているようで実にカッコ良い。

ヴォーカルは段違いにクリアーになっている。口をちゃんと動かして歌っている感じがするのだ。何か馬鹿な書き方をしたが、ハイレゾ→MP3→ハイレゾと交互に繰り返すと分かってもらえると思う。バ行、パ行、マ行の言葉では上唇と下唇が触れ合っている様子が伝わってくる。その分、表現力も増した印象で、《ぎゅうっと》と辺りは艶めかしがアップしている気もする。特筆しておきたいのはコーラスワークだ。これまたはっきりと聴こえるようになったことで奥行を増し、ヴォーカルパートがより立体的になったと感じられるのは間違いない。Aメロ後半の《考えるより 感じて動いたの/いつもそうだったよね》部分、あるいはサビのハーモニーは、最初にハイレゾを聴いた時には「この音はMP3には入ってなかったよな」と勝手に確信したほど。聴き返してみたらMP3でも確認できるが、自分にはインパクトを残すほどではなかったのに、ハイレゾでその印象は覆った。ファンならば、この部分を聴くだけでもハイレゾ音源を入手する価値はあると思う。

TEXT:帆苅智之


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