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生楽器の演奏に溶け込んだ、オーガニックな歌声とワイルドなルックスが、まさに次世代のネオソウル・シンガーを代表するに相応しい、ミゲル。
70年代を彷彿させるのに、古典的ではない。官能的なのに、上品。個人的には、マックスウェルがデビューした時と同じような衝撃を受けたのだが、「ディール」や「ザ・ヴァリー」を聴くあたり、ロックも色濃く、レニー・クラヴィッツのような印象も受ける。その、レニーが参加した「フェイス・ザ・サン」も同様に、黒人音楽としての正統ロック、ファンクも骨格にあるようで、ポップな要素は皆無といった、ブラック・ミュージックの本質を展開するのが、ミゲルの音楽。ここが、ザ・ウィークエンドとの違いなのだろう。
一方で、上記のような肉体的サウンドから一転し、先行シングルとして切られた「コーヒー」は、どこかUKソウルのような上質感があり、同調のメロディがループされ続けるも、ずっとそのサウンドに浸っていたくなるような中毒性が、シャーデーあたりのカフェ・スタオルにも通ずる。ピロートークながらも、その描写は官能的というよりは、芸術的。サウンドに比例した、リリックの上品さにも注目したい。「ホワッツ・ノーマル・エニウェイ」あたりも、その路線にあるだろう。
また、ミゲルの魅力はサウンド・センスに適合した、その高低差で漂うヴォーカルワークだ。バスからアルトまで自由自在に声を操り、たとえば「…ゴーイング・トゥ・ヘル」と「フレッシュ」あたりを比較すると、その柔軟さがよくわかる。このファルセット使いがマックスウェルを思わせるところで、70年代の良質なソウルを受け取ったマックスウェルから、90年代の彼の影響下にあるミゲルと、受け継がれるブラックミュージックの歴史も垣間見れる。
ソウルからロック、ファンクにアフリカンと、黒っぽさは根底にありつつも、R&B志向の方でなくとも、しっくりくる楽曲が揃っているのではないかと思う、本作『ワイルド・ハート』。それは、ジャンルにとらわれず、単純に“いち音楽として良いもの”だからだろう。
2012年にリリースした2ndアルバム『カレイドスコープ・ドリーム』は、「ソング・オブ・ザ・イヤー」含むグラミー賞4部門にノミネートし、シングル「アドーン」では「最優秀R&Bソング」を受賞したが、次作に繋がるそのプレッシャーは(おそらくあったのだろうけれど)まったく感じさせない、強い信念と心証風景がはっきり映し出された『ワイルド・ハート』。先立ってリリースされたアメリカでは、自己最高位の2位をマークし、UKやオーストラリアでもTOP10入りを果たしている。
国内版は9月2日、ボーナス・トラック追加収録予定でリリースされる。もしや、マライアとのデュエット曲「#ビューティフル」も…?期待したいところ。
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