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才気あふれるSOFT BALLETの名盤『愛と平和』

SOFT BALLET『愛と平和』のジャケット写真 (okmusic UP's)

2014年に藤井麻輝と森岡賢がminus (-)を結成し、1stミニアルバム『D』をリリースしたことはSOFT BALLETのファンを驚かせた。SOFT BALLETは1995年に解散を発表。その7年後に復活したものの再び、活動休止状態に突入。しばしば、その理由は個性の強さゆえの藤井と森岡の関係性にあると噂されてきた。ゆえにこのふたりがユニットを結成するとは想定外どころか青天の霹靂だった。しかも、“minus (-)”という意味深なネーミングもあり、遠藤遼一不在のマイナス…つまり、このユニットはSOFT BALLETの再始動を示唆しているのではないかという憶測まで呼ぶことになった。もちろん、それは憶測にすぎないが、最近では『LUNATIC FEST.』にも出演と何かと注目されているminus (-)の始動は2014年の事件であった。そして、後にも先にもこんなユニットは2度と現れないだろうと思うSOFT BALLETの名盤のひとつと言えば1991年に発表された『愛と平和』だと思う。

三者三様の個性とキャッチーで中毒性のある楽曲
 YMOや荒井由実、シーナ&ロケッツなど尖ったアーティストたちを数多く輩出してきたアルファレコードから1989年にデビューを飾ったSOFT BALLETは当時から衝撃的な存在だった。ニューウェイブ、テクノの匂いがプンプンする遠藤遼一(Vo)、藤井麻輝(Key&G)、森岡賢(Key)の3人によるSOFT BALLETは形態も含めて当時のシーンの中でも異彩を放っていた。マニアックとポップがスリリングなバランスで共存するその魅力は1stシングル「BODY TO BODY」から発揮され、1度聴いたら忘れられないインパクトのエレクトリックボディミュージックを提示。その後、インダストリアルな方向にシフトしていくが、華やかさと棘を合わせ持つSOFT BALLETは三者三様の個性を持つ集団として熱狂的な支持を得ることになる。遠藤のクールかつ色気のある低音ヴォーカル、火星人のような摩訶不思議なダンスパフォーマンスも話題を集めた森岡のポップセンス、藤井のノイジーでエッジーでダークなサウンドメイキング、この3人の融合、もしくはぶつかり合いが誰にもマネできない楽曲を生み出してきた。ちなみに1994年に行なわれた『LSB』はLUNA SEA、SOFT BALLET、BUCK-TICKが全国各地で共演した、今では伝説となっているイベントツアーでタイトルは3バンドの頭文字からとったもの。THE YELLOW MONKEY、L’Arc~en~Ciel、THE MAD CAPSULE MARKETS、DIE IN CRISなどゲストの顔ぶれも豪華で90年代ロックの歴史を語る上で外せない画期的なライヴとなったことは言うまでもない。

アルバム『愛と平和』
 このアルバムがリリースされてから24年もの歳月が流れているが、驚くのは流行りすたりの激しい打ち込みのシーンにあって(本作にはドラム〈シンバル、タム〉を上領亘が叩いている曲も収録)全ての楽曲がまったく色褪せていないことだ。時代がひと回りした感もあるのかもしれないが、SOFT BALLETを聴いたことがない世代にも強く勧めたい一枚である。湾岸戦争時に制作されたアルバムであるということもサウンドやメッセージに反映され、オープニングとエンディングを飾るディープで陰影のあるエキゾティックなナンバー「SAND LOWE」や攻撃的で尖った「VIRTUAL WAR」など前半から強烈な個性を放つ。藤井のノイジーでパンクで実験的なアプローチとフレーズからしてキャッチーな森岡によるダンスチューン「EGO DANCE」やロックの衝動性が盛り込まれた「AMERICA」「FINAL」などメロディーが立った曲がバランスよく共存しているのが特徴的。異なるカラーを持つふたりの楽曲をつなぐのが遠藤の存在感のあるヴォーカルというスリリングなトライアングルが美しい。ニューウェイブ、エレポップ、インダストリアルノイズ、テクノ、歌謡曲…さまざまな音楽が絡み合うSOFT BALLETの曲を聴いていて思うことは、その卓越したセンスだ。そう思うと彼らは三者三様の集団ではなく、実は根底に流れている美意識は似ていたのかもしれない。全曲、通して聴いたらリピートしたくなるはず。中毒性は高い!

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