<ライブレポート>そらると過ごす特別なハロウィン 非日常感と変幻自在の歌声で観客を驚かせる

2026年11月6日 / 19:40

 そらるのハロウィンライブ【SORARU Halloween LIVE 2026】が、10月31日と11月1日に東京・京王アリーナTOKYOで開催された。本稿では初日公演【SORARU Halloween LIVE 2026 ~Starhallow~】の様子をお伝えする。

 今年で歌い手活動18周年を迎えたそらるだが、そらるのクロニクルにハロウィンライブが刻まれたのは、昨年のこと。神奈川・ぴあアリーナMMで開催された、まふまふとのユニット・After the Rainによる【After the Rain LIVE 2025 ~After Halloween Night Party~】は、ユニットにとっても、各個人にとっても記念すべき初のハロウィンライブになった。そらるは狼男の衣装を披露し、会場を沸かせていた。

 そして、その延長線上に発表されたのが、ソロとしては初となるこのハロウィンライブ【SORARU Halloween LIVE 2026】だ。2日間の開催地に選ばれたのは、京王アリーナTOKYO。東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の会場だった武蔵野の森総合スポーツプラザが、昨年5月1日に改称した会場だ。歌い手シーンのアーティストとして初めて同会場のステージに立つそらる。そのハロウィン本番に行われた初日公演を観た。

 一年に一度のハロウィンの歓迎ムードと怪奇的な雰囲気が入り混じるオープニングムービーがステージの紗幕に映し出される。エレクトロスウィングの香り漂う新曲「ハロウナイトトリップ」のイントロが流れ出すと、爆発音を伴う炎の特効と同時に紗幕が勢いよく吹き飛んでいった。その瞬間、一斉に姿を現したのは、ハロウィンの世界観を表現したステージセットとバンドメンバー、そして吸血鬼の衣装に変身したそらる。
 
 今年は、10年分のステージ衣装を展示する衣装展が初めて開かれたことも記憶に新しく、本公演に向けては、ライブで着用してほしい衣装を募る「衣装アンケート」も事前に実施。その結果をもとに、当日はそらるがさまざまな衣装を披露した。

 そらるのライブには以前も足を運んでいるが、「独りんぼエンヴィー」で目を丸くすることになるとは思いもしなかった。歌声に色っぽさを宿しながら、柔和な笑みを観客に向けるそらる。すべてを優しく包み込んでしまうような、ある種の母性的な表現力が、この日のそらるには確かにあった。低くウェット感のある歌声を放ったアグレッシブなロックナンバー「アイフェイクミー」で見せた顔も、どことなく“はじめまして”に近い。ワイングラスを片手に王座に腰掛けた「ヴァンパイア」では、吸血鬼の衣装がいっそう映え、その佇まいに目を奪われた。

 一方、この日の衣装について「恥ずかしいけど」と照れくさそうにし、少し高い台の上に立つだけで怖気づいてしまうところは、通常営業。センターステージへと移動し、フィンガースナップを華麗に決めて、約10年前の楽曲「マダママゴト」を繰り出した。遊び心に満ちたボーカルワークで観客の声を巻き込んだ「ラヴィ」が続き、そらる自身が全曲の作詞を手がけた6枚目のフルアルバム『ユメトキ』の収録曲「ツギハギの翼」へ。楽曲の世界に入り込んで演じては、言葉に自身の想いを託して届ける。歌い手という出自から育まれた、表現の引き出しの多さが光っていた。

 「神っぽいな」からは執事の衣装で登場し、また別の顔を覗かせる。オリエンタルなサウンドが印象的な「シャンティ」と「悪魔の踊り方」のダークな世界に染まった歌声からは、冷静さの裏に怒りを潜ませた人物の姿が浮かんだ。そらるの根底にある沈着さは、18年という歳月をかけて培ってきた経験と、そらる自身が元来持ち合わせていた資質、その両方が重なり合って生まれたものだろう。そこに挑発性という相反する表情が加わるだけで、驚くほど聴き応えのあるパフォーマンスになっていた。

 和装に衣装チェンジし歌い上げる、まふまふのオリジナル曲「夢のまた夢」。そらるは、2008年から歌い手シーンの第一線を走り続け、今なおライブにボカロ曲を取り入れ、シーンへの敬意を示し続けている歌い手だと思う。なかでも、盟友であり、同じ歌い手であり、さらにはコンポーザーでもあるまふまふには、特別な尊敬の念を抱いている――そういう想いが伝わってくるカバーだった。本公演のために書き下ろされたロックバラード「愁いに白雨」を経て、「ハロウィンはハチ(米津玄師)さんのイメージが強くて」と切り出したそらる。「マトリョシカ」「パンダヒーロー」「リンネ」「Mrs.Pumpkinの滑稽な夢」の4曲をつないだメドレーを、飾らない姿で楽しそうに届けたことからも、格別に深い思い入れが感じ取れた。

 再びセンターステージに立ち、「ワンダー」でまばゆいスポットライトを浴びながら輝く姿を見て、改めて実感したことがある。それは、自らが描いた物語を歌うときこそ、その歌声にシンガーソングライターとしての“現在地”が浮かび上がるということ。危うさを孕んだギターが踊り、そらるの台詞が耳を奪う「TRICK or LOVE?」が、本公演のために用意された新曲の披露を締めくくる一曲になった。

 アンコールでは、そらるのメイド服姿に黄色い歓声が飛び交った。「愛して愛して愛して」では艶やかな歌声から、地続きとなる狂気性を秘めた歌声へと転じる。そして「モエチャッカファイア」で最高潮の波を描いた。「(今日の姿を)目に焼き付けたくない人は忘れて帰ってください」と、MCには時折ユーモアも混ざる。「いろんな衣装を着られるのってレアな経験だし、評判よかったら10年後くらいにまたやるかも」というマイペースな発言もまた、長きにわたり活動を続けるそらるのストロングポイントだ。

 次のステージにつながる物語を柔らかく奏でたオリジナル曲「ユーリカ」で終演。目が覚める思いがした。このハロウィンライブの見どころは、衣装チェンジに限定されたものではなかったのだと。ハロウィンの魔法がもたらす非日常感を味方につけて、表情から歌声までを自在に着せ替え、そらるは観客を驚かせた。そんな空気感のなかで彼の表現者としての器が、一段と大きくなった気がしている。まさしく、ハロウィンライブの新たなあり方を定義したスペシャルな一夜だった。

Text by 小町碧音
Photos by 笠原千聖(cielkocka)、立山沙緒里(田中聖太郎写真事務所)

◎セットリスト
【SORARU Halloween LIVE 2026 ~Starhallow~】
※2026年10月31日(土)京王アリーナTOKYO公演
1. ハロウナイトトリップ
2. アイフェイクミー
3. 独りんぼエンヴィー
4. ヴァンパイア
5. マダママゴト
6. ラヴィ
7. ツギハギの翼
8. 神っぽいな
9. ロウワー
10. シャンティ
11. 悪魔の踊り方
12. テレストリアル
13. 夢のまた夢
14. 愁いに白雨
15. 【メドレー】マトリョシカ~パンダヒーロー~リンネ~Mrs.Pumpkinの滑稽な夢
16. ワンダー
17. TRICK or LOVE?
<アンコール>
1. 愛して愛して愛して
2. モエチャッカファイア
3. ユーリカ


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