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大学の同級生である中野雅之(Programming, B)と川島道行(Vo, G)によって結成され、1997年にベルギーのレーベルからデビューしたBOOM BOOM SATELLITES。ロックとエレクトロニカを融合した革命的なサウンドは、逆輸入のかたちで日本の音楽シーンに大きなインパクトを与えた。2016年に川島道行が病で死去し、その歴史は一度幕を閉じる。しばしの沈黙を経て、中野はTHE NOVEMBERSの小林祐介をボーカルに迎えてTHE SPELLBOUNDとしての活動をスタート。そして、川島道行の10周忌を迎える2026年、「THE SPELLBOUND × BOOM BOOM SATELLITES(ザスペルバウンド プレイズ ブンブンサテライツ)」としてさまざまな活動を繰り広げてきた。
ツアーを皮切りに、新宿歌舞伎町でのフリーライブ、メディア出演、新曲「Brand New Drive」の発表——アクションを起こすたびに大きな話題となり、2026年にBOOM BOOM SATELLITESの音楽が鳴り響く。まったく色褪せない精度と研ぎ澄まされた美しさに、改めて心を奪われた人は多いはずだ。同時に、初めて聴いて衝撃を受けた世代がいるかもしれない。そうして駆け抜けたメモリアルプロジェクトの締め括りとして、川島の命日である10月9日、東京・SGC HALL ARIAKEで【THE SPELLBOUND×BOOM BOOM SATELLITES presents 川島道行10周忌LIVE “FRONT CHAPTER” -DECADE- Tour 2026 TOUR FINAL】が開催された。
当日は、会場ロビーで【川島道行展】も同時開催。活動中のオフショット写真に加え、使用していた楽器機材、自宅に置かれていたフィギュアや書籍、作詞中のメモと思われる直筆の言葉やイラスト等々、川島の人となりが伝わってくる貴重な展示だった。写真の中の笑顔からは温かい人柄が、直筆のメモからは音楽や作詞に真摯に向き合い続けた強い信念が透けて見える。同時に、展示を企画した中野や、協力した家族から川島への愛も溢れていた。斬新なサウンドだけでなく、楽曲の核にある愛や哲学、人間性こそがBOOM BOOM SATELLITESの魅力なのだと実感する。
会場内に入ると、ステージ中央からせり出したスペースに中野と小林の機材が並び、スタンディングエリアのオーディエンスがぐるりと取り囲むスタイルになっていた。暗転後、まずは中野と小林がゆっくりと登場し、機材の前にスタンバイ。一呼吸置いて、小林が「NINE」を歌い始める。柔らかくも美しいメロディに中野の鍵盤の音色が寄り添う、その繊細な響きに息を呑んだ。今年3月にオープンしたばかりのSGC HALL ARIAKEの最新音響設備と相まって、まるで歌声と音に包み込まれるような心地好さ。一瞬にしてBOOM BOOM SATELLITESの世界に誘われた。
2曲目の「BACK ON MY FEET」で福田洋子のドラムセットが現れ、さらに「RISE AND FALL」では福田のドラムがシモテ側に移動してカミテ側に大井一彌のドラムセットが登場。長年BOOM BOOM SATELLITESを支えてきた福田のビートに加え、THE SPELLBOUNDのライブで培われた福田&大井のツインドラムが新たな心臓となってエネルギッシュに躍動していく。どんどん熱量を高めるオーディエンスに囲まれ、中野と小林もステージ際に乗り出して煽り、アイコニックなフライングVを掲げてみせる。小林が掲げるのは、もちろん川島道行の愛器だ。
中野が作り出す最新型の音像とともにBOOM BOOM SATELLITESの音楽を鮮やかに蘇らせていたのは、やはり小林の歌声だ。川島の歌い回しやブレスを忠実に引き継ぎつつ、小林ならではの透明感と表現力が随所に光る。THE SPELLBOUNDの初期にBOOM BOOM SATELLITESの楽曲を披露していた時は「カバー」という印象が強かったが、その後ライブを重ね、特に「×(プレイズ)」の活動を経て大きく変化した。カバーでもコピーでもない歌声は、まさに「×(かけ算)」という言葉がふさわしいかもしれない。楽曲を聴きながら、マイクの前に立つ川島の姿を何度も思い出し、そこで一緒に歌っているような感覚すらあった。ヴォーカリストとしての鍛錬はもちろん、小林が抱く川島への深いリスペクトと、“ふたり”のヴォーカリストに寄り添う中野の思いが辿り着いた境地なのだろう。
同時にまだまだ進化途中であることを、小林が作詞を手掛けた新曲「Brand New Drive」が示していた。小林の力強い歌声とゲストボーカル・XAIの瑞々しい歌声を軸に、2020年代の空気を吸って研ぎ澄まされたサウンドと、90年代からブレないロックのエネルギーが交叉する。紛う事なき最新型のBOOM BOOM SATELLITES。過去の楽曲たちとつながることで、BOOM BOOM SATELLITESの歴史が再び動き始めた喜びをより強く実感した。
静寂を音楽にしたような浮遊感に包まれる「EMBRACE」、BOOM BOOM SATELLITESのロックサイドが覚醒する「HELTER SKELTER」。中野がDJさながらに機材を操り会場を盛り上げた「FOGBOUND」と、そこから繋がる絶対的キラーチューン「KICK IT OUT」「DRESS LIKE AN ANGEL」の驚異的な爆発力——。BOOM BOOM SATELLITESの歴史を網羅したセットリストの中、忘れられない瞬間が積み重なっていく。その中でも、格別のハイライトシーンとなったのは「LAY YOUR HANDS ON ME」だ。曲に入る前のMCタイムで、会場を見渡した中野が「素晴らしい。めちゃくちゃカッコいい」と笑顔でオーディエンスを讃え、「小林くんが歌うBBSを初めて聴いた人もいると思うけど……素晴らしい歌手だと思いませんか?」と語りかける。そのまま、まっすぐ前を見据えてこう告げた。
「こんな日が待ってるなんて思いもしなかったし、こんな出逢いがあるなんて思っていなかった。一生懸命生きてると何があるかわからない。みんなにとっても、これから素敵な奇跡を起こすバンドでいたいと思っています。すごく混沌とした世の中だけど、オーディエンスとこうやって繋がることができて、僕も明日頑張れそうな気がするし、みんなもそうであってほしい。これからも僕たちは演奏し続けていきます。」
そうして贈られた「LAY YOUR HANDS ON ME」は、一つひとつの音や歌詞が光を纏って降り注ぐような眩しさだった。川島が最後にレコーディングした楽曲である「LAY YOUR HANDS ON ME」には、やはり哀惜の思いが付随する。しかし、ステージから放たれていたのは、それを塗り替えるほどの希望。感極まった表情で会場を見つめる中野も、歌い切ったあと両手を広げて天を仰いだ小林も、この曲がここまでポジティブな光景を描くことは予想していなかったのではないだろうか。川島は歌詞に〈I’m here always, brighter than sunshine〉と刻んでいた。そう、彼がメロディや歌詞に託したものは、すべての楽曲とともに生き続けるのだ。
多幸感に満ちたライブのラストを飾ったのは、珠玉のバラード「STAY」。中野が操る電子音で始まり、小林の優しい歌声が乗ったあと、ふたりのドラムとゲストボーカルXAIも加わって壮大に広がっていく。背面のLEDビジョンに本日初めて川島の映像が流れ、合計“6人”の演奏でライブは締め括られた。
演奏を終え、握手とハグを交わした中野と小林の顔には笑顔が浮かんでいた。圧倒的な音楽とは裏腹に、楽器を置けば柔らかいムードに変貌するのもBOOM BOOM SATELLITESの魅力のひとつ。ステージの端まで歩いて何度も感謝を伝え、「また会いましょう!」と告げてふたりはステージを降りた。
終演後には、来年3月に新作EP『FADING』をリリースし、3月14日に東京・EX THEATER ROPPONGIで【FADING EP -A NEW BEGINNING-】と題したワンマンライブを開催するという嬉しいニュースが届けられた。過去と現在を繋ぎ、その先へと歩き出した「THE SPELLBOUND × BOOM BOOM SATELLITES」。彼らの描く、まだ見ぬ未来に注目だ。
Text by 後藤寛子
Photos by タカギユウスケ
◎セットリスト
【THE SPELLBOUND×BOOM BOOM SATELLITES presents 川島道行10周忌LIVE “FRONT CHAPTER”-DECADE- Tour 2026】
1. NINE
2. BACK ON MY FEET
3. MORNING AFTER
4. RISE AND FALL
5. MOMENT I COUNT
6. DIVE FOR YOU
7. Brand New Drive
8. A HUNDRED SUNS
9. EMBRACE
10. HELTER SKELTER
11. PILL
12. FOGBOUND
13. KICK IT OUT
14. DRESS LIKE AN ANGEL
15. LAY YOUR HANDS ON ME
16. DIG THE NEW BREED
17. STAY
◎公演情報
【THE SPELLBOUND × BOOM BOOM SATELLITES presents「FADING EP -A NEW BEGINNING-」】
2027年3月14日(日)開場17:00/開演18:00
東京・EX THEATER ROPPONGI
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