『ユイカ』、ワンマンライブ【Sanvitalia】のオフィシャルライブレポート到着

2026年9月29日 / 14:15

 『ユイカ』が、9月21日に東京国際フォーラム ホールAで活動5周年を記念したワンマンライブ【Sanvitalia】を開催した。

 本公演では『ユイカ』史上特大ボリュームとなる、Wアンコールを含む計27曲を紡いだ。小柄で、おどける姿は茶目っ気たっぷり。歌に向かえばどこまでもまっすぐ。そんな『ユイカ』の、日常と音楽が“隣り合わせ”にあった5年間が、ひとつに束ねられていた。

 これまでもワンマンライブやツアーでは、花の名を冠したタイトルが付けられてきた。MCで『ユイカ』も触れていたが、「太陽」の光に向かって咲くひまわりに似た小さな黄色い花、サンビタリアにちなんで、本公演を「Sanvitalia」と名付けたという。花言葉は「私を見つめて」――。

 アコースティックギターを抱え、歌声を重ねた「好きだから。」が、この夜に小さな火を灯した。ページを捲るように、あるいは時間が流れるように。曲に描かれた情景がみるみる膨らんでいき、バンドサウンドもそこに追随してスケールを広げていった。歌詞に描き出された、すれ違う男女の心の機微が、なんとも歯がゆい。人生、生きていれば、誰しもが通ったことのある“あの頃”の道が『ユイカ』の曲には存在する。「そばにいて。」の演奏中、眠っていた記憶の断片がふと浮かび上がってきたのだが、そんなふうに『ユイカ』の曲が聴き手の記憶とリンクしやすいのは、本人がインタビューでもたびたび語っているように、自身の実体験を、ごくりと飲み込める飾り気のない言葉に落とし込んでいるからだろう。

 曲やミュージック・ビデオといった完成形だけが『ユイカ』の作品ではないと実感するきっかけになったのが、「ひそかな願い。」だ。アコースティックギターを勢いよく鳴らしながら、その場を歩く。その顔には、甘い瞬間もあれば、ときに苛立ちも生まれる恋愛の、後者の感情が滲んでいた。一方、ハンドマイクを手にステージを上手から下手まで歩いた「わがまま。」で覗かせたのは、陽だまりの蕾がほころぶような、ふわりと柔らかな表情。言葉には表れない非言語の表現に目を向けると、ステージ上でこぼれる『ユイカ』の喜怒哀楽までもが、作品を丁寧に補完する要素のひとつに思えてくる。

 ラブコメ然とした展開が炸裂する「一途な女の子。」に、学校の教室を舞台にした「序章。」が続き、シャボン玉の中にまるっと包まれるような夢心地が訪れる。ここで本人のナレーションとともに、これまでの活動の軌跡をたどる映像が流れた。1stライブ【Agapanthus】で、初めて聴き手の存在を意識したこと。2ndライブ【Sweet alyssum】の最終公演、20歳の誕生日に素顔を初めて解禁したこと。そして、初の全国Zeppツアー【Tsukimisou】で、アーティストとして歩むことへの迷いや葛藤を抱えながらも、支えてくれる人たちがいるからこそステージで輝けるのだと気づいたこと。過去を振り返り、『ユイカ』による次の音声が流れた。

 「今度は私が貴方を照らしたい。貴方の世界が、未来がちょっとでも明るくなるように。全員私が今日、連れていく。まだみんなが知らない場所へ」

 偽りの自分を演じて心がショートしてしまう前に、自分を守るために作ったと言っても過言ではない「嘘」。冷淡な声色と鋭い眼差し、激しいギターストロークが心の深いところまで切り込んでくる。そこには、聴き手に素の自分を見せても受け入れてもらえるだろうか、という『ユイカ』自身の思いも重ねられているように解釈できる。本音を赤裸々に綴った、衝動的な「私のまま」でもエレキギターを掻き鳴らし、そのメッセージを足元へと叩きつける。思い返せば、これまでの『ユイカ』のイメージを反転させる野性的な曲を歌ったことも、素顔を公開したことも、結果的に『ユイカ』の音楽性をより柔軟で自由な方向へと向かわせた。サンビタリアの花言葉は「私を見つめて」。こうした攻めた曲には、ひとつの顔には収まらない『ユイカ』という表現者を、ありのまま見つめてほしいという思いも感じ取れる。

 星屑が瞬く暗がりの中、ピアノで弾き語ったのは、4人編成のストリングスを迎えた「桜想」。「イマジナリーフレンド」、「残酷になりますように」と目の前にはいない“あなた”へ向けた曲たちでの儚い想いを宿した『ユイカ』の歌声は、星にまで届かんばかりに強く、まっすぐだった。歌には真摯に向き合う一方で、お転婆な一面もここに極まれり。活発に動き回った「おくすり」の先、ステージを駆け回るあまり、曲の終わりに中央へと慌てて戻り、「センキュー!」と締めくくる「ローズヒップティー」。手拍子が沸き起こった「恋泥棒。」から、大きく両手で“SOS”をかたどった「さんかくゲーム」まで、実に愛らしい奔放さが弾ける。

 人生は選択の連続、という言葉が浮かんだのは、「私が選んだもの」を披露する前のMCだった。誰かが言っていたから、誰かがやっていたからを、自分の答えにはしない。どんな形であれ、自分自身が振り返ったときに誇れる選択をする。『ユイカ』は、自分軸で生きることを曲にしている。歌いながら観客に語りかけていると同時に、自分自身にも言い聞かせている。その二重の想いの強さこそが、作品そのものの光にもつながっているのではないか。

 「全員、私が今日連れていく」――この言葉の意味を紐解くように響いたのは、「紺色に憧れて」、「ラストティーン」に込められたメッセージだった。『ユイカ』にも憧れる存在があり、それに突き動かされてここまで歩んできた。今度は自らが走り続けるその姿で、誰かの夢を後押しようとしている。心を射抜く歌声はその証明だった。

 甘酸っぱいポップネスと歌声に心が浮き立つ「翠色に贈る」、「ぜーんぶまちがえてね!」と、最新EPの曲を届けたあとは、すべては捉え方次第なのだと気づかされる、『ユイカ』らしさ全開の「青春は見えない」。『ユイカ』が生み出してきたのは、恋愛をテーマにしたラブソングだが、「『Sanvitalia』のことを想って書いた曲」と紹介した未発表曲「何者でもなかった私だから」を聴いて、ふと思った。時計の針が進むにつれて、『ユイカ』にとってのラブソングの定義もまた、広がっていくだろう、と。

 2022年5月の活動休止を前に、受験や進路と向き合っていた当時の葛藤が閉じ込められた「17さいのうた。」から、再び登場したストリングスに、3人編成のホーンセクションが加わる。「生きましょうね」、「すないぱー。」でとてつもなく大きな愛を歌い、シンガロングが響いたWアンコールの「好きだから。」では、万感胸に迫った『ユイカ』の目から涙がこぼれた。

 愛を注ぎ、愛に満たされる。心を揺らしながら生き、等身大の人生の切り抜きを歌へと昇華させる。AIがどれだけ進化しても、この愛までは代われない。『ユイカ』にとって、歌はきっと人生そのものだ。さらに今、その歌が、誰かの人生を照らす橋渡しにもなっている。その確かな証を、27曲の先に見た。

Text by 小町碧音
Photo by 高田梓

◎公演情報
【Sanvitalia】
2026年9月21日(月)
東京・東京国際フォーラム ホールA
<セットリスト>
1. 好きだから。
2. そばにいて。
3. ひそかな願い。
4. わがまま。
5. 一途な女の子。
6. 序章。
7. 運命の人
8. 嘘
9. 私のまま
10. 桜想
11. イマジナリーフレンド
12. 残酷になりますように
13. おくすり
14. ローズヒップティー
15. 恋泥棒。
16. さんかくゲーム
17. 私が選んだもの
18. 紺色に憧れて
19. ラストティーン
20. 翠色に贈る
21. ぜーんぶまちがえてね!
22. 青春は見えない
23. 何者でもなかった私だから
アンコール
24. 17さいのうた。
25. 生きましょうね
26. すないぱー。
Wアンコール
27. 好きだから。


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