<ライブレポート>高岩遼、35歳最後の日に届けた特別な“SPECTACULAR”ショー 初ビルボードライブ公演も発表

2026年9月8日 / 17:00

 高岩遼が8月26日に渋谷クラブクアトロにて【RYO TAKAIWA LIVE 2026 – SPECTACULAR -】を開催した。この日は高岩35歳最後の日。上京後にジャズボーカリストのキャリアをスタートさせた銀座のクラブで複数の占い師に「35歳頃に死ぬ」と告げられた因縁の1年が終了する日に、ジャズ、ファンク、エレクトロニックミュージックなど一筋縄でいかない音楽の現在地を見せるという、エポックメイキングな“生誕前夜祭”となった。(曰く、大人の遊園地、ネバーランドたる“SPECTACULAR”にかける思いは8月1日にInstagramに投稿された声明文に詳しいのでご参照を)

 会場に入って驚いたのはフロアに敷かれたレッドカーペットとキーボード、そしてマイクスタンド。どうやらステージとフロアを行き来する構成のようだ。フロアの“ステージ”を囲むように開演を待つオーディエンスは酒を片手にリラックスして談笑している。そこに宇宙船“SPECTACULAR”の離陸を思わせるSEと高岩キャプテン(船長)のナレーションが流れる。この日ほどクアトロのミラーボールがいい仕事をしていると思うことはなかった。ライブというよりセレブのバースデーパーティーの感覚。映画やドラマでしか見たことはないが。開演時間から少し遅れてフロアから磯貝一樹(Gt)、大樋祐大(Ba)、澤村一平(Dr)、Yuka Kawabata(Tp)、三原万里子(Tb)、岡勇希(Sax)、Nao Kawamura(Cho)、Grace Aimi(Cho)、Sabulo(Cho / Gt)がステージに上がる。そして雷鳴のSEの中登場した高岩はえんじ色のマント姿でスポットライトを浴び、まず煙草に火をつけるという粋なオープニング。なんでこんなに絵になるんだ?と自然に顔が綻んでしまう。スターを背負う彼にいきなり特大の拍手と歓声が贈られ、ブルージーかつカンツォーネっぽい味わいのボーカル始まりの「Ain’t Nobody’s Business」。早速フロアに降り歌い、ピアノをワンフレーズ弾く姿にオーディエンスがどんどん吸引されていくのが分かる。エンディングを決めると「良かった、生きてたわ!」の一声に祝福と笑いが起きた。その勢いのままパーティーを盛り上げるようにWILD CHERRYの「Play That Funky Music」のカバーでステージの上も下もうねり始め、ギターソロとバトルするように高岩もショルダーキーで応戦する。かと思えば素早くフロアに降り、弾き語りで「なにもない」をグッとタメの効いたローボイスから熱い歌い上げまで、ラグタイムなピアノと呼応するように演奏していく。故郷宮古への郷愁と内発的な彼の夢への欲望がむき出しで表現されるのだが、バンドインする時のカタルシスもまた格別だった。

 ジャンルを横断することになんの違和感もないのは高岩のアプローチを知り尽くしたメンバーとオーディエンスに囲まれているからだろうが、シンプルなバラード「なにもない」からフュージョン/ファンクな最新曲「NIGHT-RIDER X」への移行もなんともスムーズ。むしろ同じタイプの曲が続かないのがスリリングで楽しいぐらいだ。フロアで高岩がピアノ&ボーカルを聴かせ、取り囲むオーディエンスが体を揺らしながらクラップし、シンセベースのローとスペーシーなシンセに加え、ホーン隊が爆発力を生み出す。ここにいる誰もが音楽の一部になっていく。そして第一部のラストは上裸にタトゥーが目を惹くKENTACATS(Modular Synth / FX)、さらにSAKIANDTHEMAFIA(Syn)も加わり、ソロ1stアルバム『10』から「Someday Looking Back Tonight」がこのバンドのアレンジで更新されていく。再び雷鳴の中、仁王立ちになった高岩。

 ここからはKENTACATS、新たに加わったSAKIANDTHEMAFIA、シンセとリズムマシーンを操る高岩の3人でINFのテクノ/ハウスなどエレクトロニックビートで文字通りクアトロをクラブに変容させていく。1人のアーティストが内包するジャンルの多岐さとしては常識破りだが、高岩遼という人間が見せる一編の映画として捉えればなんの齟齬もない。

 オンステージのまま80年代のプリンスを想起させる「スターダスト」で第二部がスタート。ロマンチックでキザな男を演じさせたら右に出るものはいないんじゃないか?そんな振る舞いからビートがテンポアップして、レアグルーヴィかつEDMのビルドの感覚も内包したダンスチューン、その名も「ROMANTIC」へ。そして「ちょっと懐かしい曲も」と告げたあと、イントロが流れると胸の前で手を握りしめるファンも出現したSANABAGUN.の「One Call~消せないテレフォンナンバー~」がスムーズに放たれる。ラップパートも切々と高岩流に語りおろし、ボーカルパートは深みのあるトーンで聴かせるのだった。

 思い切りロマンチックで熱い空気が醸成される中、この「SPECTACULAR」に向けた声明文を俳優のように語り始める高岩。途中少し怪しかったが、見事に呪いの35歳をもうすぐ終わらせて、新しい季節に突入することに感謝を述べる。そこで「今日はみんなにプレゼントを用意した!」と、ちょっと焦らしつつ発表されたのが11月の横浜、大阪でのビルボードライブだ。もう想像するだけでハマりすぎなシチュエーションにフロアのテンションは最高潮。そこに大阪公演で対バンするNAGAN SERVERが登場し、セルフボースティングと高岩との関係を小気味よくラップする。しかも曲は70年代のイカしたバンドCREATIONの「スピニング・トー・ホールド」。2人のラップに加え、ギターソロも火花を散らし、この先の約束にフロア全体が祝福ムードに包まれた。なんでもNAGAN SERVERとは週一でお茶をする仲だという2人。NAGAN SERVERの上京直後には、首謀者・高岩とともにレギュラーイベント【JAZZ LIFE】を仕掛けていたという。そんな彼らは、ビルボードライブのステージ立つことに感極まってハグしていた。ワンマンもいいが大阪の対バンも物語が生まれそうだ。

 「『SPECTACULAR』は一度だけです。すげえバンドじゃない? めちゃ楽しいわ!」の一言に満場が同意。本編ラストはシングル「ウィスキー・ブギー」だ。もう何回ステージとフロアを往復したか分からないが、「喉乾いたわ」とフロアを掻き分けバーカウンターにたどり着いた高岩はウィスキーのボトルをラッパ飲み(!)。中身がウィスキーか怪しいのは彼の足取りが全然変わらないからなのだが、ダンディズムとショーマンシップが120%盛り込まれた演出とバンドが醸すグルーヴに箱全体が乗っていた。

 さらに袖にはけることなく、アンコールとして原点であり頂点でもあるフランク・シナトラの「My Way」のカバーをピアノ弾き語りで届けるのだが、この曲を本気で聴かせることができる高岩遼というシンガーは破格だった。途中、ステージに戻りハンドマイクで歌い切ったあとはフロア最前列のオーディエンスとハイタッチやハグを交わしていた。ただ、それだけでは往年のジャズシンガーの佇まいだが、そこに仲間のパフォーマーも加わり、ジャズ箱から路上までを一気貫通させてしまうあたり、高岩遼のフルコースであり彼の歌い手人生をギュッと濃縮して見せたとも言える。

 ファンはもちろん、こんな夜が都市のどこかで繰り広げられているのなら初めてだとしても幸せになれそうだ。高岩遼の人間力にぜひ一度触れてみてほしい。

Text by 石角友香
Photos by Ryoma Kawakami

◎公演情報
【高岩遼 Billboard Live Tour】
2026年11月3日(火・祝)神奈川・ビルボードライブ横浜

【高岩遼 Billboard Live Tour with NAGAN SERVER Special Band】
2026月11月13日(金)大阪・ビルボードライブ大阪


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