<ライブレポート>3人体制初のシンフォニックコンサート "新しい夜明け"を告げるLE VELVETSの歌声

2026年6月26日 / 18:00

 “新生”LE VELVETSのシンフォニックコンサート【billboard classics LE VELVETS Premium Symphonic Concert 2026 ~AURORA~】が6月5日に京都・京都コンサートホール 大ホール、12日に東京・すみだトリフォニーホール 大ホールで開催された。両公演はそれぞれ、May J.、新妻聖子というLE VELVETSとしては初めて女性アーティストをゲストに迎え、行われた。その東京公演をレポートする。

 イタリア語で「夜明け」を意味する【AURORA(アウローラ)】と銘打たれた今回のビルボードクラシックス公演。それは、幾多の試練を乗り越え、表現者としてさらなる進化を遂げた宮原浩暢(バリトン)、日野真一郎(テノール)、佐藤隆紀(テノール)の3人による、文字通りの“新生LE VELVETS”の新たなる旅立ちを祝福する、壮大な音楽絵巻だった。

 思い返せば、彼らの歩みは常に挑戦の連続だった。クラシックの素養をベースにしながらも、ポップス、ロック、ミュージカルと、ジャンルの壁を軽やかに、しかし圧倒的な熱量で破壊し続けてきた彼ら。前回のビルボードクラシックス公演との大きな違いは、4人から3人となった新たな体制で臨むということだ。京都公演が大歓声のなか終演し、満を持して迎えたこの日の東京公演。チケットは一般発売と同時に瞬く間にソールドアウト。埋め尽くされた客席の熱気からは、誰もが彼らの“新しい夜明け”の目撃者になろうとする、強い意志のようなものが感じられた。

 ベルが鳴り、場内が静まり返る。指揮台に上がったのは、結成15周年のアニバーサリー公演以来の再共演となる柴田真郁。彼がタクトを静かに振り下ろした瞬間、東京フィルハーモニー交響楽団の重厚な響きが、会場の空気を一変させた。オープニングナンバーは「組曲<仮面舞踏会>よりワルツ」だ。これから始まるシンフォニックコンサートの優雅な薫りを、ホールいっぱいに充満させる。そしていよいよ3人が登場し、LE VELVETSのコンサートではおなじみのカンツォーネ2曲が披露された。まずはLE VELVETSの名刺代わりともいえるナンバー「Time To Say Goodbye」を、3人体制になって初めてのシンフォニックコンサートの一曲目に選んだ。果たしてどんな響きになるのか、客席は期待と少しの緊張が漂っていたが、3人が声を発した瞬間にまさに光が差すような恍惚感に包まれた。

 一人ひとりの歌声の粒立ちがよりクリアになって、3声のハーモニーがより濃厚に、ドラマティックな世界観を作り上げていた。続く「’O Sole Mio」で3人のハーモニーはますます威力を増す。バリトンの宮原は、声の最も深いところから感情を引き上げてくるような表現で、楽曲の土台を揺るぎなく支える。地を這うような低音域から中音域にかけての豊かなグラデーションは、LE VELVETSのサウンドに底光りする風格を与えている。テノールの日野は、高音域の透明感はそのままに、フレーズの呼吸感にこれまでとは異なる成熟の証を感じさせた。声の出どころが以前よりも深く、言葉ひとつひとつに物語を宿らせようとする意志が伝わってくる。テノールの佐藤は、声量とコントロールの均衡において驚くべき次元に達しており、豊かな進化を確かな実力で体現してみせた。「’O Sole Mio」での定番・佐藤のロングトーンがさく裂し、それはいつもにもまして長く、指揮の柴田とメンバーが時計を見て顔を見合わせるシーンも。LE VELVETSのコンサートは絶対に笑いも忘れない。

 エディット・ピアフの「水に流して」は、3人の繊細かつダイナミックな歌と、東京フィルの静かな佇まいから徐々にダイナミックな音像に変化していくサウンドが完全にシンクロし、壮大なシャンソンが完成した。続いて、ゲストの新妻聖子が深紅のベルベットのドレスを纏い登場。「佐藤君はあのロングトーンで『R-1グランプリ』に出た方がいい」と丁々発止のやりとりに客席は爆笑だ。開演前の楽屋で3人が“聖子先生”に、どこまでも伸びていく高音の出し方を教えてもらったといい、「『息を引きながら高音を出すのよ』と言われて、やってみたら三人とも明石家さんまさんの引き笑いみたいになって」(佐藤)と、爆笑トークが止まらない。親交のある4人の息はぴったりだ。

 新妻とメンバーのデュオは佐藤との『ミス・サイゴン』より「世界が終わる夜のように」からスタート。見つめ合いすぐに“世界”に入り、手を取り、新妻のクリスタルボイスと佐藤の深く豊かな歌とが重なる。宮原とは『アラジン』より「A Whole New World」を披露。宮原の芯のある太く甘い声と、新妻の空間をまるごと掌握するような圧倒的なエネルギーを感じる声がひとつになる。

 新妻が「『ムーラン・ルージュ ザ・ミュージカル!』のクリスチャンとダブる」と語る日野とは「Come What May」を披露。日野の甘く、優しい伸びやかなハイトーンボイスと新妻の美しいソプラノ、熱い歌が交差し、溶け合う。新妻は「三者三様の重めの愛を受け取りました(笑)」という言葉を残し、大きな拍手に送られステージを後にする。

 続いては佐藤がジャン・バルジャン役で出演したミュージカル『レ・ミゼラブル』から「民衆の歌」を披露。3人の力強いユニゾンは大迫力だ。後半は様々な声色を自在に操る日野の、ソプラノのようなハイトーンボイスが物語をより色濃くする。第1部ラストは「You Raise Me Up」。やわらかくせつない一本の弦の音から徐々に音が重なっていき、しっとりかつ力強い3人の歌が極上の世界観を描く。

 インターバルのあとはオーケストラによる「<フィガロの結婚>序曲」から。凛とした音が第2部への期待感を煽る。「帰れソレントへ」はハーモニーのバリエーションが楽しめ、オーケストラの深みのある音と交差し、ドラマティックな“声像”が出来上がる。そして歌詞に描かれている恋に破れた男性の失意の叫びが残酷なほど美しく映しだされる。ヴェルディ作曲のオペラ『La Traviata(椿姫)』からバリトンのソロ曲として有名な「プロヴァンスの海と陸」を披露。3人それぞれ異なる声の魅力を存分に感じさせてくれる。後半は一瞬アカペラになる部分があり、ハッとさせられた。

 ソロコーナーは宮原の『美女と野獣』より「愛せぬならば」から。ビーストの苦悩を歌い上げる宮原の声とオーケストラの音が混然一体となり生まれる迫力。クライマックスは息を飲む美しさだった。日野が選んだのは『ウィキッド』から「Defying Gravity」。スティーブン・シュワルツの名曲を、その伸びやかな声と豊かな表現力で高らかに歌い上げる。まさにクラシカルクロスオーバーを体現した一曲だ。佐藤は『ジキル&ハイド』から「時が来た」を披露した。豊かな声量、光沢を感じる美しい声、伸びるロングトーンは、まさに圧巻という言葉しか見つからない感動を運んできた。佐藤は『ジキル&ハイド』ジキル/ハイド役、『エリザベート』のフランツ・ヨーゼフ役で「第51回菊田一夫演劇賞」を受賞した。

 「明日への階段」(ミュージカル『ルドルフ~ザ・ラスト・キス~』より)は3人の力強い歌声の掛け合いに引き込まれ、その歌詞でオーディエンスの心を鼓舞する。「サークル・オブ・ライフ」(『ライオン・キング』より)では、3人の個性的で異質な声がジャストフィットし生まれる、唯一無二の世界観に、客席に感動の波紋が広がっていくのが伝わってくる。これがLE VELVETSのコンサートの醍醐味だ。本編ラストは「情熱大陸」。客席はメンバーと共に大きく手を振り、<ラララ>と大合唱が起こり、会場がひとつになった。

 アンコールに応え登場した3人が9月28日、29日に5年ぶりにビルボードライブ東京でライブを行うと発表。佐藤が「昔、ビルボードライブの前でストリートライブをやっていました。今回はちゃんと“中”で歌える」と語ると大きな拍手が贈られる。

 ラストはマスカーニの代表作『カヴァレリア・ルスティカーナ』より「間奏曲」にアヴェ・マリアの歌詞を乗せて披露。日野のハイトーンボーカルはどこまでも優しく、弦の繊細な音と、3人の歌からは、まるで包み込んでくれるような温もりが伝わってきて、心を浄化してくれるようだ。スタンディングオベーションが起こる。再び登場した新妻聖子の言葉がこの日のコンサートの全てを物語っている。「素晴らしい音楽と歌、そして素敵なお客様」――3人の新たな旅路を共に祝う、祝祭のようなコンサートだった。

text:田中久勝
photo:越智芽生

◎公演情報
【billboard classics LE VELVETS Premium Symphonic Concert 2026 ~AURORA~】

2026年6月5日(金)
京都・京都コンサートホール 大ホール
OPEN17:00/START18:00

2026年6月12日(金)
東京・すみだトリフォニーホール 大ホール
OPEN17:00/START18:00

出演:
LE VELVETS 宮原浩暢(バリトン)、日野真一郎(テノール)、佐藤隆紀(テノール)
ゲスト:【京都】May J.【東京】新妻聖子
指揮:柴田真郁
管弦楽:
【京都】大阪交響楽団
【東京】東京フィルハーモニー交響楽団
編曲監修:山下康介

<公演公式サイト>
https://billboard-cc.com/levelvets2026

主催・企画制作:ビルボードジャパン(阪神コンテンツリンク) 
協賛:【京都】大和ハウス工業株式会社
協力:【京都】ABCテレビ
後援:米国ビルボード

<セットリスト>
1.組曲《仮面舞踏会》よりワルツ
2.Time To Say Goodbye
3.’O Sole Mio
4.水に流して
5.世界が終わる夜のように
6.A Whole New World
7.【京都】美女と野獣【東京】Come What May
8.民衆の歌
9.You Raise Me Up
10.《フィガロの結婚》序曲
11.帰れソレントへ
12.プロヴァンスの海と陸
13.愛せぬならば
14.Defying Gravity
15.時が来た
16.明日への階段
17.サークル・オブ・ライフ
18.情熱大陸
EC.カヴァレリア・ルスティカーナより 間奏曲「アヴェ・マリア」

◎公演情報
【LE VELVETS】

2026年9月28日(月)29日(火)
東京・ビルボードライブ東京
1stステージ OPEN 14:00 / Start 15:00
2ndステージ OPEN 17:00 / Start 18:00


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