<ライブレポート>映秀。、寄り道しながら月へ辿り着いた夜――【Fly You to the Moon Tour】ファイナル公演

2026年5月25日 / 19:00

 シンガーソングライター映秀。のツアー【Fly You to the Moon Tour】のファイナル・東京公演が、5月23日に代官山UNITで開催された。

 今回のツアーは「いつも頑張りすぎている人、頑張っていることにも気づけない人たちを、寄り道しながら月まで連れて行く」ーーそんなコンセプトのもと作られた、いつもとは一味違ったもの。これまでのディスコグラフィから幅広くセレクトされた楽曲たちを躍動させながら、映秀。とオーディエンスは束の間の月旅行を楽しんだ。

 ライブのオープニングを飾ったのは本ツアーのテーマソングであり、今年1月に配信リリースされた「Fly You to the Moon」。月に行く夢を見たと語るモノローグに続いて、ステージに姿を現した映秀。がギター1本で歌い出すと、それまでざわざわとしていたフロアがしんと静まりかえり、彼の歌とギターに耳を傾ける。歌い終えて「ありがとう」と呟くと、堰を切ったように歓声と拍手が湧き上がった。さらに夜の情景をしっとりと歌う「youme」に、映秀。の顔にも笑みが溢れた「第弐ボタン」と2曲を弾き語りで届けると、再びモノローグを挟んで、ここからはバンドセットでのパフォーマンスが始まっていく。まずは「涙のキセキ」。刻まれるリズムにフロアからは自然と手拍子が起きる。明るいライトが会場を照らし、伸びやかなメロディがオーディエンスを旅へと導くように響く。

 そして「寄り道しながら月まで行く準備、できてますか!」という呼びかけとともにハンドマイクで歌う「ほどほどにぎゅっとして」へ。バンドの生み出すグルーヴに身体を躍動させながら歌う映秀。の声はさらに力強さを増し、そのバイブスがフロアにも伝播していく。さらに心地よいピアノの音とともにスタートした「ハ茶メ茶オ茶メ」でUNITは一気にブライトなムードに包まれていくのだった。

 「改めまして映秀。です!ツアーファイナル、東京!」。ここでベースの音をバックに話しかける映秀。は想像以上の人数に驚きながらも、フレンドリーにオーディエンスに語りかけるたびに、場内の空気が和んでいく。そしてバンドメンバーを紹介しつつ「本日の主役、あなた!」とオーディエンスをたたえると、「曲知らないとか、音楽の前では関係ないから、一緒に楽しんでいきましょう」と「My Friend」を歌い始める。鮮やかなファルセットとロングトーンが気持ちよく広がると、ここからさらにライブはギアを上げていく。コールアンドレスポンスを巻き起こした「誰より何でしょ 人より事よ」に「生命の証明」とギターサウンド(映秀。もエレキギターをプレイ)が炸裂するロックチューンを畳み掛けると、ファンキーなダンスナンバー「全部しようぜ」がフロアを巻き込んで熱狂に包まれる。手を上げ、身体を揺らし、飛び跳ね、感情を爆発させるオーディエンス。もちろん、ステージ上の映秀。は誰よりもジャンプし叫んでいる。

 かと思えば一転、モノローグを挟んで届けられるのは壮大なサウンドと切ないメロディが心に突き刺さるバラード「雨時雨」。さらに「残響」や「音ノ葉」といった楽曲たちが、まるで車窓(月への旅だから「船窓」か)を流れる景色のように、さまざまな感情を呼び起こしていく。どの曲でも映秀。の歌にはとんでもない質量の感情が宿り、力のこもったバンドの演奏とともにこちらの心にぐいぐいと入り込んでくるよう。曲のたびに違う景色へと連れていかれるような感覚は、確かに旅のようだ。

 そしてここからライブは後半に入っていく。タンバリンを叩きながら歌う「東京散歩」でまたしてもガラリと空気を変えてみせると、「脱せ」へ。バンドのコンビネーションも映秀。とオーディエンスのコンビネーションもばっちりハマって見事な一体感を生み出した。そんな「脱せ」を歌い終えて「楽しい!」「寄り道だからそれぞれの楽しみ方がある。いろいろな楽しみ方ができるのがライブのいいところ」と笑顔を見せる。そのまま、まるでフロアと会話するようにして歌い始めたのは「砂時計」。レイドバックした歌と演奏が心地よく会場を包み込んだ。

 フロア中でタオルが振られたアッパーチューン「星の国から」で会場中をひとつにすると、まっすぐなメッセージがパワフルなバンドサウンドに乗って伝わってくる「忘れ物」へ。一言一言にしっかりと体重が乗り、「いろいろなところに行けたと思うけど、寄り道してると時間はあっという間で、残すところ2曲となってしまいました」という映秀。の言葉にオーディエンスから「えー!」と声が飛ぶ。それを聞いて「もう一度聞きたいな」と同じ言葉を繰り返す茶目っ気を見せながら、「終わりたくないな」と本音をこぼす。それくらい、今回のツアーが充実していたということだろう。

 そんな思いも込めた歌声がいっそう優しく聞こえてくる「よるおきてあさねむる」をあたたかなムードのなか届けると、ラストは「失敗は間違いじゃない」。「月まで手が届くくらい、高く!」という映秀。の言葉に、オーディエンスが手を突き上げる。ライブが始まったときと比べると、明らかにフロアから放出されるエネルギーは増している。もちろんそんなエネルギーを引き出しているのは映秀。その人。彼の生み出す音楽のパワーが、この2時間弱でみんなをがらりと変えてしまったのだ。なるほど、「月に連れていく」とはこういうことか。そう実感させられる、ライブ本編の終わりだった。

 その後のアンコールでは、「『あれ、あの曲やってないじゃん』。心の声、聞こえてます」と、SNSでも話題の「寄り道」を披露。アンコールは撮影OKということで、幾つものスマホがステージに向けられる中歌う映秀。はどこまでも楽しげだ。その「寄り道」を歌い終えると、映秀。はおもむろに「フルマラソン、走り切ったんです」と2月にマラソンを完走したことを報告する。そうして歌われるのは、そこで受け取った応援の言葉に「お返ししなきゃ」と思って作ったというタイトル未定の新曲「それがいい」。いつもなら素直に受け取れないまっすぐに背中を押す言葉を正面から受け入れ自分の力に変えていく、とても清々しい曲だ。曲を終え、「来てくれて本当にありがとうございました! 本日、ソールドアウトです!」。そう言って感極まる映秀。にあたたかな拍手が送られる。そして8月1日に渋谷・Spotify O-Westでワンマンライブ「One Night Summer Live」を今年も開催することを発表して喝采を浴びながら、彼はずっと一緒に走ってきたマネージャーが今日をもって産休に入ることを伝えた。この日は映秀。にとって本当にいろいろな思いが重なったライブだったのだ。

 その思いは直接言葉にせずとも、そのパフォーマンスを見守り続けたオーディエンスにははっきりと伝わったことだろう。それくらい、この日の彼の歌はエモーショナルで人間くさかった。最後に、ライブの最初に弾き語りで歌った「Fly You to the Moon」を今度はバンド、そしてオーディエンスのみんなと一緒に歌う。最初とはまったく違うムードを帯びたこの曲が、この日のライブの成功を証明していた。

Text by 小川智宏
Photo by Kazma Kobayashi
  

◎公演情報
【Fly You to the Moon Tour】
2026年5月23日(土)
東京・代官山UNIT
<セットリスト>
01. Fly You to the Moon
02. youme
03. 第弐ボタン
04. 涙のキセキ
05. ほどほどにぎゅっとして
06. ハ茶メ茶オ茶メ
07. My Friend
08. 誰より何でしょ 人より事よ
09. 生命の証明
10. 全部しようぜ
11. 雨時雨
12. 残響
13. 音ノ葉
14. 東京散歩
15. 脱せ
16. 砂時計
17. 星の国から
18. 忘れ物
19. よるおきてあさねむる
20. 失敗は間違いじゃない

– ENCORE –
21. 寄り道
22. 新曲(タイトル未定)
23. Fly You to the Moon

【One Night Summer Live 2026 ~色祭~】
2026年8月1日(土)
OPEN 16:30 / START 17:00
東京・Spotify O-WEST


音楽ニュースMUSIC NEWS

宇多田ヒカル、『CDTVライブ!ライブ!』での「One Last Kiss」パフォーマンス映像を公開

J-POP2026年5月25日

 宇多田ヒカルが、TBS系『CDTVライブ!ライブ!』で披露した「One Last Kiss」のパフォーマンス映像を公開した。  今回公開された映像は、2026年5月11日に放送された『CDTVライブ!ライブ!』にて本楽曲を披露した際の模様 … 続きを読む

Billyrrom、メジャー1stシングル「Boogie」リリース&MV公開

J-POP2026年5月25日

 Billyrrom(ビリーロム)が、メジャー1stシングル「Boogie」をリリースし、同曲のミュージック・ビデオを公開した。  「Boogie」は、ファンクやディスコを基調にしたグルーヴィーなダンス・ポップトラック。印象的なベースライン … 続きを読む

Aぇ! group/草間リチャード敬太/西村拓哉が『anan』W表紙、“6人”と“『おそ松さん』6つ子”が入り乱れる

J-POP2026年5月25日

 Aぇ! group、草間リチャード敬太、西村拓哉が、2026年6月3日に発売となる『anan』2498号の通常版およびスペシャルエディションの表紙に登場する。  6月12日に公開となる映画『おそ松さん 人類クズ化計画!!!!!?』で、松野 … 続きを読む

永瀬廉(King & Prince)が『ヌメロ・トウキョウ』特装版カバー、2つの顔を楽しめる全12ページ特集

J-POP2026年5月25日

 永瀬廉(King & Prince)が、2026年5月28日に発売となる『ヌメロ・トウキョウ』7・8月合併号の本誌特集と特装版カバーに登場する。  「ディオール ビューティー」の“フレンド オブ ザ ハウス”を務める永瀬廉。本号で … 続きを読む

Travis Japanのトラベルドキュメンタリー、特別映像で七五三掛龍也/松田元太/松倉海斗に密着

J-POP2026年5月25日

 Travis Japanのトラベルドキュメンタリー『Travis Japan Summer Vacation!! ―7人のアメリカ旅―』の特別映像『Team B編』が公開された。  ディズニープラスにて独占配信中の本番組では、日々多忙を極 … 続きを読む

page top