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11月23日、ビルボードライブ横浜で大橋トリオ【TRIO Sextet Billboard Live Tour】を観た。直近のイベントも含めて“ジャズツアー”と自称する、大橋のルーツであるジャズに特化した特別なひととき。ビルボードライブとジャズとの相性は、言うまでもなく抜群だ。大橋トリオのライブの名物、観客の鳴らすバードコールによる鳥のさえずりが響く中、ツアーファイナルを飾る2ndステージの幕が開く。
テンポ・ルバートしたエレクトリックギターに合わせ、キーボードの前に座った大橋がそっと歌いだす、最初の瞬間からかっこいい。曲はジャズ・スタンダード「But Not For Me」だ。やがてブラシで叩くドラムとウッドベースがイン・テンポを刻み、バンドがスウィングしてくるのを大橋が笑顔で見守る。ピアノとサックスが加わってSextet=6人編成のバンドが揃うと、曲は「angle」へ。大橋は速い4ビートに乗ってエレクトリックピアノを弾き、パーカッションを叩き、鍵盤ハーモニカも吹く。メンバーを見て「もっともっと!」と言うように両手で煽る。呼吸を合わせて音で対話する、バンドの一体感が素晴らしい。
「こんばんは、大橋トリオです。ジャズツアー最終公演、最後まで楽しんでください」
「深海の恋」は、ラテンのグルーヴを感じるアップテンポのナンバー。大橋はアコースティックギターでセンターに立ち、アグレッシヴなドラムとエレクトリックベースがぐいぐい盛り上げる。サックスから持ち替えたフルートの音色が美しく、ジャズ心たっぷりのテクニカルなエレクトリックギターのソロが映える。続く「赤いフィグ」もアップテンポの4ビート、後ろを向いてドラムとベースに合図を出す大橋はまるでコンダクターのようだ。ピアニストがキーボードに持ち場を変えて、ご機嫌なソロを弾きまくる。それを観客に見せようと、サックスプレイヤーが後ろに下がってニコニコ見守る。一人一人の見せ場がたっぷりある、これぞジャズの醍醐味だ。
「これがライブ納めです、今年1年、ありがとうございました」
大橋の吹く鍵盤ハーモニカと、ピアノが奏でる抒情的なメロディに導かれたスローバラード「月の真ん中で」は、ジャズアレンジを得てよりロマンチックに美しく。ドラムもベースもサックスも、その楽器の出せる一番優しい音を出して曲を彩る。続く「EMERALD」はたっぷりと間を取ったピアノのイントロから、ゆったりとしたワルツのリズムに乗って穏やかに伸びやかに。と思ったら突然曲を中断して「お昼何食べた?」と、メンバー全員への質問タイムが始まるという謎展開へ突入する、シュールなユーモアが大橋トリオらしい。ちなみに大橋は、天ぷらを食する時につゆではなく絶対に塩だそうだ。再び演奏に戻ると曲はどんどん激しさを増し、胸を打つソプラノサックスのソロに続き、バンド全体が強烈にフォルティシモするクライマックスへ。ジャズならではのアドリブの躍動感と、メロディアスな歌ものポップスの魅力を合体させた、それは見事なアンサンブル。
「今年のライブは今日でおしまいになりますが、最後は元気に楽しく、踊りながら終わりましょう」
踊ろうじゃありませんか。大橋にうながされて全員がスタンディング、クラップで体を揺らしながらどっぷりディープなファンクナンバー「摩天楼バタフライ」へ。キーボードもサックスも、大人びたお洒落なジャズのタガを外して気迫あふれるソロで盛り上げる。ライブの掉尾を飾る1曲「THUNDERBIRD」も横乗りのファンキーなナンバーで、ドラムの挑発に応えてエレクトリックギターでジャジーなソロを弾く、大橋の優れたマルチプレイヤーぶりにあらためて惚れ惚れする。10分近くに及ぶ長尺演奏だが、6人全員が主役のバトンを受け継ぐからまったく緩まない。観客は大満足、最後は満場一致のスタンディングオベーションだ。
アンコールに応えて、一人でステージに戻ってきた大橋が何も言わずにピアノを弾き始める。2025年最後の1曲は「生まれた日」だ。感情をたっぷりと込めたピアノの音色に乗せて、柔らかく伸びやかな歌声が会場いっぱいに響き渡る。歌い終えて立ち上がり、2階席と1階席のすべての方向に丁寧に挨拶をする姿に送られる温かい拍手。観客席の中をハイタッチを交わしながら通り抜けてゆく、ラストシーンまでが絵になるライブ。結論、大橋トリオとビルボードライブはよく似合う。来年もまたここで観られたらどんなに幸せかと、思いはすでに未来へと飛んでいる。
Text:宮本英夫
Photo:板場俊
◎セットリスト
【大橋トリオ TRIO Sextet Billboard Live Tour】
2025年11月23日(日)2nd Stage
1. But Not For Me
2. angle
3. 深海の恋
4. 赤いフィグ
5. 月の真ん中で
6. EMERALD
7. 摩天楼バタフライ
8. THUNDERBIRD
9. 生まれた日
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