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僕が見たかった青空が6月15日、東京・Zepp DiverCity(TOKYO)にて【結成2周年記念 僕が観たかったワンマンライブ vol.2】を開催した。
今年も初夏を迎えて、僕が見たかった青空(通称:僕青)がお台場に帰ってきたーー。彼女たちにとって、Zepp DiverCity(TOKYO)は言わずと知れた“聖地”である。2023年6月、この会場でメンバー発表会を開催し、翌2024年6月には結成1周年を祝したステージを披露。その際には惜しくも当日券が発売されていたのだが、今年はしっかりとリベンジ達成。開催当日を待たずして、約1カ月前にチケットを完売させてみせた。
努力のバロメータではないが、報道関係者を前に行われたメンバー発表、フロアがオーディエンスになった1年目。そして2年目の記念日に、フロア全体がオーディエンスのサイリウムの“青色”で満杯になった。メンバー自身もたびたび口にしているが、本当にあと少しのきっかけで、人気に大きな火がつくはず。そう確信させてくれる、約120分のパフォーマンスだった。
金澤亜美&吉本此那の影ナレに始まり、八木仁愛の「この胸の鼓動と一緒に、最強で最高な23人で。そう、一緒に、青春を始めよう!」の青春宣誓。さらには、安納蒼衣によるスネアパフォーマンスと、眩しいくらいの明るさで幕を開けたステージ。1曲目に選ぶなら、デビュー曲「青空について考える」以外にないだろう。
大変勝手で、かつ身も蓋もない言い方だが、僕青がもっと“売れて”ほしいと思う理由のひとつに、この曲をさらに大きなスケールで浴びたいから、というのがある。それこそ、彼女たちがライバルに掲げる乃木坂46のダンスは、3列ほどの隊列を組んで、入れ替わりで最前列に出たメンバーが見せ場を作るスタイルが多い。一方、この曲における僕青は、青空に浮かぶ雲などを表現しているのだろう。そのとき、全員が異なるパーツを演じ、違った動きをするのだ。それらが組み合わさる光景は、今回のようなライブハウス以上に、スタンド席を伴うアリーナクラスで俯瞰してこそ、あっと声を上げてしまうものになるはず。
乃木坂46との対比でもう少しだけ語るならば、かつての「君の名は希望」を経て、この曲では〈希望とは何も諦めないこと〉と、希望の再解釈がなされたり、6曲目には「制服のマネキン」を披露したりと、同グループのことを知っていれば、ますます楽しめるシーンも。特に「制服のマネキン」は、リーダーの塩釜菜那が2コーラス目のAメロで、すべてを受け入れるかのように笑顔と慈愛の表情を見せるなど、“表情管理”も見事だったと付け加えておこう。
少し話が飛んだが、早回しのラップ詞や”wow…”がたびたび登場する筆致の歌詞、アップテンポなブラスポップ、腕をくるくると回す手技、八木による終盤のフェイク歌唱と、“これぞ秋元康劇場”と言わざるを得なかった2曲目「恋は倍速」、8月6日発売の新シングルにてメインメンバーを務める杉浦英恋が先陣を切り、キュートでキレのある振りが魅力の3曲目「青春の旅人よ」と続き、このブロックの最後には名曲「好きになりなさい」が披露された。
西森杏弥による「この想い、感謝、全部伝えるんで受け取ってください!」の前フリどおり、メンバーがフリースタイルで動き、フロアとの“爆レス祭”を繰り広げたこの時間。曲中には、全員が横一列となり、カメラに向かってファンサするシーンも。その模様が舞台上のスクリーンにも映し出されたのだが、ステージ上の本人たちと映像のどちらを目に焼き付ければよいのか。網膜がダース単位で必要になってくる幸せな時間が続く。さらにはテレビ収録のように、メンバーがはけたり、カメラがパンしたりすると、また別のメンバーがわぁっと登場する天国のような光景の連続で、曲名通り、軽率に好きにさせられてしまった。
8曲目「暗闇の哲学者」では、縦横約50cmほどの六角形をした20個のLEDパネルを、メンバーが一人ずつ盾のように持って踊る。ダンスをしながらも、それに固執しないこと。また、同パネルに歯車のイラストなどを映し、歌詞の情景描写をするなど、演出面での力の入れ込み具合がすごい。このパネルは次曲「真っ白に塗り直せ」でも活かされ、舞台前面・左右の270度に置く形で、また少しステージの見え方を変えてみせてくれた。単純にモニター的な役割もありつつ、メンバーを物理的に取り囲むことで、その空間そのものを歌詞の“やりきれない想い”に抗うための場所のようにも見せてくれる。
小道具の話で繋げるならば、メンバーがフロアに直筆メッセージ入りの紙飛行機を飛ばした「飛ばなかった紙飛行機」。こちらもまた舞台の使い方が見事で、メンバーが舞台袖にはけて紙飛行機を持ってきたのだが、その姿が一瞬だけ見えなくなる意外性もありつつ、あまりに自然な動きと隊列で、あたかも振り付けの一部のように見せていたのにも驚かされた。ここまでピックアップした以外にも、冒頭のスネアパフォーマンスに、長谷川稀未がこの後の「初めて好きになった人」で吹いたフルートなど、各々の特技を組み込むあたり、さながら総合演出。あるいは、ミュージカル的な側面もライブ全体に伺い知ることができた。
乃木坂46の公式ライバルとして生まれた僕青。彼女たちは生まれながらの境遇、そしてファンがかつて抱いていた夢を代わりに叶えようとする役割を担っている点で、グループとしてのアイデンティティや価値基準が、アイドルとしての成功。つまり、売れること=ある種の“ソト”にあると思われる。
だが、本当のアイデンティティとは、前述したメンバーの個性、そしてステージングや演出=“ウチ”にあるものであり、それはある程度のレベルまですでに備わっている。冒頭にも記したが、TV番組などのメディア、TikTokなどのSNS、あるいはこうしたライブの模様が映像として世に広まるなど……本当に、思わぬきっかけが生まれるだけで、彼女たちは一気に成功に近づけると確信させられた。本当に、あとは知られるだけなのだ。
そのほか、公演中には2年前にメンバーが当時書いていたという日記が読み上げられたのだが、岩本理瑚が大切な記念日を「5月15日」と書き間違えていて、出オチ感で感動を引っ込められてしまったり、須永心海がもはや“鉄板”なあの写真をまたしてもイジられたり。その頃の彼女は、アイドルとしての自信のなさから自分を認められず、結果的に爆泣きをしてマネージャーとヘアメイクを独占してしまったそうだが、そうした過去を笑い話にできるのも、2年間の時間が経ったからこそ。また今後、柳堀花怜がグループを牽引する副リーダーに就くことも明らかに。「僕青に愛を捧げること」が、同役職の務めとのことで、その言葉に大いに期待をしたい。
楽曲の話に戻って、ライブ後半には3名の“かわいい担当”による「キッシュ・ラブ」、椅子を使ったパフォーマンスの「昇降口で会えたら」などが披露された。そのままグループのキラーチューン「好きすぎてUp and down」から、“後ろの方まで見えてるぜ”と言わんばかりに、再びファンサを贈った「初めて好きになった人」までなだれこむと、本編最後には「炭酸のせいじゃない」を歌い上げる。
直前には、八木が「いつも応援してくださる方々の期待に応えきれていない部分もあるんだろうな」「だからこそ、それでも私たちの可能性を信じて、ついてきてくれて、応援してくれてありがとう」と、改めて感謝を伝えた。その言葉どおり、先ほどの「炭酸のせいじゃない」でも、それまで120%の力をぶつけていた。それがむしろ情熱的であり、なにかあと一歩を追いかける彼女たちらしさだとも、いまは思える。
実際、僕青に後ろを向く暇はない。杉浦もMCにて、いつまでもこの23人でいたいが、それはきっと難しいと前置きしつつ、「そのために、私は夢をどんどん叶えていきたい」「僕青は来年、アリーナを目指しております」と、堂々と宣言。公演の締めくくりには、塩釜も「こういう場所があるからこそ、僕青の22人はここに居続けてくれたんだなっていうのを改めて感じて、本当に感謝だなって思っています」「あの、こんなことをアイドルが言っていいのかわからないけど……私たちはオワコンじゃないんだ! まだまだこれからなんだ!」と、ここからの快進撃への想いを言葉にしてくれた。
「あの日 僕たちは泣いていた」「空色の水しぶき」を披露したアンコール。その直前の幕間には、メンバー全員からの一言、二言程度のメッセージが流された。これは本人たちから自虐的に語られたことだが、僕青には昨年、ライブ終盤から全員が3~4分ほど挨拶し、結果的にファンの足腰に“1時間耐久”の疲労を負わせてしまった過失がある。さすがに今年は反省し、代替手段を選んだとのこと。そんな心遣いに報いるべく、この記事の最後に今回の挨拶メッセージ23名分を書き起こしたため、読者各位にはそちらを楽しんでもらいたい。
来年は、この日の会場には収まらないほど、僕青が見せる青空をもっと広げてほしい。そして、そのときもメンバー誰ひとり欠けることなく健やかなまま、23色の笑顔を輝かせてくれることを願うばかりだ。
以下、メンバー全員からの挨拶メッセージ
青木宙帆:このステージに立っていられるのは間違いなく、今日まで一度でも想いを伝えてくれた、特別なあなたが居たからです。ありがとう。
秋田莉杏:何回も心が折れそうになった。でも、あなたのおかげで「私はこの場所で頑張りたい」。そう思うようになりました。あなたの存在が、私の頑張る意味になっています。ありがとう。
安納蒼衣:自分の脆い心や、涙に負けそうな瞬間がたくさんありました。でも、絶対に手を離さずにいてくれる大好きなみんなを思い出すたびに、自分をちょっと好きになれます。ありがとう。
伊藤ゆず:この1年間、あなたが変わらぬ愛を贈ってくれたから、どんなことも乗り越えられました。僕青に出会ってくれたすべての方々に、ありがとう。
今井優希:私がここに居る理由。それは、あなたが「頑張れ」って言ってくれたから。一人じゃ見られなかった景色をいま、私はあなたと一緒に見ているよ。あの日出会ってくれて、本当にありがとう。
岩本理瑚:私は約1年前、『SASUKEアイドル予選会』に出場してから、大きく人生が変わりました。全力で頑張れたのも『SASUKE』に出場できたのも、みんなの存在があったからです。本当に感謝しています。ありがとう。
金澤亜美:私には、宝物があります。それは僕青のメンバー、そしてそこにいるあなたと一緒に見てきた景色です。いつも、ありがとう。
木下藍:やればやるほど結果が出るテストとは違って「アイドルは難しいなぁ」と感じる1年でした。「大好き」っという想いを伝え続けてくれて、ありがとう。
工藤唯愛:私が昨年よりも大きな声で話せるようになったのは、みなさんが会いに来てくれたり、応援してくれるおかげです。ありがとう。
杉浦英恋:「みんなとこれからもず~っと一緒に居たいです!」なんて言葉は、きっとワガママなんだと思います。でも、それくらい大好きで、「人生を共にしたい」って心から思える人たちに出会うことができて、英恋、とっても幸せです! いつも本当にありがとう。
須永心海:この1年間で改めて感じたことは「僕青サイコー!」ってこと。「アイドルでいられるいまがいちばん楽しい」って、胸を張って言えます。こう思えるのも、きっと出会えたみんなのおかげです。ありがとう。
西森杏弥:田舎で生まれ育った私は、こんな世界があるなんて知りませんでした。私を受け入れてくれたすべての人たちに、ありがとう。
萩原心花:私はこの1年で、強さを身につけました。折れそうになった心も、横にいる僕青メンバーとあなたが強くしてくれました。ありがとう。
長谷川稀未:アイドルになるまでも、アイドルになってからも、いろんな遠回りをしてしまったけれど、きっとみんなとこの景色を見るためだったと思います。これからも自分らしく精一杯。私の人生に素敵な景色をプレゼントしてくれて、ありがとう。
早﨑すずき:あなたと過ごした時間、すべてが宝物。すずが毎日全力で楽しくアイドルができたのは、みなさんのおかげです。この1年間、かけがえのない素敵な思い出をたくさん作ってくれて、ありがとう。
宮腰友里亜:不安で、涙が出そうになった日もあったけど、僕青メンバーとあなたが居てくれたから、いまもこうして前を向いていられます。本当に、ありがとう。
持永真奈:この1年間、みーんなに支えられて、一歩踏み出す勇気を持つことができました。自分を変えるきっかけをくれたあなたに、ありがとう。
八重樫美伊咲:「できない」って思った瞬間も、「できるよ」って信じてくれたあなたがいたから、諦めずに前を向けた1年でした。ありがとう。
八木仁愛:22人の仲間と、あなたが居たから強くなれました。乗り越えられました。みんながいて、迎えられた2周年です。本当にありがとう。
柳堀花怜:いつも隣に居てくれるメンバー。23人を想い続けてくれるスタッフさん。支えてくれる家族。そして、なによりもあなたが居てこそ、私は僕青として存在することができます。ありがとう。
山口結杏:自分と向き合いながら活動した1年間。自分の強みを見つけられた1年間。あなたに自信をもらった1年間。私に、そしてこのグループに出会ってくれて、ありがとう。
吉本此那:夢を叶えるたびに一緒に喜んでくれる仲間と、一緒に喜んでくれるあなたが居る日々が、こんなにも楽しいことだと知りました。ありがとう。
塩釜菜那:みんなのことが、本当に心から大好き! うれし涙、悔し涙、たくさん泣いた1年間。どんなときも支えてくれた僕青メンバーと、ファンのみなさんに感謝の気持ちでいっぱいです。みんな、本当にありがとう。
Text by 一条皓太
◎公演情報
【結成2周年記念 僕が観たかったワンマンライブ vol.2】
2025年6月15日(日)
東京・Zepp DiverCity(TOKYO)
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