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4月29日、大阪・靭公園センターコート特設会場でFM COCOLOが主催する野外音楽イベント【靭公園 MUSIC FESTA FM COCOLO~風のハミング~】(以下、”風ハミ“)が開催され、ライブレポートが到着した。
本イベントは「都会の真ん中で、大人のための音楽祭」をコンセプトに、大阪のラジオ局・FM COCOLOでレギュラー番組を持つ根本 要(スターダスト☆レビュー)、KAN、馬場俊英を中心に、2011年からスタートしたスペシャルコラボレーションイベントで、今年13回目の開催を迎える。残念ながらKANは2023年11月に逝去したが、イベントの中心メンバーであった彼を永久欠番とし、彼の意思を継ぎつつ、これまでと変わらないステージを展開することに。”風ハミ“では毎年メンバーと縁のあるアーティストがスペシャルゲストとして登場するのが恒例で、今年は初の女性アーティストとして岸谷 香が、さらに藤巻亮太も出演と豪華な面々が顔をそろえた。
“風ハミ”はテニスのセンターコートが舞台となっていて、観客席が360度、ステージをぐるりと囲み、どこからでもステージを楽しめるようになっている。ほかにはないスペシャルなイベントとあって、チケットは早々に完売。気持ちの良い五月晴れとなった会場にはFM COCOLOのリスナーを中心に6,500人が集まり、1年に一度の饗宴を心待ちにしていた。
待ちに待った開演……の前に、イベントのホスト役である根本 要と馬場俊英による、イベント恒例の前説が会場内に流れる。「KANのエンタメスピリッツが込められたイベント。ステキなゲストもいるから、気持ちよく自由に楽しんで」(根本)。「KANさんも空の上から見守ってくれているはず。今日も楽しい1日にしましょう」(馬場)と開幕を告げると、FM COCOLOおなじみのジングルが鳴り響き、イベントがついにスタート!
まずは根本 要と馬場俊英による、“風ハミ”限定の年に一度限りのボーカルユニット・吉野天狗のステージから。“風ハミ”恒例の名曲をカバーするステージだが、今年は昭和がはじまって100年と年ということで、「ロビンソン/スピッツ」「時の流れに身をまかせ/テレサテン」「ヴィーナス/ショッキング·ブルー」など洋邦の名曲を次々と披露。赤いハッピ姿&関西弁を巧みに使う2人はラジオ番組さながらにたっぷりのダジャレを盛り込みつつリスナーを大いに笑わせるも、馬場は力強く優しく、根本はハスキーでいてまどろみのある歌声を響かせ、観客を魅了していく。個性の異なる2人だからこそ成り立つステージに観客は拍手喝采を送る。2人が向かい合って歌う姿、それを見つめる360度の観客。ずっと笑顔が絶えないステージに、誰もが破顔の表情を見せる。この光景もまた“風ハミ”ならではだろう。
吉野天狗のステージの最後。「ご存じのように、大切な友人を亡くしてしまいました。彼が大事にしていたイベントを継続させようと決めました。ダメなところは全部KANのせいにして♪ その思いを受け止めながら、今日は楽しんで」と、2人は改めてイベントに懸ける思いを語る。
「今年のゲストはソロ(ステージ)で楽しんでほしい」(馬場)、「僕は初対面だったけど、10年来の仲間だったんじゃないかと思えたくらいの人」(根本)と、次にステージに呼び込んだのが藤巻亮太。藤巻は初めての360度見渡せるステージに驚きつつ、「前日のリハーサルは雨でした。(快晴となった)今日のストーリーを感じてほしい」と急遽楽曲を変更し、爽やかな情景を思い起こさせる「雨上がり」を披露。アコギと足元のストンプボックスでリズムを取りつつ、エネルギッシュな歌声を響かせる。”風ハミ”にちなみ、次曲にセレクトしたのは今年3月にリリースした新アルバム『儚く脆いもの』から「愛の風」。さらりと耳に馴染む歌声、そっと隣に寄り添ってくれるような愛おしさに満ちた詞世界に心がほぐれていくのを感じる。
「雨が止み、風が吹き……雪が降るっていうのはどうでしょう?」、その言葉でピンときた観客から拍手が沸き起こったのが名曲「粉雪」。柔く優しいハイトーンボイス、浸透率の高いしなやかな歌声に聴き惚れていたのは観客だけではない。「男らしい弾き語り、感動しました!」(馬場)と、今度は根本、馬場、そして馬場バンドも加わったコラボステージへ。今年の“風ハミ”はゲストとのコラボがないかも……と思っていた観客へのまさかのサプライズに誰もが大喜び。「門出の歌。明日からの日々も素晴らしいものに」と「3月9日」へ。藤巻の歌声に2人がハモる瞬間はまさにここだけの極上の時間でしかなくて、誰もが噛みしめるようにステージを堪能した。
続いては馬場俊英のステージ。「短い時間だけど楽しんで。晴れてよかった♪」と、“風ハミ”きっての雨男·馬場は嬉しそうに笑みを浮かべ、「今日も君が好き」からふくよかで、じわりと心の隙間に入り込んでくる声を響かせる。次曲「君が僕の元気」は昨年リリースした42thシングル。ぐっと力が湧き出て、自然と口角も上がっちゃう、そんなエネルギッシュなサウンドに観客もコール&レスポンスで参加。もちろん、そこには馬場のファンだけでなく”風ハミ”ファンも当たり前のように一体感を作り上げていけちゃうのがこのイベントの素敵なところ。ライブではおなじみの「スーパーオーディナリー」では根本も加わり、馬場のソングライティングに惚れ惚れしつつも、馬場と根本、2人の互いの信頼から作り上げるハモりに、誰もが多幸感いっぱいの表情を見せている。日々の暮らしに寄り添う歌。この瞬間を愛おしそうに、大切に紡いでいきたいと渾身の歌声を聴かせる。
「”風ハミ”では初の女性ゲスト。どんな人を呼ぼうかと考えて……出来るだけ男前な、カッコイイ女性に。この人以上はいない! 普段家で聴く音楽をこの風のなかで聴いてほしい」と呼び込んだのは岸谷 香。「なるべく女らしく頑張ります♪ 」と、アコギを手に披露したのはプリンセスプリンセスの「GET CRAZY!」だ。ルーパーを使って音を重ね、たった一人でロックサウンドをかき鳴らし歌う”女前”な姿に、観客もハンズクラップで応えていく。「KANさんに会ったことはなかったけれど、いつか紹介してほしいと(根本と馬場)2人にずっとお願いしていた。皆さんとKANさんに心を込めて。新参者の女性アーティストだけどよろしく!」と本邦初公開という新曲「ボディガード」へ。”タフ”なボディガードではなく、母親がずっと子どもを見守っていく”へなちょこ”ボディーガードをイメージしたという楽曲。頼もしくて、でも優しくて。意気揚々とした姿を見せる彼女の姿に魅せられたのは同性だけでなく、360度を囲む観客みなが同じ気持ちだったはず。
岸谷とのコラボステージでは根本、馬場に加え、スターダスト☆レビューからサポートメンバーの添田啓二、岡崎昌幸が”ボーイズコーラス隊”として参加し、「M」を披露。長く愛されてきた珠玉の名曲ながら「男性のゴスペル隊でやるのは珍しい! 今日は貴重な機会かも♪」と岸谷自身もステージを大いに楽しんでいる。さらにスターダスト☆レビューでのバンド編成も加わり、「世界でいちばん熱い夏」では同級生コンビの岸谷&馬場が息の合ったパフォーマンスで観客を魅了♪ 不朽の名曲に気付けば会場は総立ちになるだけでなく、会場周辺のマンションの住人たちもベランダから大盛り上がりという、”風ハミ”名物のシーンも加わり、会場が一気にヒートアップ!
ステージは再び、根本と馬場によるステージへ。「僕たちはKANちゃんといろんなゲストを呼んで一生懸命(風ハミを)作ってきました。昨日も久しぶりにこの会場に来たけど、何か物足りない。心の中、夢の中には現れてくれるけど、目の前には現れてくれない。しょうがないんだけどね……。受け止められない人もいるけど、彼の音楽がずっと僕らを繋いでくれました。ここからはKANちゃんの曲。良かったら口ずさんで♪」(根本)。「すぐに歌ってもらえる曲を選んでみました。KANさんの曲は名曲しかない!」(馬場)と、KANの楽曲を根本と馬場で歌い紡いでいく。「言えずのILove You」、「まゆみ」、誰もが歌える楽曲の数々に、改めてKANのソングライティングやポップセンスの素晴らしさを実感。会場には「ILove KAN」のタオルを掲げた人の姿も多く、根本も「本当に面倒くさいヤツだったんだよ! だけど大好きなんだよ!」「今も最高の友人」と空を仰ぎながら歌う姿にKANがこのステージにいないことを実感し、胸が締め付けられる。それでも根本と馬場はKANとの思い出はどれも笑いが絶えないんだと、次から次に腹を抱えて笑ってしまうエピソードを教えてくれる。最後に観客と一緒に大きな声で歌い上げたのが「愛は勝つ」。「ちくしょう…2年以上経つのにさ……。アイツのこと大好きって言わない、すぐ図に乗るヤツだから。アイツと過ごせた時間は大切な時間。みんなも同じ気持ちでいてくれるはず」(根本)。すべての悲しみにさよならする必要なんてない。大好きな曲を誰もが力いっぱい、愛おしそうに歌うんだけど、涙がこぼれそうで目頭にぎゅっと力が入るし、哀しみに喉元がぐっと締め付けられる。空の上にいるKANさん、こんなにも楽しいステージになんでいないんだよ! と恨み節も言いたくなるくらいに、大きな声で歌う観客。涙を晴らすように燦々と会場を照らす太陽を想うと、360度のステージのどこかにKANさんがいたのかも……、そう思えた人もきっといたはず。
出演者それぞれのソロステージ、最後はスターダスト☆レビュー。根本は「晴れた空を見たら、みんなの声が響いていた。僕らのときもそうしてほしい。みんなで歌ってサウンドを作っていきたい」と、アカペラ曲「マシュ・ケ・ナダ」からライブスタート。ご機嫌なナンバーに誘われ、自然と手拍子もコール&レスポンスも沸き起こり「(観客に)ギャラ払わないと♪」と言わせるほどの一体感に。続く「今夜だけきっと」でも「槇原敬之君が出演してくれて、『世界に一つだけの花』で自然と大合唱が起きたときに“風ハミ”はやっぱりすごいと思った」と、観客とともに大合唱。当たり前だけれど、バンドとともに声を上げる彼の歌声はいつも以上に活き活きとしているし、もっともっと会場を盛り上げようとより一層伸びやかで、しなやかなハイトーンボイスが冴え渡る。
今年2月に新アルバム『星屑冒険王』を発表し、絶賛全国ツアー中の彼ら。盟友・馬場とともに作り上げた”なんとかなる♪”をテーマにした楽曲「ナントとカナルの物語」を共に歌い、馬場はステージに登場するたびに衣装を換えて登場するKANイズムを引き継ぐなど、”風ハミ”ならではのシーンをいくつも作り上げていく。
イベント終盤は「総力戦で盛り上げていきたい!」と再び、岸谷、藤巻を呼び込み、それぞれの代表曲をコラボする贅沢なステージに。観客が総立ちになるなか、「ボーイズ・オン・ザ・ラン」(馬場)、「南風」(藤巻)、「Diamonds<ダイアモンド>」(岸谷)、「愛の歌」(スタ☆レビ)と名曲を繋ぎ、ボーカルはもちろん、ギタープレイもコーラスもバンドプレイも、どれもこれも贅沢な時間に観客は歓喜の声を上げ続ける。幸せのラリーは観客からアーティストへと続き、360度見渡しても、誰も彼もが多幸感いっぱいの表情を見せている。
藤巻は「共演させてもらったことが光栄。お客さんも温かくて感動しました」と喜び、岸谷も「こんなにも音楽を楽しめるイベントはない。40年間でこんなに楽しいのなかったかも♪」と大はしゃぎ。
イベントの最後を締めるのは今年もやっぱり「靭のハミング」。根本は「KANが作ったこの曲。香ちゃんが歌詞やライブにかける想い、KANちゃんは天才だねって言ってくれた。アイツの才能はすごい! けど、こんなにも(音楽で)遊んでるやつもいない!」と、たっぷりの愛を込めた言葉を送る。「風のハミング」で歌う「靭のハミング」に同じ曲はこれまでにひとつもない。出演者はもちろん、観客もスタッフも変われば、その年だけの唯一無二の「靭のハミング」になる。ここでしか歌えない、ここだからこそ心に響く曲。いつもの場所で、いつものハミングを歌い、2025年の【靭公園 MUSIC FESTA FM COCOLO~風のハミング~】が終幕。
「来年も楽しみに待ってます! 来年まで元気でいてください! またここでみんなに会えることを楽しみにしています!」、ステージの最後、根本が声を大にして叫んだこの言葉。2026年もまた【風のハミング】で根本要、スターダスト☆レビュー、馬場俊英、そして360度を囲む観客やスペシャルなゲストたちに会えることを楽しみにしたい。
なお、この日の貴重なステージ音源はFM COCOLOの番組『FM COCOLO Wabi-Sabiレディオ·ショー』で5月10日に放送される。
TEXT:黒田奈保子
PHOTO:田浦ボン/キシノユイ
◎番組情報
FM COCOLO『FM COCOLO Wabi-Sabiレディオ·ショー』
2025年5月10日(土)18:00~19:00
https://cocolo.jp/site/blog/6180
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