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lynch.が20周年アルバム『GREEDY DEAD SOULS / UNDERNEATH THE SKIN』を引っ提げて開催している【TOUR’25「UNDERNEATH THE GREED」】のツアー初日となる新横浜NEW SIDE BEACH!!公演のライブレポートが到着した。
去る4月18日、新横浜NEW SIDE BEACH!!にて、lynch.の新たなツアーが開幕を迎えた。“UNDERNEATH THE GREED”と銘打たれたこのツアーは、結成20周年を記念して多角的に展開されている『lynch. 20th ANNIVERSARY PROJECT』の第5弾にあたるもの。同時に、4月30日に発売を控えている20周年アルバム『GREEDY DEAD SOULS / UNDERNEATH THE SKIN』に伴うものでもある。
その表題からも察することができるように、この作品は彼らが2005年4月に自主リリースした1stアルバム『greedy dead souls』、同年11月に発売された5曲入りシングル『underneath the skin』の全収録曲の再構築を軸とするものだ。当時は小文字表記だった両作品のタイトルが大文字表記に変更されていること自体に深い意味はないものと思われるが、「20年前の楽曲群の本質を保ちながら、今の5人でアップデートする」というこの作品の制作意図と重なるニュアンスが感じられなくもない。
ただ、この作品の発売日が制作上の事情により、当初予定されていた4月16日からその2週間後へと変更になったことで、この日を含むツアー序盤の公演の意味合いに少しばかり違いが生じることになった。当初の予定通りの発売日にリリースされていれば、このツアーはファンにとって「現在形にリニューアルされた往年の楽曲群をある程度聴き込んだうえで臨むもの」になっていたわけだが、結果的には同作についてのヒントが提示される機会となったのだ。しかし結論からいえば、そうした理由によりライブの熱が損なわれることは一切なく、超満員のフロアはライブハウスならではの興奮と親密さに包まれていた。なにしろステージの終盤、葉月(Vo)の口からは「20年前の俺たち、間違ってなかったろ?」「メチャクチャいい初日だった、マジで!」といった言葉が漏れたほどである。
開場時からBGMとして流れていたNINE INCH NAILSの楽曲が止み、会場内が暗転したのは開演定刻の午後7時ちょうどのことだった。それから彼らがステージから去るまでの約110分間の具体的な経過については、この場ではお伝えせずにおきたい。これから各地の会場に足を運ぶ人たちのためにも、いわゆるネタバレを避けたいからだ。もちろんlynch.は毎晩同じセットリストで公演を重ねていくようなバンドではないが、オーディエンスが頭の中で想像図を描き切れないままライブと向き合うことを彼ら自身も願っているに違いない。
そうした理由から具体的な演奏曲目、曲順については触れずにおくが、当然ながらその演奏メニューは、20年前の2作品からの楽曲を軸としながら構成されていた。当時、『greedy dead souls』と『underneath the skin』はどちらも早々に廃盤となり、再販されることもなく、ずっと入手不能となっていた。ただ、それでも当時の楽曲群は完全に葬り去られてしまったわけではなく、そのうちいくつかは彼らのライブに欠かせないパズルのピースとして生き残り続けてきた。いわばバンドと足並みを揃えながら、楽曲も進化/深化を重ねてきたのだ。
なにしろ始動当初のlynch.は葉月と玲央(Gt)、晁直(Dr)の3人という変則的な体制にあり、サポート・ベーシストを起用しながら活動していた。のちに悠介(Gt)、明徳(Ba)を迎えた時点で、彼らはようやくlynch.として完全体になったといえる。そして今月末にリリースされる前述の最新作においても、彼らが目指したのは各楽曲を新たな形へと改造することではなく、あくまで今現在のlynch.としてストレートに表現することだった。この夜のライブ・パフォーマンスのあり方も、それを裏付けていたといえる。
興味深かったのは、初期からずっと長きにわたり演奏され続けてきたことで特別な存在感をまとうようになった楽曲が多々あるばかりでなく、ステージ上で披露される機会がほとんどなかったからこそ希少価値的な魅力を増してきた楽曲もあるということだ。lynch.は始動当初から揺るぎないものを持ちつつも、2011年のメジャー・デビューを挟みながら、彼らなりの音楽的変遷を経てきた。そうした過程の中で、ある時点での方向性にそぐわず一時的に封印せざるを得なかった楽曲というのもあったはずだし、逆にその封印を解くような局面もあったはずだ。
しかしこの夜のライブから感じられたのは、今現在の彼らには、クローゼットの奥にしまい込む必要のあるものは皆無なのだということだった。それは単純に「どんな曲だろうと、この5人でやればlynch.然としたものになる」ということでもあるが、そこで重要なのは、いわば彼らが“lynch.らしさ”を確立させる以前の楽曲さえも、そのように聴こえるという事実だろう。少しばかり具体的に言うならば、彼らの初期楽曲の中には直球型でほとんど捻りのないハードコア的なもの、90年代的なギター・リフのあり方や2000年代前半なりの時代性を感じさせるニューメタル的な感触のものもあれば、いわゆるV系/名古屋系的な空気感をまとったものもある。そうしたギャップを埋めているのが烈しさと妖艶さを併せ持った葉月の歌声だったわけだが、以降ふたつのディケイドの中で自分たちなりの洗練の過程を経てきた現在の彼らは、20年という時差をも埋めてしまっているのだ。あくまで20年前の楽曲群を中心としつつも、随所にメジャー・デビュー以降の楽曲が散りばめられた演奏プラグラムが進んでいく中で、違和感をおぼえる瞬間が皆無だったのもそれゆえだろう。
そうした彼らの成熟のあり方を象徴していたのが「GOD ONLY KNOWS」だった。この楽曲は『GREEDY DEAD SOULS / UNDERNEATH THE SKIN』に収録されている唯一の未発表曲なのだが、完全な新曲というわけではない。2008年の時点ですでにその原型が生まれていながらも、以降のアルバムには似つかわしい置き場所がみつからず、世に出ぬままになっていたものだ。つまりインディーズ期の代表曲の数々と同じ頃に生まれていたアイディアが今現在のlynch.として新たに書き下ろされて体現されたものであり、まさに今回のリリース作品のコンセプトと合致するものだといえる。そして、初期衝動にも似たものと、年輪を重ねてきたからこその説得力が共存するこの楽曲が、この夜は二度にわたり披露されることになった。完全ソールドアウトとなったこの夜、フロアを埋め尽くしていたオーディエンスは、この“GOD ONLY KNOWS”が特別な楽曲になった瞬間の目撃者となったといえるだろう。
この刺激的なツアーはこの先、全国各地のライブハウスを巡演しながら、6月20日まで続いていく。それ以降のことについては「神のみぞ知る」と言いたいところだが、アンコール時に葉月の口から、「lynch. 20th ANNIVERSARY PROJECT」の第6弾、第7弾の概要が発表された。その詳細については下記を参照して欲しいところだが、こうして惜しみなく情報が明かされるということは、その先にはさらなる何かが待ち構えているということでもあるだろう。記念すべき節目を迎えているlynch.の“今”を、一瞬たりとも見逃さずにおきたいところである。
Text:増田勇一
◎公演情報
【TOUR’25「UNDERNEATH THE GREED」】※終了分は割愛
2025年5月15日(木)、16日(金)北海道・札幌Bessie Hall
2025年5月18日(日)青森・青森Quarter
2025年5月20日(火)宮城・仙台darwin
2025年5月30日(金)福岡・福岡DRUM Be-1
2025年5月31日(土)熊本・熊本B.9 V1
2025年6月5日(木)愛知・名古屋ElectricLadyLand
2025年6月7日(土)高知・高知X-pt.
2025年6月8日(日)岡山・岡山IMAGE
2025年6月13日(金)長野・長野CLUB JUNK BOX
2025年6月15日(日)新潟・新潟GOLDEN PIGS RED STAGE
2025年6月20日(金)東京・Spotify O-EAST
オールスタンディング 7,000円(tax in./D別)
-未就学児入場不可
-公演が中止・延期となった場合以外の払い戻しは原則行いません
-チケット忘れ・紛失の場合、いかなる理由であってもご入場をお断りします(再発行不可)
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