<ライブレポート>ビルボードクラシックスフェスティバル2025終演 大竹しのぶ/小柳ゆき/サンプラザ中野くん/一青窈/松崎しげる/未唯mieが名曲を未来へ歌い継ぐ

2025年2月22日 / 18:00

 今年でシリーズ10年目を迎える【Daiwa House presents billboard classics festival 2025】が、2月12日に東京、14日に兵庫で開催された。フェスティバルに欠かせない存在になった松崎しげる、小柳ゆき、2回目の出演となる一青窈(兵庫公演)に加え、今年は未唯mie、サンプラザ中野くん、大竹しのぶ(東京公演)ら、初登場のメンバーも加わって一層豪華にパワーアップ。すみだトリフォニーホール大ホール、兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホールでの2公演を、ダブルでレポートしよう。

 先陣を切るのはサンプラザ中野くん。ロックバンド、爆風スランプのボーカリストで、歌手として40年以上の活動歴のなかでフルオーケストラで歌うのはほぼ初めてにもかかわらず、代表曲「Runner」をエネルギッシュに歌い上げる姿は堂々たるもの。指揮者の齋藤友香理、東京交響楽団(東京)、大阪交響楽団(兵庫)、ソウルバードクワイアが作る壮麗でスピード感溢れる音の中で、先陣の重責を見事に果たしてくれた。

 続いては、デビュー25周年を迎えた小柳ゆき。代表曲「be alive」を歌う姿にはベテランの貫禄が漂うが、歌声はあの頃と変わらずにみずみずしくパワフル。ワンコーラスを歌い終えて客席から拍手が起きたのも、その歌声の力強さが引き起こした自然な反応だろう。安定感は抜群だ。

 三番手は、東京公演では女優の大竹しのぶが務める。「あなたと生きたい」はレモ・ジャゾット作曲、通称「アルビノーニのアダージョ」に作詞家の松本隆が詞をつけたもの。舞台女優ならでは圧巻の表現力と朗々たる歌唱で、彼女をボーカリストとは思っていなかったかもしれない人も、1曲で納得させる素晴らしいパフォーマンス。

 兵庫公演で三番手をつとめたのは一青窈。登場するやいなやステージに座り込み、2002年のデビュー・ヒット曲「もらい泣き」を歌いながら、立ち上がって右へ左へ。客席に手拍子を求めたり、オーケストラの真ん中に飛び込んで歌ったり。天真爛漫なパフォーマンスで、満員の観客を魅了する。

 松崎しげるの歌については、もはや説明はいらないだろう。ダンディな燕尾服に身を包み、ラテン・フィーリングの香る「ただそれだけ」を、フルオーケストラのハーモニーと共に歌い上げる。大人の落ち着き、優雅な身のこなし、衰えを知らぬ声量、エンディングのハイトーンに至るまで完璧なボーカル。圧巻だ。

 続いて登場した未唯mieが、1976年のピンク・レディーのデビュー曲「ペッパー警部」を歌い出すと、会場内の空気が一気に変わった。時代を作ったヒット曲は時を超える。未唯mie自身は踊らないものの、心の中であの振り付けを真似していた観客は多かったのではないだろうか。華やかな盛り上がりの中、ラストの「ペッパー警部よ!」のセリフもばっちり決まった。

 「舞台の袖で『ペッパー警部』を聴きながら、大竹しのぶはずっと踊っていました(笑)。」

 出演メンバーが揃ったトークコーナー、東京公演では松崎しげるが大竹しのぶをいじったり、兵庫公演では一青窈がオーケストラに飛び込んで歌うシーンを褒めて、一青窈が「一緒に作り上げております!」と応えたりする場面があるなど、和気あいあいのムードでショーは進む。

 ここからはそれぞれが2曲ずつ披露するソロコーナーへ。まずは小柳ゆきが、アニメ『呪術廻戦』のオープニング曲「廻廻奇譚」のカバーを披露して観客を驚かせた。2020年代の若者世代の神曲として知られるこの曲、スタッフのリクエストで歌うことにしたそうだが、複雑なメロディと猛烈なスピードを持つ難曲をさらりと歌いこなす、スキルの高さはさすがの一言。もう1曲、代表曲「あなたのキスを数えましょう~You were mine~」を心を込めて歌い上げる、感情表現の豊かさも素晴らしい。やはり彼女はこのフェスティバルに欠かせない花だ。

 サンプラザ中野くんは、公開中の映画のタイトル曲でもあるバラード「大きな玉ねぎの下で」と、アップテンポで疾走する「旅人よ~The Longest Journey」を披露。後者は1996年、有吉弘行が所属していたコンビ猿岩石への応援歌としてヒットしたのを覚えている人も多いだろう。ロックシンガーらしいまっすぐな熱唱をマイクにぶつけ、オーケストラの豊かな音がそれを包み込む。兵庫公演では「55年間、阪神タイガースのファンです!」と叫び、「六甲おろし」を歌うサプライズもあった。茶目っ気を散りばめながらも歌はしっかり聴かせる、愛され男の素敵なパフォーマンス。

 休憩時間を経た第二部は、未唯mieの華やかなステージからスタート。レナード・コーエンのカバー「ハレルヤ」を選んだ理由は、平和と幸せを祈ってのことで、兵庫公演では30年前の阪神淡路大震災に触れて「鎮魂の思いも込めました」と語る言葉が胸に沁みる。続く「ピンク・レディー・メドレー」は元気ハツラツ、「サウスポー」「渚のシンドバッド」「UFO」と、満場の手拍子と共にぐんぐん盛り上がる。兵庫公演では指揮者の齋藤友香理も「UFO」のあの振り付けをやってみせ、あとで一青窈に「そんな指揮者初めて見た(笑)」と突っ込まれていた。なんていい雰囲気だろう。

 東京公演は、ここで大竹しのぶが登場。「『UFO』でまた踊っちゃいました」とおどけながらも、美空ひばりが歌った反戦の歌「一本の鉛筆」と、自身が主演した舞台『ピアフ』や2016年の『NHK紅白歌合戦』でも歌唱した「愛の讃歌」を、ひばりやピアフが憑依したかのように朗々と歌い上げる。「歌手ではないので」と言いながらも、メッセージを伝える歌手としての表現力は本物だ。舞台以外ではほとんど歌わない人なので、このフェスティバルで大竹しのぶを聴けた人は本当にラッキーだ。

 兵庫公演に登場した一青窈は、「耳をすます」と「ハナミズキ」の2曲を披露。トークではSNSでのヘイト問題や、世界で起きている戦争の問題について積極的に語り、「他人の幸せを願う気持ちが伝染していってほしい」と語る。歌手より前に人間であるというメッセージ性に富む歌詞と、自由奔放で伸びやかな歌声が作る世界観はとても温かく、そして強い。「ハナミズキ」は、DAM平成カラオケランキングで1位の曲だそうだ。令和の時代も、変わらずに歌い継がれるに違いない。

 松崎しげるが舞台に現れると、それはフェスティバルがクライマックスを迎える合図。「もしもピアノが弾けたなら」は、50年来の親友で、昨年亡くなった西田敏行への鎮魂歌と共に、「名曲を歌い継ぐ」という生涯現役歌手の使命を表すものだろう。西田との思い出を、時にユーモアを交えて語り、歌う姿に、歌うために生きる男の人生が重なる。いつも以上の熱唱が聴けた「愛のメモリー」が、生も死も超えた愛の讃歌であることに、今さらながら気づかされた。名曲はいつ聴いても新しく、色あせない。

 万雷の拍手を浴び、ステージの上に出演者が勢揃いする。フィナーレを飾る「スペシャルコラボ」の1曲は昭和の名曲、坂本九が歌った「見上げてごらん夜の星を」だ。5人のハーモニー、クワイヤ、オーケストラ、観客が思いを一つにして“ささやかな幸せ”を願う美しい光景。歌い終えても鳴りやまない拍手に応え、松崎しげるが「またね!」と再会の約束をする。

 10年を超えて11年目へ、【Daiwa House presents billboard classics festival】は毎回、新たなメンバーを迎えながら進化していくはずだ。次回もここで会いましょうと、すべての観客に呼びかけたくなる素敵な夜だった。

Text by 宮本英夫
Photo by 石阪大輔、渡邉一生

◎セットリスト
<第1部>
M1 Runner
M2 be alive
M3a あなたと生きたい(東京)
M3b もらい泣き(兵庫)
M4 ただそれだけ
M5 ペッパー警部
M6 廻廻奇譚
M7 あなたのキスを数えましょう~You were mine~
M8 大きな玉ねぎの下で
M9 旅人よ~The Longest Journey
 
<第2部>
M10 Hallelujah《ハレルヤ》
M11 ピンク・レディー・メドレー(サウスポー~渚のシンドバット~UFO)
M12a 一本の鉛筆(東京)
M12b 耳をすます(兵庫)
M13a 愛の讃歌(東京)
M13b ハナミズキ(兵庫)
M14 もしもピアノが弾けたなら
M15 愛のメモリー
M16 見上げてごらん夜の星を

◎公演情報 ※終演
【Daiwa House presents billboard classics festival 2025】
2024年2月12日(水)東京・すみだトリフォニーホール 大ホール OPEN 17:30/START 18:30
2024年2月14日(金)兵庫・兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール OPEN 17:45/START 18:30
 
出演:大竹しのぶ(東京公演のみ)、小柳ゆき、サンプラザ中野くん、一青窈(兵庫公演のみ)、松崎しげる、未唯mie
指揮:齋藤友香理
管弦楽:
【東京】東京交響楽団
【兵庫】大阪交響楽団
<主催・企画制作>ビルボードジャパン(阪神コンテンツリンク)
<特別協賛>大和ハウス工業株式会社
<後援>米国ビルボード

公演公式HP:https://www.billboard-cc.com/archive/bbcf2025


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