mekakushe×長瀬有花、【Collaboration Live"世界が美しいからだよ"】のオフィシャルレポートが到着

2025年2月12日 / 10:05

 mekakusheと長瀬有花によるEP『世界が美しいからだよ』のリリースを記念した【Collaboration Live”世界が美しいからだよ”】が、2月7日にSHIBUYA PLEASURE PLEASUREで行われた。

 このコラボが始動したのが昨年の9月。mekakusheが長瀬に楽曲提供(「宇宙遊泳」「やがてクラシック」)をするなど、制作の面で接点があったふたりがボーカルを分け合う形で作品を作ることを発表。「美しさを見出す琴線に共通する部分がある」というのは長瀬のコメントだが、ふたりが近しい感性を持っていることは、それぞれのリスナーも感じていたのではないだろうか。夢と現実(そしてデジタルと生音)の狭間を行き来するような楽曲と、透明感のあるボーカルにはどこか重なるところがあるように思う。

 果たして「さみしい惑星」を皮切りに、3曲のシングルをリリース。年が明けてから発表されたのが7曲入りのEP『世界が美しいからだよ』である(アレンジはシナリオアートのハヤシコウスケ、ミュージック・ビデオ及びジャケットのイラストは飴日和が担当)。作品のテーマは「終末」。ポエトリーとポップソングが交互に入る構成で、「世界滅亡、最後の1週間」が描かれる。そうした物語性の強いEPを具現化するように、もちろんこの日のライブもコンセプチュアルなものになっていた。

 ステージ中央にはレースのかかったベッドが置かれ、mekakusheと長瀬はそこでくつろぎながら歌を披露する。最後までこのライブの象徴はこのベッドにあり、ここが宇宙の中心なのだ。プライベートな空間に迷い込んだような気分、それと同時に、ふたりが作るバーチャルな世界に連れてこられたような雰囲気もある。なんとも不思議なセットである。ちなみに演者は皆白い衣装で統一されており、それもまた現実離れした空気を助長していたように思う。

 サポートメンバーは中央のベッドを挟み、向かって左にキーボードの亜万菜とドラムの小山田和正、右にベースの奥田一馬とギターの髙橋柚一郎が並ぶ。奥田以外は一昨年に行われたmekakusheの初ワンマンライブ【Hug Light】(表参道WALL&WALL)と同様の顔ぶれである。また、奥田も「恋の未明」や「愛のわり方」等、近頃のmekakusheの作品に複数参加していることから、彼女のファンにはお馴染みの布陣だったと言えるだろう。

 ライブは静かに始まった。灯りのない暗闇の中から、髙橋柚一郎が爪弾くギターの旋律が浮かんでくる。「日曜日」のイントロだ。耳をすませば聴こえてくるような音量、繊細で優しいフレーズがしっとりと会場に広がっていく。いつまでも聴いていたい、永遠に終わらない日曜日が始まったのだと思った。

 原曲はmekakusheのアルバム『あこがれ』(2023)に収録されている。つまりこの日のライブのために書かれた曲ではないのだが、歌詞はまるで「世界が美しいからだよ」のプロローグのように聴こえる。<あした世界が終わるのに洗濯物をたたむ><あした世界が終わるのにきれいにマニキュアをぬる><あした世界が終わるのにあなたと昼寝をする>……世界が終わるその日もきっと、こんな風に日常の延長なのだろう。mekakusheと長瀬はベッドに腰掛け、交互にフレーズを歌っていく。いつの間にか亜万菜の鍵盤が合流しており、気づけばバンドメンバーたちのささやかな演奏がふたりのボーカルを支えていた。

 2曲目は「ひとつだけちがう朝」を朗読。歌だけでは伝わらないストーリーを詩によって補っていく。結果的に4つのポエトリーがライブのチャプターを分けるように組み込まれており、楽曲と楽曲を繋ぐ接着剤のような役割を果たしていたように思う。また、暖色のライトに照らされるふたりが、ベッドの上で本を読む姿には不思議な緊張感があり、音源で聴くよりもずっと物語に引き込まれていく。ホールという会場もこの日のライブにピッタリで、紙芝居や詩の朗読会に参加したような気分である。

 読み終えると同時に暗転、静寂……ドリーミーな音色が流れ出し、一瞬にしてカラフルなバンドサウンドが飛び込んでくる。EPの中で最初にリリースされた楽曲「さみしい惑星」である。恐らくこの日最速のBPMだったはずだ。夜のハイウェイを高速でドライブしていくような疾走感があり、mekakusheと長瀬有花の清らかな声は流れ星のように突き抜けていく。

 その勢いを引き継ぎながら「きみはシュノーケル」(mekakushe)、「駆ける、止まる」(長瀬有花)、「アフターユ」(長瀬有花)とそれぞれのソロ曲が続いていく。中でもライブの温度がグッと上がった気がしたのは、ふたつ目のポエトリー「夕焼けが届く頃」を終えた後、「オレンジスケール」(長瀬有花)のイントロが聴こえた辺りである。夕焼け色の照明に照らされながら、踊るように歌う長瀬の姿に引き込まれる。切なくも軽快なリズムを持ったポップソングで、小山田の軽いタッチのドラミングが気持ちいい。亜万菜の柔らかい鍵盤も心をほぐすようであり、DJが曲をつなぐようにシームレスに「かくれんぼ」へとバトンは渡される。「片想いマグネット」(mekakushe)まで跳ねるようなリズムが続く、とりわけ華々しい時間である。

 「クリーニング・ブルー」はその時間帯におけるトドメだろう。タイトルが想起させるような涼やかな1曲で、恐らく「世界が美しいからだよ」の中でも一際清らかなハーモニーを聴かせる楽曲である。透明感のあるボーカルふたりのハモリが素晴らしく、ここでしか味わえないような心地よさがあったように思う。

 それにしても、それぞれがソロ曲を歌う時の、もう一方の振る舞いが面白い。mekakusheが歌っている時は長瀬有花が、長瀬有花が歌っている時はmekakusheが、ベッドの上で本を読んだり紅茶を飲んだり、鏡を見たりヘッドホンをかけたりーーまあなんとも優雅なもので、まるで何事もない休日を過ごすようなリラックスした姿を見せている(それはまさに「日曜日」の世界観である)。いわばこの瞬間は互いにスポットライトを譲っている状態で、演者ではなく背景になる。あるいはそこで歌われる曲をBGMに、終末世界を過ごすこの物語の登場人物を演じているようにも見えるのだ。

 実際、mekakusheと長瀬は曲ごとに役割を変えながら、ふたりでひとつのストーリーを紡いでいたように思う。コラボ曲を歌っている瞬間はもちろんふたりが主役であり、しかしポエトリーを読む時には語り手(ナレーション)である。そして互いのソロ曲ではこの舞台のいち登場人物になっていく。ささやかだがこうした視覚的な変化も、このライブの楽しみになっていたはずだ。

 3曲目のポエトリー「逆光でよく見えない」からはガラッとライブの景色が変わっていく。まずは長瀬の「プラネタリネア」である。プログレッシブなビートとドラマチックなメロディが同居しており、星々が衝突してハジけるようなノイジーなサウンドもインパクト抜群。「クリーニング・ブルー」までが爽快な時間だったとしたら、この曲のイメージは痛快そのもの。何よりファニーである。

 かと思えばmekakusheのシンセポップ「グレープフルーツ」が、甘やかな空気を運んでくる。しかし、ステージの装飾や照明がそう聴こえさせたのだろうか? しっとりと染み渡る演奏はどことなく寂しげで、彼女の声は儚さを含んでいたように思う。いわばベッドルームバージョンといった趣で、その質感は夜が深まるように「異世界うぇあ」(長瀬有花)、「うわのそら」(mekakushe)へと引き継がれていく。とりわけ後者は悲しくなるくらい綺麗なメロディがmekakusheらしい、吸い込まれるような魅力を感じる1曲である。この日の演奏では一際魅力的に響いていたように思う。

 長瀬の「hikari」(未発表新曲)に心が持っていかれる。彼女はこの日唯一ギターを持って歌っており、それだけでも他の楽曲とは違う空気を放っていた。実際、まろやかでキラキラした音色が中心だったこの日のライブにおいて、分厚くざらついた音色のアンサンブルは嫌でも記憶にこびりつく。冷たく、危ういニュアンスを含んだバンドサウンドに会場が飲み込まれていくような感覚があり、サビで繰り返す<うっとおしい>というフレーズもヒリヒリとした空気を培養していた。続くmekakusheの「恋の未明」ではグルーヴィなベースが素晴らしく、やはりコンセプチュアルなライブとはいえ、こうした音楽的な快感があってこそだろう。

 寂しげなピアノのフレーズに誘われ、mekakusheと長瀬有花が手を繋いで前へ出る。「やがてクラシック」は眩しいくらいにポップだが、ふたりの声質が無性に寂寞感を駆り立てた。この日最後のポエトリー「最高密度の朝焼け」から、夜明けに向かって進んでいくようなエイトビートの「かつて地球は白かった」を歌い本編終了。アンコールでは「宇宙遊泳」を歌い、記念すべき一夜の幕が閉じられる。

 普段別々の活動をしているシンガー同士が、対バンやどちらかの楽曲にゲストで入ることはよくあることである。だが、こうしてずっと同じステージに立ち、共にひとつの舞台を作り上げるようなライブをすることは中々珍しいことである。mekakusheは「有花ちとだからできた」と言っていたが、実際お互いの楽曲へのリスペクトがあったからこそ生まれたライブなのだろう。「世界が美しいからだよ」の収録曲は、今後もそれぞれのライブで歌われるかもしれない。しかし、こうしたコンセプチュアルなステージでコラボレーションすることは、次にいつあることかわからないのだ。是非この共演を配信でも見てほしい。

Text by 黒田隆太朗
Photo by 清水舞

◎公演情報
【Collaboration Live”世界が美しいからだよ”】
2025年2月7日(金)
東京・SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
アーカイブチケットご購入ページ
※販売期間:2025年2月14日(金)20時30分まで
※アーカイブ期間:2025年2月14日(金)22時30分まで


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