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Spotifyによる、音楽業界関係者向けの招待制イベント【Spotify Music Sessions】が、2024年12月5日に東京渋谷・Spotify O-EASTにて開催された。
今回のイベントでは、主に2024年の国内外の音楽マーケット動向や音楽マーケティングをテーマに、Spotify Japanの代表取締役トニー・エリソン氏と、音楽企画推進統括を務める芦澤紀子氏がプレゼンテーションを行ったほか、音楽ジャーナリストの柴那典氏をモデレーターに、 BMSG代表取締役CEOのSKY-HI氏とビルボードジャパンの礒﨑誠二によるセッションも実施された。以下、同イベントの模様をお届けする。
はじめに、トニー・エリソン氏が登壇し、2024年の音楽マーケットについてフィードバックがなされた。Spotifyにおいては、ユーザー数および有料会員数がともに増加し、ストリーミング数は2022年から2023年にかけて30%増加したとのこと。他にも、2023年以降に、Spotify上で再生回数が1億回を達成した楽曲が100曲を超えるなど、1年を通して、より一層の音楽マーケットの成長が見られたという。国内外で拡大傾向にあり、ストリーミングを中心としたデジタルサービスは、今後も音楽産業を支えていく大きな柱であることは間違いなく、トニー氏はレコード会社やマネジメント会社などのアーティストに携わる音楽業界関係者は、デジタル領域に重点を置いたマーケティングおよびプロモーションを行うべきと述べた。さらに、具体的なマーケティング手法として、Spotifyで楽曲を配信しているアーティストや制作チームが利用できる専用の楽曲・アーティスト情報管理ツール『Spotify for Artists』を挙げ、ストリーミングだからこそできるデータ活用が紹介された。
また、人々が手軽に音楽にアクセスすることができる環境の下、世界中で多種多様なジャンルの楽曲が聴かれたことで音楽マーケットのダイバーシティが進展しているという。トニー氏は、 Spotifyが展開している、アニメ配信サービス『クランチロール』との提携を紹介し、日本の音楽のグローバル展開をより一層サポートしていくと述べた。
上記のストリーミング需要が拡大している現状に加え、2024年7月に経済産業省より発表されたレポート『音楽産業の新たな時代に即したビジネスモデルの在り方に関する報告書』や新設の音楽賞【MUSIC AWARDS JAPAN】など、日本の音楽業界を取り巻く環境の変化にも触れ、今後の音楽産業の発展のためにはサステナブルかつ健全な成長が必要であると、締めくくった。
続いて、芦澤氏が2024年におけるSpotifyの各種ランキングを発表。今年国内において最も再生された楽曲は、125日間にわたりSpotify Japanのデイリーチャートで連続1位を獲得したCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」で、最も聴かれたアーティストは、2年連続でMrs. GREEN APPLEとなった。また、リリース直後に海外が先行してヒットした、「Bling-Bang-Bang-Born」は、今年海外で最も再生された国内アーティストの楽曲としても首位に。海外で最も再生された国内アーティストとしては、初のアメリカ単独公演を開催したYOASOBIが首位を飾った。その他、今年最も再生されたアルバムやプレイリストなどを紹介した。
最後のセッションでは、柴氏、SKY-HI氏と礒﨑が登壇。はじめにテーマに挙げられたのは、ユーザーやアーティストの活動の軸がストリーミングに移行してきていることを指す、いわゆる“ストリーミング・シフト”だ。礒﨑が、音楽市場推移のグラフを投影しながら、アメリカ、そして日本においてもストリーミングによる収益が年々上昇してきていることを説明。SKY-HI氏は、BMSG所属のBE:FIRSTが、配信のみでリリースされたシングル「Boom Boom Back」で『紅白歌合戦』に出演した例を挙げ、デジタルが台頭してきた昨今の動向を鑑みれば、フィジカル・リリースに頼らずともヒットに繋がる可能性が大いにあると、期待を寄せた。加えて、ストリーミング・サービスで配信を行うメリットとして、楽曲の再生回数などのデータを取得、活用することができる点も挙げられた。柴氏は、ストリーミング・シフト以降は過去の作品が収益を生み出しやすい環境になったほか、リリースから時間を経ても作品がヒットする可能性が高まったと述べた。
続いて、持続可能な音楽社会に向けた動きやファンダムについての話に。SKY-HI氏は、フィジカルによる売上はマーケットを支える柱の1つであるとしながらも、業界内外で長年議論されてきた、CDの複数枚購入と、それによって廃棄されるCDが存在している現状を取り上げた。対して、BMSGはBE:FIRSTのコンセプト・シングル『Masterplan』のリリースにあたり、紙ジャケット仕様を採用したほか、販売店や販売サイトごとに異なる購入者特典やランダム封入のCD特典を廃止するなど、実際にアクションを起こしてきている。礒崎は、昨今のファンダムのアクティビティについて、ストリーミングの再生回数キャンペーンによる異常なチャートアクションに対し、ヒットを可視化して伝える役割を持つビルボードチャートとしては、今後も慎重に対応していかなければならないと続けた。
セッションが終盤に差し掛かると、日本の音楽のグローバル展開に関する話題に。初めに柴氏が、日本の楽曲が海外でヒットする方程式が多様化していることを挙げた。SKY-HI氏は、BMSG所属のREIKOとイギリスのレーベルDirty Hit所属のNo Romeが、同じフィリピン出身ということをきっかけに楽曲が制作されたことを例に挙げ、グローバルでのコラボも盛り上がりを見せていることを紹介。このコラボを通じ、アーティストの純粋な思いで繋がるクリエイティビティの重要性を感じたという。また、音楽に限らず、日本という国のファンが増えるよう、海外に向けて積極的なアプローチを図っていくことも、グローバル展開にあたって重要であると語った。続いて礒﨑は、「多様性」と「蓄積」がJ-POPのチャンスを生むと応じ、NewJeansが松田聖子の「青い珊瑚礁」や竹内まりやの「プラスティック・ラヴ」をカバーし話題となったように、日本の音楽史に長年蓄積されてきた多様な楽曲群はグローバルヒットの可能性を秘めていると紹介。加えて、データをもとに国ごとのリスナー傾向を分析しながらきめ細かなマーケティングを行うことが大切だと続けた。また、グローバルの視点や選考の透明性を理念に掲げる【MUSIC AWARDS JAPAN】の楽しさを、業界全体で一段と発信できればとも話した。最後にSKY-HI氏より、「日本の音楽に希望を持っている。これからは業界全体が健全な成長を果たしていかなければならない。」という力強いメッセージがあり、本セッションは幕を閉じた。
本イベントを通して、2024年の音楽マーケットは強いバイタリティを示してくれたこと、日本の音楽の更なる発展のためには健全かつサステナブルな成長が必要であることが明らかとなった。多様化、グローバル化が進む音楽業界だが、2025年はどのような年になるのか期待させてくれるイベントであった。
◎イベント情報
【Spotify Music Sessions】
2024年12月5日(木)東京渋谷・Spotify O-EAST
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