<ライブレポート>Little Black DressがBLUE NOTE PLACE公演を開催、レーベル移籍を発表

2024年11月11日 / 18:00

 遼によるソロプロジェクト、Little Black Dressが、11月2日と3日、BLUE NOTE PLACEにおいて単独ライブを開催した。

 遼の誕生日前夜である2日の公演は、事前に告知されていた重大発表がされるなど、彼女にとってもファンにとっても特別な夜になった。

 全身黒を纏い精悍な装いの遼がフェンダー リッチー・コッツェン テレキャスターを手にすると、「SPICE OF LIFE」で今宵のショーは幕を開ける。軽快なビートを刻んでいくバンドメンバーはFUYU(Dr.)、Sam Pomanti(Key.)、デビン木下(Synth Ba.)、岡聡志(Gt.)という布陣だ。小気味よいリズムに伸びやかな歌声を響かせていく遼。「SPICE OF LIFE」から「DRIVE OUR DREAMS」、さらには川谷絵音の提供曲である「恥じらってグッバイ」へと、今年6月にリリースしたシティポップアルバム『SYNCHRONICITY POP』からの3曲をメドレー形式で次々と披露していく。

 「ようこそ! Little Black Dressのライブへ。美味しいお食事と、美味しいドリンク、楽しんでますか?」

 会場のBLUE NOTE PLACEは“食と音楽が融合したダイニング”を掲げ、吹き抜け2階建ての開放感溢れる上質な空間。テーブル席を囲んだ満席の観客、ステージとほど近い距離感が特別な夜であることを物語っている。そんなディナーショーともいうべきラグジュアリーな趣が、遼のクールかつパワフルな歌声とLittle Black Dressの音楽の気品をより際立たせている。

 「私、カバーを歌わせていただくことが多いんですけど」そう言って歌われたのは、竹内まりやの「プラスティック・ラブ」である。2010年代後半からの海外でのシティポップブームを代表する曲だ。同曲がリリースされた1984年当時の都会で暮らす女性の自由な恋愛と強さを綴った曲だが、この2024年にLittle Black Dressがオリジナルとは一味違う強さでアップデートしていく。原曲リスペクトを感じさせながら、オリジナリティと強いアーティスト性を感じた圧巻のカバーだ。

 凛とした遼の佇まいに酔いしれていると、流麗なピアノの旋律に美麗なファルセットが重ねられる。「猫じゃらし」をそっと優しく歌い出した。美しいメロディに乗せて、親しい人との複雑な関係を赤裸々に描いた詞を丁寧になぞっていく。そしてサビへと進行していくと一気にドラマチックな展開へ。バンドの奏でる音が、遼の次第に力を帯びていく歌にいざなわれるように激情的な音へと変わっていった。聴き手の情緒を弄りながら、その太くも繊細さを備えたボーカルが会場いっぱいに響き渡った。

 「ここからは少し久しぶりの曲をやろうと思います。BLUE NOTE PLACE 恵比寿? 恵比寿……私の曲で未発表なんですけど、“恵比寿”とついた曲があるんです」

 そう紹介されたのは「恵比寿ブラックホール」。どっしりとしたバンドアンサンブルに、遼の艶っぽい低音から澄んだ高音まで滑らかに伸びゆくボーカルが堪能できるアダルトな色香を放つ楽曲である。さらに緩急のついたリズムがフックとなり、遼の手にしたアコースティックギターのストロークも心地よく響く「双六」と続いた。観客も身体いっぱいにLittle Black Dressの音楽を浴びながら、手拍子や身体を揺らして楽しんでいる。品格をかぐわしながらも、アットホームな雰囲気がLittle Black Dressらしい空間を創り上げている。

 岡のシュレッドなギターが吠え、FUYUのタイトなドラムフィルから重心の低くなったバンドのグルーヴが迫ってくる。「チクショー飛行」だ。Little Black Dressの掲げる“歌謡ロック”の真髄ともいうべきナンバーである。<チクショー>と力強く吠える遼の声に絡みつき、咽び泣くギターが会場の熱をぐいぐいとあげていき、負けじと遼は太いボーカルを轟かせる。バンドと歌の真剣勝負のせめぎ合いで観る者を圧倒した。

 「11月2日、重大発表があります」

 ここで事前に予告されていていた重大発表へ。前夜にインスタライブで発表内容の予想を募っていたが、正解はいなかったと前置き。

 「メジャーレーベルに移籍いたしまして、キングレコードさんから第一弾として『チクショー飛行/猫じゃらし』、2曲配信します!」

 遼が嬉しそうに発表をすると、客席から「おめでとう!」という声と大きな拍手が贈られた。ずっと言いたかったと想いを口にし、本ライブの最初に披露した「DRIVE OUR DREAMS」で<僕らの道が 正解になるまでゆこうじゃない>と歌っているとおり、「どれが正解かわからないから、私たちとみなさんが一緒に歩んだ道を正解にしたい」と続けた。さらに「キングレコードさんと一緒に一歩一歩楽しいこと、みなさんに喜んでいただけることを発信していきたいと思います!」と新たなスタートの決意を語ると、あたたかい祝福の拍手が彼女と会場を包み込んだ。

 「小さくて気付けなかったこと、本当に育つのか不安なこと、芽が出てなくても気づけば大きな木になっている……そんな幸せの花が咲きますように」

 最後に贈られた「マロニエの花」。ゆったりとしたAORテイストに溢れるサウンドの中で明るく響く遼の声は、先ほどまでとは異なる倍音を持っている。それは気のせいではないだろう。楽曲ごとの声色と響きを使い分けながら魅了していく、遼のボーカリストとしてのパワーを存分に感じるものだった。そうした優雅で美しい歌声のロングトーンが会場いっぱいに響き渡った。

 最後の音を鳴らし切ったあと、バンドメンバー全員で手を取り合いカーテンコール……のはずが、颯爽とステージを降りてしまったメンバー。1人ステージに取り残され、最後の最後で笑いを誘った遼。そんな彼女どこかお茶目で飾らない人間性もまた、Little Black Dressの音楽に込められているのである。

 11月22日、「チクショー!」と高らかに叫ぶ、Little Black Dressの新しいスタートが楽しみだ。

Text by 冬将軍

◎公演情報
【Little Black Dress @ BLUE NOTE PLACE】
2024年11月2日(土)、3日(日)
東京・BLUE NOTE PLACE
<セットリスト>
1. SPICE OF LIFE~DRIVE OUR DREAMS~恥じらってグッバイ(メドレー)
2. プラスティック・ラブ(竹内まりや カバー)
3. 猫じゃらし
4. 恵比寿ブラックホール
5. 双六
6. チクショー飛行
7. マロニエの花


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