<ライブレポート>在日ファンクが初のビルボードライブ公演、JBファンクの系譜を魅せつける圧巻のパフォーマンスを披露

2024年10月11日 / 17:30

 ファンクはいろんな掟を抱える。その原点に仁王立ちするが、天下のジェームス・ブラウンだ。音楽面からアクションや態度までJBが送り出した“黄金”はあまりに大きい。そんなジェームス・ブラウン・ファンクの流儀に体当たりし、自らの創意と洒落もくわえ天下一品の“日本に在るファンク”を見事に具現しているのが在日ファンクの面々だ。大先輩たる鈴木雅之をスペシャル・ゲストに迎えた10月5日、煌びやかにして怒涛のビルボード東京公演をここにリポートする。

 わくわく、ぐりぐり、ぎらぎら、ずぶずぶ……。なんか鼓舞されるもの、多大な働きかけを持つ酔狂な行為に触れると、意味もなくそうした情緒的な言葉を重ねたくなってしまうのはなぜなんだろう。いや、それは僕だけのことかもしれない。だが、華々しくもディープな在日ファンクの実演に触れ、満面の笑みと共にワワワワと頭のなかに扇状的なフレーズが渦巻いた。

 フロント・マンの浜野謙太を先頭に、面々は颯爽とステージに現れる。お楽しみ精神に満ちた在日ファンクはお揃いの衣装に身を固めるが、この日はベージュと紫をうまく用いたヴィンテージ調のスーツを着る。クール。それだけで、胸が高鳴る。浜野のリーゼントっぽい髪型は、若い時のジェームス・ブラウン── JBを思い出させる。拘りは美徳である。

 開演し、すぐに感激してしまうのは、浜野の様々にして完璧なアクションやステップ。JBのステージ所作をすべて会得していると書きたくなる。更には、マイク・スタンド使い。JBはいろんな魔法の所作や様式を作り出した。ああ、天才! そして、そんな御大にやられ、その美点を踏襲しようとする人はたくさんいるだろう。そうしたなか、浜野ほどキレキレで鮮やかに“ソレ”をこなしてしまう人を僕は知らない。よくぞ、極めた。あなたはそれを人前で披露するために、どんなにJBのステージングを研究したのですか。賞賛の念とともに、その鍛錬の深さに気が遠くなってしまう。

 ムーン・ウォーク的な動きもばっちり。そう、マイケル・ジャクソンで知られるあの後ろに進む魅惑の足捌きもJBのそれから来ているのだ。とにかく、浜野の一糸乱れぬと書きたくなる怒涛のアクションだけでも十分にお金が取れると僕は思った。そのスーパーな行いには、いくら喝采を上げてもたりない。

 さらに、ファンクの元締め的な存在であるジェームス・ブラウンのサウンドを、3管(トロンボーン、トランペット、サックス)を擁するバンドが巧みに受け継ぐ。リズムやブラス・サウンドのコンビネーションのあり方も、JBファンクの深い研鑽ゆえ。そして、JBの息遣いや歌唱法を十全に会得し、ウィットの効いた日本語の歌詞を載せた浜野の人間味に富むヴォーカルがバンド・サウンドに載ることで、日本人に訴求する“大衆”ファンクは見事に結実する。

 JBファンクをいかに自分たちのハンド表現として昇華させるか。そのトライの結果として、在日ファンクは表現のヴァリエーションを広げてきた。ポップスの情緒を持ち込む曲もあったし、アフロ・ビートやマニアックな語彙を悠々と取り込むこともあった。だが、この日はJB色調をくっきり引き継ぐ楽曲が多く選ばれたと言えようか。「マルマルファンク」や「環八ファンク」をはじめ5曲を繋いだメドレー(井上陽水の「氷の世界」の闊達カヴァーあった)もJBの“どんぶり作法”のもと、くっきり決まる。そして、娯楽性を追い求めるビッグ・バンド、ジェントル・フォレスト・ジャズ・バンドを率いるトロンボーン奏者のジェントル久保田等、ホーン・セクション陣の手振りや声出しもがっちりバンド表現の美味しさを底上げする。

 それにしても、どうしてJBを根に置くビート・ミュージックはどうしてこんなにも起爆力があるのか。ちょっとした掛け声やシャウトは何故に接する者に働きかけるのか。それは取りもなおさず、俳優としても活躍する浜野謙太の表現力あってこそとも言える。6人のバンド演奏を得て、彼は自らのラヴリーなキャタクターをぐい乗りでアピールし続けた。

 この日の大きなトピックはR&Bラヴァーの先達、鈴木雅之がスペシャル・ゲストとして登場したこと。ダブルの白いスーツ姿で登場した彼は存在感たっぷり。浜野に負けず劣らず観客への働きかけを見せる。そして、2023年に在日ファンクとコラボレーションした「スポットライト」、さらに「違う、そうじゃない」「め組のひと」など在日ファンク化された鈴木の人気曲が披露される。その際、浜野も一緒に歌う。ほほえましい。3曲歌った鈴木は帰り際に、JBのトレードマークたる“マント・ショウ”を想起させるイケてる所作も見せた。千両役者、イエイ。

 その後は、再び在日ファンクのウィットに富んだ楽曲が次々に送りだされ、アンコールは2023年作『在ライフ』の最終曲だったアッパー曲「おすし」を凛々と演奏し、大団円。そういえば、浜野はビルボードライブで公演をすることが,、ここのところ自分たちのモチベーションになっておりそれが叶ったと、MCで伝えていた。

 かような意気に満ちたステージから大きく浮かび上がったのは、いまだ才能あるミュージシャンたちを刺激し、インスパイアし続けているリアル・ファンカー・JBの財産の大きさ、そして奥深さだ。また、そんな憧れの存在に体当たりした末に自分を仁王立ちさせることの尊さは素敵である。結果、ライブが終わったあとも、ぼくのなかには冒頭に触れた山ほどの言葉の断片が響き、呼応しあっていた。なんて、幸せな! 

Text:佐藤英輔
Photo:廣田達也

◎公演情報
【在日ファンク at Billboard Live TOKYO 2024】
2024年10月5日(土)ビルボードライブ東京
<セットリスト>
1.イントロ
2.足元
3.ハラワラナイト
4.メドレー(マルマルファンク→根にもってます →環八ファンク→むくみ →氷の世界→マルマルファンク)
5.京都
6.スポットライト
7.違う、そうじゃない
8.め組のひと
9.きず
10.ダンボール肉まん
11.爆弾こわい
12.或いは
Enc.おすし


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