<コラム>“テイラー・スウィフト効果”が米大統領選挙に影響を与える可能性を選挙の専門家に聞く

2024年10月2日 / 17:30

 ドナルド・トランプ前米大統領とカマラ・ハリス現米副大統領によるホワイトハウスを巡る戦いは、依然として僅差が続いている。米国人が投票を行うまで2か月を切った今、両候補はコアな支持層を固めるために全力を尽くしつつ、自分たちに有利な票を投じる可能性のある、投票先を決めかねているまたはうんざりしている重要な有権者を獲得しようと必死に争っている。

 そして共和党は長い間、有名人の推薦は選挙の行方を左右しないという古い格言を信奉してきたが、2度の弾劾歴のある有罪判決を受けたトランプと、土壇場で民主党候補となったハリスの戦いにおいて、今年に入ってからは適切な一流セレブの推薦が重要な要素のひとつとなり得ることをすでに示している。

 その証拠は、数週間前にテイラー・スウィフトがハリスと副大統領候補のティム・ウォルズ米ミネソタ州知事を強く支持したことによる即時の影響にある。民主党全国大会の後にテイラーが若い有権者たちにVote.govでの登録を呼びかけたところ、405,000人以上がサイトにアクセスした。これは11月の選挙結果にテイラーが与える影響力の大きさを示す好例であり、9月初旬の1日の訪問者数の30,000人をはるかに上回る結果となった。

 言うまでもなくテイラーは、過去1年間にわたりポップ・カルチャーを席巻し続けている【The Eras Tour】で世界中のスタジアムを完売させ、さらにNFLシーズン中にはカンザスシティ・チーフスのタイトエンド、トラヴィス・ケルシーとの交際により毎週注目を集め、スクリーン・タイムを獲得しているメガスターだが、彼女の呼びかけから1週間後にトランプは、自身のSNSであるTruth Socialに、「テイラー・スウィフトが大嫌いだ」とすべて大文字で激怒し、食ってかかった。

 先週実施されたYouGovの世論調査によると、共和党支持者の31%を含む53%以上の米国人が、テイラーの支持はハリスにとってプラスになると考えており、4%はマイナスになる可能性があると回答した。この世論調査は、2月に実施されたChange Researchの調査に続くもので、この調査では民主党支持者の65%がテイラーに好印象を持っている一方で、無党派層は29%、共和党支持者はたった17%が同じ印象を持っていることが分かった。しかし現時点では、テイラーの支持が実際にハリスの助けになるかどうかはまだ不明だ。最近の米ABCニュース/Ipsosの世論調査によると、調査対象者の81%が、テイラーが副大統領候補を支持していることは投票先に影響しないと答えている。テイラーの投稿以来、ハリスに投票する可能性が高くなったと答えたのはわずか6%で、13%は投票する可能性が低くなったと答えている。

 現地時間2024年11月5日の選挙まであと数週間と迫った今、米ビルボードは、学者、政治コンサルタント、世論調査担当者、音楽マネージャーのグループにインタビューを行い、テイラーの支持とトランプによる難癖がハリス/ウォルズの当選を後押しするのか、あるいはトランプに有利に働くのかについて意見を聞いた。

<人々は少なくとも彼女の話に耳を傾ける>

 ベテラン世論調査員で、コミュニケーション・アナリストのフランク・ランツは、「この選挙は、3つか4つの重要な州で数千票を争うことになるので、すべてが重要です。(テイラーの支持が)決め手になるか?おそらくなりません。しかし影響はあるか?間違いなくあります」と話す。

 8月以来、投票先を決めていない若い有権者の同じグループに選挙について尋ねる一連の記事を米ニューヨーク・タイムズで執筆してきたランツは、ジョー・バイデン米大統領がハリス副大統領に道を譲るために撤退する前、有権者に投票先に最も影響を与えるのは誰かについて調査したと述べた。1位はトランプで38%、2位はバイデンで34%、テイラーは25%でそれほど差はなかった。

 彼は、「本当にショックを受けました。当時、バイデンは若い女性の間で非常に弱かった。彼女たちは民主党の最も信頼できる有権者層であり、(テイラーは)非常に重要な存在です。なぜなら、彼女は政治家として見られておらず、党派心があらわな人とも見られていないからです。だから、人々は少なくとも彼女の話に耳を傾ける」と述べている。

 ランツはさらに、テイラーが自身の推薦文の文言を“かなりうまく”こなし、その言葉遣いは“ある程度洗練された”表現でなぜそのような行動を取ったのかを説明していたと思うと述べた。テイラーが声を上げた理由の一つとして、自身がトランプを支持していると偽るAI生成されたフェイク画像をトランプが自身のSNSで拡散した件に対する恐怖と怒りがあった。

 ブリリアント・コーナーズ・アーティスト・マネージメント(デス・キャブ・フォー・キューティー、ポスタル・サービス、ベスト・コースト)の共同設立者であるジョーダン・カーランドは、重要な選挙で発言することについて多少なりとも心得ている。2期務めた民主党のバラク・オバマ前大統領と、2016年のトランプとの大統領選で落選したヒラリー・クリントンのキャンペーンの両方でエンターテイメント諮問委員会の委員を務めた経験を持つからだ。彼もテイラーが自身のことを語るよりも投票を促すことに重点を置いたやり方に感銘を受けたという。

 カーランドは、「独自に調査したと彼女が語り、お気に入りのポップ・スターがそう言ったからという理由だけで候補者に投票するのではなく、争点について本当に理解を深めるよう人々に促していることを評価しています」と語っている。

<ぼんくら山の凍てつく頂>

 ブルース・スプリングスティーン、オプラ・ウィンフリー、バーブラ・ストライサンドといった旧世代のアーティストたちは、これまで民主党の信頼できる後援者および支持者を務めてきたが、ランツと、リンカーン・プロジェクトの共同創設者であるリック・ウィルソン(著書『Everything Trump Touches Dies』“トランプが触るものはすべて死ぬ”)は、テイラー・スウィフトは新しいタイプの政治的勢力であり、時に信頼できず、やる気のない若年層の有権者をも巻き込むことができる、大規模なマルチメディアによる影響力を持っていると述べている。

 2019年にトランプ大統領の再選阻止を目的としてスーパーPACのリンカーン・プロジェクトを共同設立した、元共和党員で政治戦略家のウィルソンは、「テイラー・スウィフトは、この世のほぼすべてのセレブとは異なるカテゴリーに属します。彼女の持つ影響力と若い女性たちへの影響力は、他に類を見ないものです。もちろん、父親や母親たちへの影響力も」と話す。

 テイラーは、ほぼ常時米ビルボードのチャートを独占しているだけでなく、ポップ・カルチャーを席巻する【The Eras Tour】とそれに付随する映画も制作している。さらに、週末にはスカイ・ボックスから恋人のケルシーを応援し、毎週のように話題をさらっている。NFLの試合は2023年には1試合あたり平均1,790万人の視聴者を獲得しており、その年には最も視聴された100のプライムタイム・テレビ放送のうちNFLの試合が45枠を占め、TOP15のうち14枠をNFLが独占した。
 2023年の【The Eras Tour】米60公演で435万枚のチケットが売れたことを加えると、その影響力は現代のポップ史においてほぼ比類のないアーティストであるとウィルソンは言う。

 彼は、「母親に連れられて10~15年前にテイラーのコンサートに行ったことがある、彼女を最初に愛した少女たちの一部は今では若い女性になっています。そして彼女がそれらの女性や少女たちと持っている結びつきを、共和党はからかおうとしている。彼らは“彼女の音楽は悪い選択についてだ。だからこれは悪い選択だ”と言うが、彼女の人生に対する率直さと、それが芸術を通して表現されることが彼女を親しみやすくし、人々を惹きつけ、音楽やエンターテイメントを超えて、人々を彼女とつながっていると感じさせるのです」と指摘する。

 テイラーが訪れるすべての都市にとってポップ・カルチャー的一大イベントであり、かなりの経済的後押しとなることに加え、ウィルソンは皮肉たっぷりに、「テイラー・スウィフトのコンサートを途中で退席したり、不機嫌になる人は誰もいませんよね。これはトランプの集会とは正反対です。(テイラーのファンは)最後の瞬間まで会場に残り、幸せで力づけられた気持ちで帰路につきます」と述べた。ウィルソンは最近米MSNBCで、政治家が犯し得る歴史上最大の過ちについての伝統的な警告に新たなひねりを加えたと冗談を言ったという。その警告とは、“冬にモスクワを侵略する、アジアで陸上戦を開始する、そしてスウィフティーズを愚弄する”、というものだ。

 トランプが“大嫌いだ”とツイートしたことについてウィルソンは、潜在的に重要な有権者層をターゲットにした、底知れぬほど愚かな自爆行為だと述べた。「ただの愚かな考えではありません」と彼は述べ、「オリュンポス山レベルの愚かさ、愚かな考えの遥か彼方の山があったとすれば、まさにその頂点、ぼんくら山の凍てつく頂ですよ」と、独特な言い回しで表現した。

<彼らはキッド・ロックを獲得し、こちらはテイラー・スウィフトを手に入れた>

 著名な政治コンサルタントで評論家であり、ビル・クリントンが勝利した1992年の大統領選挙キャンペーンの戦略責任者であったジェームズ・カーヴィルは、有名人の推薦が投票行動に大きな影響を与えるという証拠は“かなり薄い”と主張している。しかし、少なくともテイラー・スウィフトの支持表明は“トランプをひどくイライラさせる”だろうと彼は付け加える。その証拠に、トランプが大文字でツイートし、先週、副大統領候補のJ・D・ヴァンスがFoxニュースでややトーンダウンしつつも立場は変えなかった。「テイラー・スウィフトの音楽は素晴らしいが、大半のアメリカ人は彼女の音楽が好きかどうか、彼女のファンであるかどうかに関わらず、ほとんどのアメリカ人の関心事や問題とは根本的にかけ離れているであろう億万長者のセレブに影響されるとは思わない」と元ベンチャー・キャピタリストで、数百万ドルの資産を持つ米オハイオ州選出の上院議員は述べた。

 トランプの気を散らす可能性のある彼女の支持と、それに対する彼の憎悪が、11月の選挙で勝利を収めるために重要な役割を果たす可能性のある18歳から34歳の若い女性有権者の多くを遠ざけることになったことに加え、テイラーが有権者登録するよう促したことは間違いなく違いを生み出す可能性があるとカーヴィル述べている。彼は、「人々が有権者登録という積極的な行動を起こしたことは素晴らしいですし、(トランプは)それをわかっています。彼らはキッド・ロックを獲得し、こちらはテイラー・スウィフトを手に入れた。それがどういう結果になるのか?」と語っている。

 政治のベテランであるカーヴィルは、有名人による支持について曖昧な立場をとっているが、ペンシルベニア州立大学で政治コミュニケーションとジェンダーを専門とするE.ミシェル・ラムジー准教授は、“信ぴょう性があると受け取られた“有名人の支持が”製品であれ候補者であれ”針を動かすことを示“あらゆる種類の研究”があると話す。

 “テイラー・スウィフト、ジェンダー、コミュニケーション”というコースを教えるラムジーは、テイラーの行動が今年重要なターゲット層である情報弱者の有権者層に変化をもたらす可能性があると語る。テイラー・スウィフトだけでなく、ビヨンセ、チャペル・ローン、オリヴィア・ロドリゴ、ビリー・アイリッシュといったポップ・カルチャー界の大物たち、さらには昨年公開された10億ドル(約1,420億円)のヒット映画『バービー』のプロジェクトが大々的に取り上げられたおかげで、今まさに女性のストーリーがプレイリストや映画、SNS上で大きな注目を集めている、と彼女は言う。また、最近のYouGov世論調査によると、スウィフティーズは一般的に民主党に投票する傾向が強いが、彼女は非常に人気が高いため政治的にも地理的にも幅広い層にファンがいる可能性が高い。

 女性の選択の権利が中心的なテーマとなった時代について、ラムジーは、「私たちは、女性の物語が食物連鎖の頂点に立つという、歴史的に特別な時代に生きています。これらのパフォーマーたちが自分の弱さを大いにさらけ出しながら語り、多くの女性(およびその他の人々)が共感できる感情を表現しているんです」と語る。言うまでもなく、その各州ごとの戦いは、トランプ大統領が保守派の最高裁判事を3人新たに任命したことにより、最高裁による中絶に関する判決(ロー対ウェイド事件)が2年前に覆されたことに起因している。この決定により連邦政府が保護していた女性の人工妊娠中絶の権利が覆された。

 これまでテイラーに加え、若い女性層にアピールする他の多くのミュージシャンやスターたちがハリスを支持している。その中には前出のビヨンセ、ビリー・アイリッシュ、チャペル・ローン、オリヴィア・ロドリゴのほか、アリアナ・グランデ、カーディ・B、チャーリーXCX、ケイティ・ペリー、デミ・ロヴァート、ケシャ、ミーガン・ザ・スタリオン、ピンクなどがいる。トランプは、キッド・ロック、ビリー・レイ・サイラス、カニエ・ウェスト、リル・パンプ、ジェイソン・アルディーン、コダック・ブラック、アジーリア・バンクスなどの、ポップ・カルチャー的にあまり人気のないアーティストから支持を得ている。

 共和党が数十年にわたって中絶を違法化しようと努力してきたこと、体外受精治療や避妊具の入手を制限しようとしてきたこと、そしてヴァンスが今では悪名高い“子どもを持たない猫好きの女性たち”という表現でハリス(および他の民主党員)を侮辱したことについてラムジーは、「(これほどまでに)ただひたすらに相手を刺激しようとする政党を見たことがありません」と述べた。テイラーは、ハリスへの支持を表明した文章に、自身の猫の一匹を抱いている写真を添え、最後に“子どもがいない猫好きの女”と書いてヴァンスの発言を皮肉った。

 ラムジーは、若い有権者は時代遅れの組織や従来の政治家を信用しない傾向にあるが、見習いたいと思う有名人には信頼を寄せると指摘する。バイデンが撤退したその日に素早く結成された“カマラを応援するスウィフティーズ”グループがそれを証明している。「もし私が共和党の選挙参謀なら、テイラー・スウィフトについて何も言わないよう助言するでしょう」と彼女は話している。

 マイルではなくインチで測られる選挙においては、最終的に“すべて”が違いを生むとランツは考えている。テイラーをテーマにしたキャンペーンのフレンドシップ・ブレスレットや政治広告で既にそうしているように、ハリス陣営がテイラーのポップ・カルチャー的な訴求力を活用することの将来性を彼は指摘する。「勢い、優位性、何でもいいからそれを求めているのです」と同氏は説明している。

 トランプの幼稚な「俺のことが嫌いなら、お前のことはもっと嫌いだ」という“HATE”投稿に対してテイラーがさらに反応し、彼の怒りを彼に返せば、ハリス陣営の防壁の重要な要素となる可能性があるとランツは考えている。「(テイラーは)それを簡単に“あなたが私を嫌いなら、私たちもあなたが嫌いだし、私たちが最後に笑うことになるよ!”に変えることができます」と彼は話している。


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