<インタビュー>Billyrrom が提示した信念、成長過程ゆえの切れ味が宿った1stアルバム

2024年9月27日 / 18:00

 Billyrromが1stアルバム『WiND』を完成させた。

 2020年結成の6人組で、【FUJI ROCK FESTIVAL】や【RISING SUN ROCK FESTIVAL】など大型フェスにも出演を果たし、次の音楽シーンを担う逸材として注目を集めている彼ら。アルバムは、持ち前のグルーヴィーでダンサブルな楽曲に加え、壮大なロックナンバーの数々も収録し、バンドの幅広い魅力を示す挑戦的な一枚に仕上がった。

 ソウル、ファンク、R&B、ブルース、プログレッシヴ・ロックなど幅広いルーツをもとに、独自の色気と熱量を持った音楽性を追求しているBillyrrom。その成り立ちと現在地を語ってもらった。

――Billyrromの名刺代わりになる作品として、とても骨太な、スケールの大きいアルバムという印象がありました。皆さんとしてはどんな一枚ができた実感がありますか?

Mol(Vo):スケールが大きくなったと言っていただきましたけど、本当にそうで。かといって、僕たちでスケールの大きい曲を作ろうという話はしていないんですよ。活動を始めて今年で4年目なんですけど、いろんな人と出会ったり、メンバー6人で一緒に成功したり失敗したり、いろんな体験を重ねて、バンドとしても個人としても視野が広くなっているような感覚がある。それゆえに自然とそういうスケール感のあるアルバムに仕上がったような気はします。

Taiseiwatabiki(Ba):アルバムのコンセプトを決めずに作り始めたのもあって、作っている最中は自分たちでもどういう作品になるのかよくわからなかったんです。でも、作り終えて、Billyrromらしいアルバムになったなという気持ちです。というのも、自分たちは今までの活動期間でずっと、かなり遠い目標を立てて、そこに向かってまず手前の目標に全力で行くみたいな感じでやってきたので。自分たちの大雑把さみたいな、精密に作られすぎていない1stアルバムとしてのBillyrromの良さが出せたなと思います。

Mol:コンセプトを設けなかったのには理由があって。あえてコンセプトを決めずに、そのときに自分たちが純粋にかっこいいと思うものを作っていこうという発想だったんです。アルバムに入っているのも、何も考えずに出てくるアイデアを、偶発的なものも含めて入れ込んで生まれた曲ばかりで。なので、そういう意味ではBillyrromにとってすごく純粋な曲たちが並んでいると思うし、そういうのを1stアルバムにしたかったという思いもあります。みんなが思うBillyrromっぽい感じもありつつ、僕らの思うBillyrromも詰まっている。そういう作品にできたかなと思います。

Shunsuke(Dr):いろんな挑戦をしたアルバムになったと思います。これまでやってきた音楽性もあるし、この先に見ている景色もあるし。変わらずにやり続けてきたこともこれからのことも、今の自分たちが見えている景色や現在地をすべて曲に書けたという感覚はありました。

Yuta Hara(DJ/MPC):Shunsukeが言っていたように、現在地を示すようなアルバムだなと思っています。アルバムを出す前にシングルやEPを出したり、ツアーを回ったり、いろんな景色をみんなで見てきて。信念の部分は変わらず、周りの部分が変わっていった。それを経て、自然と規模がデカい曲も作れるようになったり、逆にミニマムな曲にも挑戦できるようになって。わりと曲の幅があるアルバムだなと思います。どの曲もBillyrromらしさがありつつ、各々が挑戦したようなアルバムになっているなと思います。

Leno(Key/Syn):みんな挑戦と言っていたんですけど、Billyrromが本来やりたかったことは、いろんなタイプの音楽を6人それぞれが吸収して、一つのバンドとして作品を作るということで。それがこのバンドの強みでもあるし、もともと持っているコンセプトみたいなものでもあるので。本来俺らはこれをやりたかったし、こうあるべきだと思っています。

Rin(Gt):自分たちは年数も短いし、まだまだバンドとしては未熟だし、勉強中で、でも、だからこそ尖った部分とか、飛び出た異質な部分とか、切れ味がある部分もあって。それを丸くするというのは、そんなに難しいことではないと思うんですよ。自分たちが現状の音楽シーンのフォーマットを理解して、それに対して出っ張った部分を削っていくという。でも、そうじゃなくて、尖った部分だったり、ちょっと濁った部分だったり、そういうものを上手く作品として1stアルバムにパッケージできたのはすごく意味があると思っています。これって、知識とか技術がつけばつくほど難しくなってきたりもすると思うので。それができたのはすごくうれしいですね。

――「SERENADE for Brahma」はすごくブルージーな曲だし、ピンク・フロイドに通じるプログレッシヴ・ロックの感じもあって。これまで前面に出ていたBillyrromのソウルフルでダンサブルなイメージとはまたちょっと違う路線のかっこよさを感じました。この曲はBillyrromの中ではどれくらいの時期に作ったものなんでしょう?

Mol:これはBillyrromとして曲を作り始めて、4、5曲目くらいの曲で。初期からある曲なんですよ。もとのデモはRinが持ってきて、そのときは今よりブルース感も強かったんですけど、ワンマンで披露したり、6人で育て上げていって今のアレンジになったんです。それこそRinがデモを作ってきたときはピンク・フロイドを聴いたりしていましたね。

Rin:ライブで披露していくなかでそのときの空気感が入ったり、メンバー6人になっていろんな要素が入ってきて、さらに良い意味でカオスな色を作り出せる曲だと思います。

ーーアルバム後半には「Soulbloom」や「SERENADE for Brahma」や「Sun shower」のような、ゆったりとしたテンポで徐々に熱を高めていくようなタイプの曲もありますが、こういう曲はBillyrromらしさの幅の中ではどういう位置づけにあるという感じでしょうか?

Mol:いわゆるライブでのグルーヴィーでソウルフルな感じも、もちろん僕らとしても僕ららしいと思っているんですけど、お客さんに求められていることもすごく大事にしているので、ある種、お客さんに寄り添った形のBillyrromらしさだと僕は思っていて。その逆で、もっと僕たちの芯の部分というか、核の部分に近づいている曲が「Soulbloom」だったり、「SERENADE for Brahma」とか「Sun shower」だったりすると思います。そういう意味では、僕たち目線で言ったら実はこれが一番Billyrromなんだよ、みたいな思いもありますね。でも、そこの乖離にコンプレックスは感じていなくて。僕たち自身もそんなに大きく差別化している認識もないし、どっちも僕ららしいという気持ちではありますね。

Rin:こういうふうに新しいものに踏み出していくという行為自体がまずBillyrromらしいというのが前提にあって。曲がどうこうというよりは、もともとバンド名の由来でもある自分たちの信念というか。いろんな形、いろんな場所で音楽をやって、進んでいくこと自体に意味がある。その3曲もこうやって新しい形で新しい表現をしていく、それがBillyrromらしさなんじゃないかなと自分は思っています。

――「DUNE」についても聞かせてください。今年3月に力強いロックナンバーであるこの曲が配信リリースされたことでBillyrromの新しい側面が明らかになった感がありますし、その予感みたいなものがちゃんと結実しているアルバムでもあると思うんですが、この曲についてはどうでしょうか?

Rin:もともとこういうスケールの大きいロックサウンドの曲はちょっとトライしていて。でも、完成させることができない曲だったんです。空間が大きくなってくると、それぞれが想像しているものも大きくなって、そこに対してイメージの共有だったり、秩序がだんだん取れなくなっていったりして、完成させることができないというのがずっと続いていて。でも、去年のツアーとかいろんなたくさんの経験を経て、時間も積み重ねていって、同じ景色を見ていくなかでこの曲が作れたというのがかなり大きかった。これだけ空間の大きい曲は本当に作れなかったから、一歩進んだという感覚はみんなにもあったんじゃないかなと思いますね。

Leno:ツアーとワンマンを経て、ライブのステージが大きくなっていったので、スケールの大きい曲をやる自分たちの姿が想像できるようになってきたんですよ。それも含めてようやくロックナンバーの完成に至れたのかなって。これを出すことによって、Billyrromはまだまだ進化し続けますよ、我々はこれからも変わり続けますよ、という意思表示の一枚になったと思います。そこで「チャプター2」と銘打って、Billyrromの歩みが止まらないというのを表現したかったのもありますね。大きな転換点になったシングルなのかなと思っています。

――収録曲の中でみなさんが個人的に好きな曲、もしくはプレイヤーとして思い入れが大きい曲はどれでしょうか?

Rin:「Windy You」が個人的には気に入っていますね。作曲、作詞の面では、今年の最初に沖縄のフェスに行ったんですけど、そのときに全員で見た情景とか空気感を落とし込めたなと思っていて。もともと、そういうみんなで見た景色を落とし込む曲はすごくやりたいなと思っていたんですけど、なかなかしっくりくる機会がなくて。それができたことで、サウンドと言葉の相互作用も生まれたし、今までのBillyrromにあまりない曲ができたと思っています。あと、ギタリストとしては、ブラック・ミュージック的なアプローチとしてカッティングがすごく多かったんですけど、このアルバムはいろんな選択肢が増えてきたからこそ、あまり安易にその方法を取りたくなかったんです。その選択で曲の印象がガラッと変わったりするから。なおかつ、こういう「Windy You」みたいな曲調ってあまりやったことがなかったので。挑戦だったし、一つひとつのフレーズも、個人的にはすごく上手くいった曲だなと思います。

Leno:僕は「Clock Hands」ですね。もともと個人的なルーツはブラック・ミュージックではなかったんですよ。性格とか聴いてきた音楽の影響で「変なことやればかっこいい」みたいなことを思っていた時期があって。でも、この曲は「ストレートな曲ってどうやったら作れるんだろう」と思って作った曲で。王道なピアノ、王道なパーカッション、王道なリズムで作りました。シンプルでいい曲が作れるんだと思ってうれしかったですね。作り終わって感動しました。これがBillyrromだって。

Yuta Hara:僕は「Once Upon a Night」が一番好きです。アルバムの制作にあたって、1曲ずつ違うDJがしたいなと思って。全曲違うアイデアを考えようと思って、たとえば90年代のヒップホップとか、ディアンジェロとかJ・ディラとかコモンとか、いろんな自分のルーツになるような音楽を聴いていたんです。そういうところから一個一個の音の入れ方のアイデアの引き出しを増やそうと思って。それで、楽曲に味をつけるというか、色を出すとか、そういう足し引きができるようになっていった。スパイス的に音を入れるというのがアルバムを通してできるようになったと思います。で、「Once Upon a Night」はそういう位置から変わって、わりと全面的にDJが出ているような楽曲で。「これくらいいけるんだ」みたいな、また違った考え方になったというか。全体でも曲に馴染んでいるし、これができてすごくうれしかったですね。

Shunsuke:僕は「Sun shower」ですね。作品を作るなかで、自分たちが本当にかっこいいと思うもの、先代が作ってきた音楽を継承して、でも、それだけじゃなくて、ちゃんと自分たちのエッセンスを加える。音楽を進化させていくうえで大切なことを自分たちなりに体現して完成させた1曲になったと思います。自分たちの活動でいろんなことをやっていくなかで、一つやりたいことを成し得たなと思います。

Mol:僕は「SERENADE for Brahma」か「Sun shower」です。この二つに共通しているのが、みんな同じブースの中でレコーディングしたんです。そのときのみんなの感情がよりディープに出ている感覚があって。限りなくBillyrromの裸の状態に近いというか。ナチュラルで純粋な部分が出ている楽曲で、僕はけっこうBillyrromのそういう部分が好きなんですよ。僕のボーカルとしても、特に「Sun shower」の終盤とかは聴く人の耳馴染みとか、こういう周波数を狙ったら気持ちいいとか、そういうことは何も考えず、「ただ声を出す」みたいな気持ちで歌ったので。そういう意味でもナチュラルな姿に限りなく近いというか、そういうところが個人的に魅力的だなと感じます。あと「SERENADE for Brahma」は初期の曲というのもあって、聴いているといろんなシーンが脳内で再生されるような感覚があって。夜に一人で聴いたりすると幸せを感じたりする。そういう意味でも思い入れがありますね。

Taiseiwatabiki:自分も「SERENADE for Brahma」は好きですね。今どきみんなで一斉に録って音源を作るってけっこう難しいことだと思うので。そういった意味でまったく嘘はない純粋なBillyrromになっていると思います。自分はプログレとかめっちゃ好きなんですけど、Shunsukeのドラムには絶妙な跳ね感があって、ブラック・ミュージックをやっている人がプログレをやっているような感じもあって。プレイヤーとしても、自分がただ気持ちいいように演奏して、周りの音と共鳴して気持ちよくなったというのがそのまま音源としてパッケージされているような気がしています。そういった意味で好きな曲ですね。

――BillyrromにはソウルやファンクやR&B、ブラック・ミュージックの要素も大きいわけですが、こういった音楽のどんなところが好きでグッとくる感じがありますか?

Shunsuke:踊るにもいろんなものがあると思うんですよね。ロックが心を奮い立たせる、心を踊らせるのに対して、R&Bとかソウルは身体が踊らされるような音楽性だと思っていて。やっぱり根本は人をダンスさせる、踊らせるというところですよね。

――アルバムが出て、この先、Billyrromのライブのムードはどんなふうに変わっていくと思いますか?

Taiseiwatabiki:今までは小さいライブハウスでやっていたというのもあって、目の前の人を踊らせるということを考えていて。遠くにいる人に届けるということはあまり意識していなかったんですけど、今年に入ってキャパシティも増えて、フェスにも出るようになって、目の前の人よりもっと遠くの人の身体を動かすことにみんなの意識が向かっている気がしますね。

Mol:心も踊らせたいという気持ちは明らかに強くなっていると思いますね。さっきShunsukeが言っていたみたいに、踊るっていろいろあると思うんですけれど、心も身体も、どんな形でもいいから、聴いてくれる人に何かを感じてもらいたいという気持ちはどんどん強くなっていっていますね。

Interview:柴那典
Photo:新谷隼人 / 臺北流行音樂中心

◎リリース情報
アルバム『WiND』
2024/9/25 RELEASE


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