<ライブレポート>Mrs. GREEN APPLEと作った夏の思い出は永遠に……【ゼンジン未到とヴェルトラウム~銘銘編~】横浜1日目

2024年7月26日 / 20:00

 Mrs. GREEN APPLEのスタジアム・ツアー【ゼンジン未到とヴェルトラウム~銘銘編~】が、2024年7月21日に神奈川・横浜スタジアムで終幕した。7月6日と7日の兵庫・ノエビアスタジアム神戸、20日と21日の横浜スタジアムの計4日間で約15万人を動員し、今、日本で最も聴かれているバンドは “日本のバンド史上最年少スタジアムツアー”という偉業も達成した。

 「これぞミセス!」と思える代表曲から、フェーズ1時代から応援するファンも唸る曲、そして最新曲「アポロドロス」まで、スタジアムという超大型会場に集まったオーディエンスの意識を瞬時に、そして最後まで引きつける珠玉のラインナップが勢ぞろい。開演を待ち望むJAM’Sたちの高まる気持ちとじりじりと照る暑さを、ちりんちりんと鳴る風鈴の音色が落ち着かせていたのだが、「ARE YOU READY?」「SHOW TIME」の文字が輝くと、そんなものは何処吹く風。未知の世界を目指して出発した宇宙船が強い引力に引き込まれて辿り着いた先にはピースサインの3人が待っていた。大森元貴(Vo. / Gt.)の「遊ぼうぜ!」の一声でスタートした「CHEERS」は、これから繰り広げられる楽しい時間に挨拶するにはピッタリのナンバーだ。どこもかしこも「乾杯!」コールが発生し、一気に会場が笑顔に包まれた。

 「ゼンジン、もっともっと!」と藤澤涼架(Key)がオーディエンスを煽動し、気合十分のミセス3人に少々押され気味なJAM’S(若井滉斗(Gt.)は言葉を発しないながらも、片足を大きくあげて演奏中も負けじと猛アピール)。大森の声出し練習の甲斐あって、JAM’Sはジャンプしたり一緒に歌ったりして、少しずつ心のブレーキを緩めていく。

 「何年経っても『あの時は素晴らしかったよな』って思えるような夏の思い出を今日作ろうと思うんだけど、準備はいいですか?」という大森の挨拶どおり、ミセスはこのツアーでゼンジンと一緒に忘れられない夏の夜を作ることに徹底していたように思う。「ロマンチシズム」や令和の夏ソングと言っても過言ではない「青と夏」、大森曰く「そのアンサーソング」である「ライラック」はもちろん、「橙」と「点描の唄」、「CONFLICT」など、夏や限りある時間を中軸に、「ここにいたこと、今感じている気持ちを忘れないで」と言っているようだった。

 大森の“縦眉毛”から始まった「青と夏」から「ライラック」、夕陽をバックに田舎情緒溢れる「橙」、夏の風物詩の提灯や近所のお祭りがLEDスクリーンに映し出された「点描の唄」の流れは日本の夏を意識したもので、若かりし頃の夏を懐かしく思う大人世代は、あの日に戻れるならもう一度経験、もしくはやり直したいと思っただろう。会場でたくさん見かけた10代や学生には、「その貴重な時間を後悔せず思いっきり楽しんで過ごしてほしい」と私たち大人からのちょっとしたアドバイスが(おこがましくも)届けばいいなと願った。

 ツアータイトルにヴェルトラウム(ドイツ語で宇宙の意味)を掲げていることもあり、ライブ本編は地球や火星、はたまた名前も知らない惑星へとワープ。〈夏よ、終わるな〉の言葉で日本を離れ、ライブ恒例曲「Blizzard」で再び宇宙旅行へ。電子音を取り込んだ本曲はここまでのテンポをガラリと変えるいいシーンチェンジだった。「インフェルノ」で燦燦と燃える太陽に近づいたオーディエンスは激しいドラムとギターの響きに合わせて小刻みにライトスティックを振る一体感を見せつける。最後は大森と若井が向き合ってギターを鳴らし合い、フィニッシュした。

 遠くで雷が光りはじめ、空模様が怪しくなってきたところで、「私は最強」が流れると全員の思いは天に一直線。心を強くしてくれる魔法の歌は雷雲をも吹っ飛ばした。左手をポケットに突っ込んだ大森の姿からスタートした「Loneliness」は心奥底に秘めた大森の思いが暴かれていくのと同時に粉々になって消えてしまいそうな脆さを感じたが、「暑すぎるだろ~。ちょっと休憩させてください」とコロ助のような口調で話すと、一気にその緊張感も緩んだ。「暑すぎるよね……こうしてスタジアムでゼンジン未到を開催することができて本当に嬉しいです。ここから見えるみんなの光(ライトスティック)がすごく綺麗です。最高でーす!」(若井)、「今日を非常に楽しみにしてきた藤澤とドキドキソワソワしている藤澤が二人います。スタジアムだから全力で行こうと思っている藤澤とめちゃくちゃ暑いから無理しないでほしいと思っている藤澤もいます。本当に無理だけはしないでね。心の底から楽しい思い出を作りたいと思っています!」(藤澤)と、JAM’Sに寄り添うミセスに大きな拍手が返ってくる。

 「新曲、聞いてくれやしたか?」と今度は8時20分の眉でスタートした「アポロドロス」は、花の都パリで開催される今年の夏のオリンピックを彩る楽曲らしくスクリーンを満開の花で埋め尽くした。配信から2週間あまりながら大森とJAM’Sのコール&レスポンスもバッチリだ。心臓のバクバク音がビートに置き替えられた「L.P」、ミュージック・ビデオで見せる映像美が再現された「ナハトムジーク」では演奏と大森の美声、人間の深いところまで追求した歌詞に息をのんだ。

 しかし、ここで「コロンブス」というポップナンバーを持ってくることで全員の「キター!」感を高める。3人並んで花道を歩く姿は実に忘れがたい光景だ。続く「Magic」は光の道を一歩ずつ進んでいく大森のボーカルレンジに感動しつつ、「一度きりの人生、自由でいて良いんだよ」と声を大にして歌うこの曲が持つ魔力の偉大さを改めて実感。撮影OKという嬉しいサプライズでいつでもこの時間に戻れるプレゼントもくれた。ミセスが本編最後に選んだのは「Dear」。この曲が終わった後に起きた大きな拍手を聞いて、大森のメッセージが一人ひとりに届いていることがわかった。

 アンコールを求める鳴り止まない拍手と歓声を止めたのはまだリリースされていない「familie」。なんとシャボン玉を放つトロッコに乗って若井がステージ下手、藤澤が上手側から登場したのだ(藤澤はJAM’Sに向けて手を振りつつも、鍵盤から指は離さないという離れ業を披露)。センターステージで限りを知らない歌声を響かせる大森も実に楽しそうだった。

 JAM’Sが目を輝かせながら放つ声援を一身に浴びた3人はダブルアンコールに応えて「我逢人」「ケセラセラ」を届ける。他人を思いやる優しさがいつか自分に返ってくる好循環が生まれたらOK。楽な人生はないけれど「生まれ変わるならまた私がいい」と思えたら人生大成功。そう願う大森の思いが楽曲やこのツアーに集まった人達を通じて全国に広がっていくことこそ、彼らが目指すバンドの姿なのかもしれないと思えた一夜だった。

Text by Mariko Ikitake
Photos by 田中聖太郎・石井亜希・河村美貴・MASA・古溪一道・ヨシモリユウナ・金谷龍之介・大場暁史

◎セットリスト
【Mrs. GREEN APPLE ゼンジン未到とヴェルトラウム~銘銘編~】
※2024年7月20日(土)神奈川・横浜スタジアム公演
1. CHEERS
2. VIP
3. ANTENNA
4. ロマンチシズム
5. ツキマシテハ
6. CONFLICT
7. 青と夏
8. ライラック
9. 橙
10. 点描の唄
11. Blizzard
12. インフェルノ
13. 私は最強
14. Loneliness
15. アポロドロス
16. L.P
17. ナハトムジーク
18. コロンブス
19. Magic
20. Dear
<アンコール>
1. familie
2. lovin’
3. ダンスホール
4. 愛情と矛先
<ダブルアンコール>
1. 我逢人
2. ケセラセラ


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