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マオが、6月29日に全国ツアー【MAO TOUR 2024 -habit-】の初日公演を埼玉・HEAVEN’S ROCKさいたま新都心VJ-3にて開催した。下記にて、同公演のオフィシャルレポートを掲載する。
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ソロプロジェクトを新たに始動させ、全作詞・作曲を自らが手掛けたソロとして初めてのフルアルバム『habit』を2024年5月29日にリリースしたマオ。『habit』の楽曲が軸となるツアー【MAO TOUR 2024 -habit-】が、6月29日からスタートした。8月末にかけて全国14か所を巡る、マオ史上初のオールスタンディングでのライブツアーである。HEAVEN’S ROCKさいたま新都心VJ-3にて行われた初日公演、そこには鮮烈な刺激と魂震わせる熱狂があった。
バンドメンバーに続いてステージに登場するやいなや、お立ち台に上ってフロアを見渡すマオ。ドアが閉まらないほどパンパンに人が詰まったフロアから大歓声が上がる中、投下された1曲目は『habit』の幕開けを飾る「枯渇」だ。nishi-ken(Key.)、Leda(Gt.)、Shoyo(Ba.)、DUTTCH(Dr.)という鉄壁の布陣ががっしり支える中、ゾクっとするような低音から透明度の高いファルセットまで、その歌唱力で出だしから圧倒し、心をつかむマオ。〈飾り終えた 容姿も 心も 焼いて 灰 灰になった 私を愛せますか?〉〈愛され続けたい〉という渇望が、痛いほど伝わってくる。
赤をメインにした派手なライティングの下、シャウトしてタイトルコールしたのは「HABIT」。マオがお立ち台の上でアオれば、オーディエンスは全力で拳を振り上げたりコールしたりクラップしたり。「ライブハウスツアーをやりたいな、という想いから生まれたのが『habit』というアルバム」と語っていたが、その一体感といい熱量といい、これぞライブハウス!だ。歌いながら何度も「フー!」と叫ぶマオ、ツアー初日のしかも序盤にしてすでに大きな手応えを感じていることだろう。
歪んだギターリフ、ウネるグルーヴを味方に〈目を見て 答えてよ〉から〈目を見て 答えなよ〉、巻き舌の〈目を見て 答えろよ〉へとドSっぷりを加速させたのは「縄と蝶」。『habit』収録のナンバーたち、作品タイトルそのままにだいぶ“クセ”が強いし、あまりにもライブ映えしすぎる。
かと思えば、失った恋に縛られる切なさをライブでも繊細にていねいに描いたのは「Closet」。バンドアレンジでよりいっそう詩情があふれ出した「rule」にしても然り、表現の引き出しの多さをあらためて思い知らされたりもした。
MCでは「主人公の哀しい気持ちを♪ラララ♪で歌ってみました」と「rule」で歌詞アレンジしたわけを明かし笑いを誘いつつ、バンドメンバーを紹介しながら和やかにトークしたり、オーディエンスとフランクにコミュニケーションをとったり。信頼できるメンバーと一緒に愛すべきファンの前に立つマオ、なんていい笑顔なんだ。
おとなジャジーな「恋の泡」からまさに海の深くまでいざなうような「深海」、ドラマティックな「違う果実」に続いたのは、「青い雨」。「喉の不調で苦しんだ辛い時代をようやく乗り越えて、それをやっぱり歌に残しておきたい」という想いから生まれたナンバーである。〈弱い僕は 一人じゃ心許ないけど 一緒に濡れてくれる 君がいるから〉というフレーズはじめ、大変な時期も共に歩んできたファンへの愛と感謝と信頼が、音源に増して色濃くにじんでいたように思う。
一転、「ライブハウスって盛り上がる場所だよね? こっから盛り上がっていけるかい!?」と発破をかけたのは「不埒な体温」。オーディエンスがクラップする中、マオはステージを右に左に躍動しながらメンバーに絡んだり、オーディエンスと目線を合わせるようにしゃがんだり、お立ち台の上から後方まで広く見渡してフロアを指差したり。ライブにおけるマオの“統べる力”には、毎度のことながら驚かされる。
その勢いのままになだれ込んだのは、マオが懐かしの“ソフヴィ”を意識して曲作りしたというメロディアスなロックナンバー「最低」だ。突き刺すような鋭さをたたえた歌声、自己嫌悪マックスな歌詞、エモーショナルなバンドアレンジ、詰め込まれたキメ、すべてが絡み合って、ラストのロングトーンに至るまで最高でしかない。
「今日はおまえらに新曲持ってきました! ノリとか関係ねぇから!」と超ロックな前置きをしたのは「mannequin」。刹那的で荒ぶる疾走感に、フロアは瞬く間にヘドバンまみれ。ソロとして初のアルバムで作詞だけでなく初めて全10曲の作曲を手掛けたマオ、ツアー開始前に「新しい曲を作りたい欲が高まっている」と言ってはいたが、その挑戦心、創作意欲はとどまることを知らなさそうだ。
そして、本編ラストは初期衝動のままパンキッシュに駆け抜ける「ROUTE209」。〈棘 棘るだけ 研いで 研ぎ澄ましたらあとは 刺すだけさ〉〈何度打たれても 出る杭がいい〉という尖りまくった歌詞も、ライブハウスにぴったりだ。高まるまま何度もシャウトし巻き舌でがなったマオ、最後に背後からの赤いライトを浴び堂々お立ち台に立ったその雄姿は、あまりに凛々しかった。
「chandelier」でスタートしたアンコールでは、本編以上にラフにオーディエンスやバンドメンバーとコミュニケーションをとる場面も。「サヨナララスト」で穏やかな一体感を生み、最後に届けてくれたのはマオが初めて作った曲、「最後の恋」だ。ただただ〈君〉を想うストレートな言葉とメロディも、今のマオにはよく似合う。美しい愛の歌、それは幸せな残響となって今も胸を温かく満たしてくれている。
「新しい部分はもちろん楽しんでほしいけど、これまでのキャリアも全部詰め込んで、みんなとの思い出も連れて最高の形で今回のツアーをまわりたい」という決意の言葉も口にしたマオ。【MAO TOUR 2024 -habit-】という新たな旅でなにを得て、それが今後にどういかされるのだろうか。そんな楽しみも尽きない。
Text by 杉江 優花
Photo by 中野 敬久
◎公演情報
【MAO TOUR 2024 -habit-】
2024年6月29日(土) 埼玉・HEAVEN’S ROCKさいたま新都心VJ-3
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