<ライブレポート>美波が初の武道館公演、デビュー5周年の節目

2024年4月10日 / 19:00

 美波が、3月30日に【美波「JOYINT in Nippon Budokan」】を日本武道館で開催した。

 高校生の時より音楽活動をスタートして1ST EP『カワキヲアメク』をリリースしてからデビュー5周年を迎えた美波。2023年12月7日のZepp Shinjuku公演を皮切りに【美波「BLUE LINE ASIA-TOUR 2023~2024」】をスタートさせた。国内11か所に加えて、台湾やマレーシアでも公演を行い、海を越えて人気を集めている。ここでは、そんな彼女の路上ライブから始まった物語の集大成となる武道館公演のレポートをしていく。

 開演時間を迎えると、モニターに美波のキャラクターが歩き出すアニメーションが流れ始める。やがてバンドメンバーの大塚巧(Gt.)、真船勝博(Ba.)、渡辺シュンスケ(Key.)、柏倉隆史(Dr.)が合流。後ろを振り向いた美波が微笑んだところで、「武道館ー!」という掛け声とともに「Prologue」がスタートした。ツアーグッズのブレスレットを身につけたオーディエンスの手首が青色に光り、会場に彩りを与えている。美波は客席を見て「幸せをありがとう。感動しちゃって何も言えないや。5年かけて武道館に来ることができました」とグッと感情を堪えながら言葉を述べた。

 情報解禁されたばかりのテレビ朝日『グッド!モーニング』の新テーマソング「Good Morning」もフルバージョンで初披露された。「ギリギリまで私なりの朝を考えました。少し一息ついた朝を過ごして欲しいという思いを込めました」とアコースティック・ギターを持ってパフォーマンスへ。ブリッジミュートの音色とともに歌から始まり、透き通るような歌声が会場に広がっていく。まさに爽やかな朝に聴きたくなるような楽曲に仕上がっていた。そのままノンストップで「カワキヲアメク」が展開され、オーディエンスの熱が上がっていくのを感じる。

 美波のライブの醍醐味を一つ挙げるとしたら、音源とはまた一味違ったアレンジだろう。「ホロネス」では真船の禍々しいベースソロから入り、柏倉と渡辺が息の合った演奏を見せる。続く「グッドラッカー」も大塚のギターソロから展開され、美波はギターを置いて下手から上手へとゆっくり移動していく。<グッドラックして>とこめかみに人差し指をあてたり、うずくまりながらアウトロを歌い上げるなど、歌詞の世界観を体現していった。最後は「うざいやつにバイバイ~」と明るく吐き捨てる。

 美波がギターケースを背負って各ツアー会場に向かっていく映像がモニターに流れ始めた。ライブ写真や美波の幼少期の写真も映され、軌跡を辿るような演出だ。すると、会場前方の扉から美波が登場して、センターステージに移動していく。緊張した姿を見せ、「1STライブで立ったShibuya eggmanのステージの広さに揃えてもらっています。初心に戻って歌えたらと思います。高校から音楽を始めましたが、ミュージシャンとして生きていけるか不安でした。これで最後と決めた路上ライブで今のマネージャーと会いました。そんな奇跡の出会いがあって5年で武道館に立っています。皆さんに連れてきてもらったこと感謝しています。0から始まった美波。一人ぼっちの時に歌っていた曲です」と「main actor」を弾き語り形式で披露。赤裸々な歌詞をアコースティック・ギターとともに力強く歌っていく。<僕だから>と裏声と地声で交互に歌っていく場面もあり、葛藤を表現していく美波の姿にオーディエンス全員が唾を呑んだに違いない。続く「正直日記」も「真っ直ぐに生きてきた私の曲」と告げられたように、自身の心を投影した歌詞をそっと優しく歌っていく。<これでいいのさ>と歌った後は体感時間1分の無音パートがあり、そこから急にバンドサウンドから再開するアレンジもまた目を惹かれた瞬間だった。

 雨音のフェードインから「アメヲマツ、」がスタート。ここからストリングスが加わり、そしてオーディエンスの息ぴったりな手拍子もシンクロしていき、楽曲の魅力を引き出していく。最後に「それでも私は雨を待つ」と美波が囁き演奏が終了する。また、活動初期の楽曲から「水中リフレクション」も演奏された。今回はピアノデュオから始まり、途中からチェロが加わっていくというスタイルだ。<なぜ笑うのでしょう?>から、マイクなしのアカペラで声を届けた場面には鳥肌が立った。

 「めっちゃ緊張するけどピアノ弾きます」とキーボードの前に座った美波にスポットライトが照らされる。今回、ピアノを弾いて欲しいというファンのために練習したという。この大舞台のために、いつもと違うアプローチで楽曲を届けたいというファン思いの性格がそこに表れていた。

 バンドメンバーが再び登場して、<あージンセー忙し>という入りから始まった「ブルーグラス」。青い証明が会場に広がるなかで「声出せますかー!」と叫ぶ美波。アウトロで「ラララ~」と徐々に合唱が大きくなっていく。その勢いでアップナンバー「ライラック」「ルードルーズダンス」へ突入。バンドメンバーも楽しみを表現するかのように、立って踊りながら演奏していった。

 「この一日はずっと忘れない。この5周年という記念すべき日に武道館ができて良かったです」とあらためて気持ちを伝えた美波。「楽しかったー?」とオーディエンスの反応を見ながら、最近ファン同士が結婚したという話題へ。常にファンの動きをチェックして、レスポンスする。そういう親近感のあるところが愛される理由の一つだろう。そんな流れから、ちょうど今朝に完成させたという新曲「クリエイター」も届けてくれた。「モノづくりに対する気持ち」を綴った楽曲で、リフレインされるサビ、クリエイター側としての闘いを歌っているような歌詞。フル解禁される日が待ち遠しくなった。

 気づけばとうとうラストMCのパートに。「皆さんと出会えて良かったです。心配かけたこともあったと思う。でもどんなハコでも全力を出せる、それが私のスタイル。そして、信頼関係は誰にも負けないと思ってる。みんなのこと信じてる!」という言葉を伝えて「フライハイト」へ。涙を堪えながら歌い出す美波だったが、<確かに僕の感情は儚くて>までしっかりと力強く歌ってくれた。そして、「また絶対会おうね」と両手で顔を覆って深くお辞儀をし、ギターをそっと置いてステージを後にした。

 大きな拍手に迎えられたアンコール。ここでは7年間、美波をサポートしてきた大塚にマイクが向けられ、「今日一日、最高でした!」と答える。ライブハウスから始まり、今では大きなステージからオーディエンスを見上げていることは感慨深い。最後は「みんな分かるよね!? 終わりは始まりー!!」と再び「Prologue」が演奏された。間奏ではバンドメンバーのソロが演奏され、序盤よりも熱いステージが繰り広げられていく。そして、「次は大きな所へ行きましょう!」と美波の前向きな言葉でライブは大団円を迎えた。

 美波にとって武道館公演は一つの終着点であり、通過点だったに違いない。そしてなにより、美波の“歌声ひとつで訴えること“が等身大に表現されたライブだったと思う。ファンとの距離の近さから生まれる信頼関係も成長を続けているのだと感じることができた。次はどんなステージにファンを連れていってくれるのか、楽しみにしたい。

Text by Tatsuya Tanami
Photo by 石川雄斗(Yuto Ishikawa )/南雲直人(Naoto Nagumo)

◎公演情報
【美波「JOYINT in Nippon Budokan」】
2024年3月30日(土)
東京・日本武道館


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