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サザンオールスターズが7月17日の海の日に配信リリースした、約4年ぶりの新曲「盆ギリ恋歌」(ぼんぎりこいうた)が耳から離れない。日本の夏、サザンの夏。令和の世の中、サブスクからはいろんなタイプの夏ソングが聴こえてくるけれど、やっぱりサザンの曲ほど日本の夏に似合うものはない。まして今年はめでたいデビュー45周年。いくら桑田佳祐がデビュー記念日の6月25日を前に「何もないから期待しないでね」と言ったって、当然ファンは期待せずにはいられない。そして満を持してラジオ番組で明かされたのは、3か月連続配信リリースと、10年ぶりの【茅ヶ崎ライブ2023】を4日間(9月27日、28日、30日、10月1日)にわたり開催するという、ファンならずとも歓喜の声を上げたくなる大発表であった。そんな45周年イヤーのキックオフを飾ったのが、「盆ギリ恋歌」だ。
「盆ギリってなに?」と思いつつ聴いてみると、数々のライブアンセムを彷彿とさせるファンキーなイントロに続き、サーフミュージック風のメロディで<盆ギリ盆ギリ 夏は盆ギリ ヨロシクHold Me Tight>とノリノリで歌う桑田。お盆の風習、魑魅魍魎が跋扈する人間社会、欲望、土地の風俗、宗教等々、いろんなものを連想できる混沌とした歌詞と、キャッチーなメロディ、軽快な演奏の組み合わせが、じつにサザンらしい。
その世界観を読み解きつつ丹念に考察してみたところ、う~ん、わからない。オフィシャル・ウェブサイトを見たら「要するに理解不能のシン・日本の夏ソング!!」と書いてある。そうか、なんでも深読みしようとするのはネット社会の悪い癖だ。問答無用で誰もが楽しめるエンターテイメントこそ、サザンの真骨頂じゃないか。そう思って自分を開放したら、怪談本の扉絵みたいなジャケットのおどろおどろさも、後半で聴こえる<いい加減にしなさいよ>という女性のお叱りも、夏休みに子どもに返った大人の“やさしい夜遊び”みたいなドキドキとワクワクがたっぷりと感じられた。
デビュー曲「勝手にシンドバッド」のオマージュが出てくるのも必聴ポイント。曲のタイプは違うものの、「盆ギリ恋歌」には「勝手にシンドバッド」にも通じる“わかるようでわからない”エキセントリックさ、カオス感がある。この誰にも似ていないオリジナリティこそが、サザンが他の追随を許さない唯一無二のバンドであり続ける所以だろう。「盆ギリ恋歌」のミュージック・ビデオには、さらなるカオスが待ち受けているのでこちらも必見だ。
2番の歌詞<あの サザンビーチでナンパするなら ヨシオんとこ(夏倶楽部)でShow!!>や、MVの最後に映し出される花火など、聖地・茅ヶ崎へと繋がるフレーズ、場面も登場する。この夏の3か月連続配信リリースを経て、秋の【茅ヶ崎ライブ2023】へと、サザン45周年のお楽しみはまだまだ続く。まずは、じんわり汗をかいた体をうちわで扇ぎながら、「盆ギリ恋歌」が誘うトワイライトゾーンにどっぷりと浸ってみては。
Text by 岡本貴之
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